司法試験受験体験記(在学中受験)

R6司法試験を受験し、まもなく合格発表を控えるなかで不安もありなんとなく手持ち無沙汰(とはいえロースクール卒業のため、今後のため等勉強もしつつですが)なので、
自己満足ではありますが何か誰かの役に立つことをしたいなと思い、とりあえず体験記を書いてみました。


参考程度に言及しますと、私はいわゆる上位ロー(東京一慶)の在学中受験資格で受験し、予備試験は受験経験はなく、また予備校・予備校本も利用せず(利用したのは民法の択一六法くらい)といった感じです。
同じような方がどのくらいいるのかわかりませんが、私自身が受験勉強中、受験直前期、試験期間中、そして現在の合格発表前にいたるまで、多くの先輩方の受験体験記を見て、特に精神面で勇気づけられていたことから(また在学中受験における「自分だけ落ちたらどうしよう」の気持ちに対応した体験記はまだそう多くないため)、
何かしらのものをインターネットの海に流せばどこかの誰かの役に立つことがあるかもしれないと思い、筆を取った次第です(とはいえ合格発表までの私自身のメンタルケア兼気持ちの整理といった意味合いもあるのですが。笑)。
受験勉強に関しては私の経験が汎用性があるか甚だ疑問なので、現状書くつもりはありませんが、気が向けば、上記と同様にどこかの誰かの何かに役に立てるよう書くかもしれません。
また、こういった軽い気持ちで書いたものですので、何かしらの折に記事を突然削除することもあろうかと思いますが、どうぞご容赦ください。

受験直前期

とにかく緊張していました。というのも、在学中受験の先輩方の合格率の高さから、同期も同程度合格すると推測すると、「自分だけ落ちたらどうしよう」という気持ちがやはり強かったからです。特に私は不確定要素が多いほど全て悪い方向には考えてしまうので、直前期の過ごし方について「もし自分が勉強していない論点が出たらどうしよう」「今この瞬間も他の受験生と差をつけられているかもしれない」「もっといい時間の使い方や対策の仕方があるかもしれない」などとひたすら考え、勉強のための時間と労力以外の全てを不安要素にしていたことも要因の一つだったと思います。
これまでもいくつか極度にプレッシャーのかかる場面は経験してきたつもりでしたが、こんなにもギリギリの精神状態になったのは初めてでした。
ほぼ毎日ろくに寝れず、朝日が昇り切ったころにやっと少し寝れる程度で、それでも緊張のせいか眠気を感じず、しかし作業効率は落ちていき、作成する答案の質も落ちていく、そしてさらに不安になり寝れないという負のループに陥っていました。自分の寝れなさ具合に涙が出てきた時すらありました。
今思えば精神科にでも行けばよかったのかもしれませんが、当時はそのための時間を作る精神的余裕すらなかったと思います。

最終的には、幸いにも受験前にある程度の体力の限界がきたのか、試験開始の数日前には気絶のように寝れる日ができたため、試験当日の睡眠の不足具合はかなりマシでしたが、、、
もう二度と経験したくない期間です。

試験前日

前日には会場近くのホテルに入りました。数日分の食料や飲料を持ち込み、ゆっくり湯船に入り、1日目の科目の復習をしました。

前日や当日になるとできることも限られますし、心身の調子を整えることに注力した方が良いと経験的に学んでいたので、この日以降はほとんど緊張しないまま、「できることしかできないし、できることはちゃんとやればできるかもしれない」といったある種の諦観で試験期間を過ごしました。
上述のような性格なので、不確定要素を減らせる(空いた時間でやるべきことが限られるうえ、終わった科目は答案提出済みなのでもはや不確定要素でない)ことが、緊張しなかった理由なのかもしれません。

おいしいご飯を食べて、早めにベッドに入り寝ました。

一日目

基本的にいつも夜型生活で、試験直前も睡眠リズムは滅茶苦茶だったので、毎日この時間に起床するといったことはなく、会場に行かなければいけない時間に対して必要な準備時間を逆算した時間に起床しました。会場には多くのロースクールの同期がおり、見知った顔を見て、頑張ろうと思った記憶があります。
昼食は毎日セブンイレブンのおにぎりと、ブドウ糖やチョコレートを食べました(セブンイレブンのおにぎりは翌日夕方まで消費期限がもつものもあるので、前日に買っておくと試験当日の朝にお昼ご飯を探したりする手間がなくてよかったです)。

三科目を受け、ホテルに帰りました。
ラストの行政法では、(少なくとも私は)問題の傾向や配点が変わったような印象を受け、過去問を中心に対策してきたため不十分な答案を提出してしまい、かなり落ち込みました。会場からの帰りでは「むずかしかった」「(答え合わせ)」等の感想が飛び交っており、なるべく聞かないように急ぎ足でホテルに帰りました。
その後、即判例検索をして正しい解答筋を調べました。本来であればすぐに忘れて翌日の科目の勉強をすべきなのでしょうが、不十分な答案を書いた自覚はあったので、どの程度不十分であったのかを正確に把握しないと、悪い方向に考えてしまうだろうと思ったからです。結果的には、1日目の出来を引きずらずに、また2日目で心が折れずに頑張れたので、私にとってはこれでよかったと思っています。

食欲はなくかなりしんどかったのですが、大浴場の湯船につかり、なんとかカップ麺とゼリーを胃に流し込み、2日目の科目の復習をして寝ました。

二日目

本当に一番しんどい日でした。
民法商法は比較的好き(得意とは言ってない)なので少し楽しみだったのですが、民法も想定ほどうまくいかなかった中で、
商法がまるで一日目の行政法でグラついたメンタルをつぶしにかかるかのようで、とにかくしんどかったです(何回言う)。
商法がどのような問題だったかは過去問を解かれる際にご覧になると思いますので、私の感想に対する評価は皆様に委ねたいと思いますが、
試験開始後15分をすぎてもペンが動く音が全く聞こえず、ただただ六法のページをめくる音だけが会場に響いていたあの光景は二度と忘れられません(なんなら今でも会社法の勉強する度に軽く悪寒がするくらい)。本当にしんどくて(何回言う)、試験中でなければ初対面の周囲の受験生に「これやばいよな!?」と話しかけたいくらいでした(怖)
泣きたい気持ちになり、本当に無理かもしれないと何度も思いながら、とにかくペンを動かしました。とはいえ答案の枚数でいえば(内容もですが)ひどいものでした。
商法の試験時間終了後、こんなはずではなかった、得意科目のはずだったのに、と何度も思いましたが、会場内の受験生の泣きそうな表情やなんとか自分を奮い立たせている様子を見て、「相対評価だからまだ分からない。がんばろう。」と思えました。
そしてなんとか民訴を受けきり、2日目の会場を出ました。

ホテルに帰る気も起こらず、虚な目でホテル近くのパン屋さんで中日のブランチを買い、Twitterの「商法むずかった」という受験生の感想にめちゃくちゃ同意しながらなんとかホテルに帰りました。
寝れず食べれず、短答の勉強をしようと思っても絶望で何も頭に入らず、落ちたら親に何て言おうか、内定先にはどう言おうか、とひたすら考えながら択一六本を眺め、
しかしどうにも鬱々としていたので、別業界を志望している友人に電話させてもらい、司法試験に関係のない他愛のない話をしてなんとか寝ることができました。

三日目(中日)

試験のない日ですが、試験日と同様の時間に起きて生活リズムを保っていた人もいたようです。私は生活リズムも何もないような生活だったので、とにかく心身の疲労の回復のために12時頃まで爆睡しました。
昨夜よりは頭の動きはましでしたが、やはりダメだったらどうしよう、もうダメかもしれないという気持ちがどうにもならず、勉強内容がなかなか頭に入らない状態だったため、
散歩をしてスタバに行って…と気分転換をしてみたりしました。
(後日聞いたところによると多くの友人も同様だったようで、各々のやり方でなんとかメンタルを整えていたようです)

正直なところ、この日に勉強したことはあまり頭に残っていませんが、「ちゃんと勉強した」という事実が自分の安心材料となるため、形だけでも机に向かってよかったと思います。
あとは、メンタル面の不調により勉強内容が頭に入らない状態の時には、気分転換後に再度机に向かうと、以前よりは頭の動きがましになっているのがわかるので、より翌日以降の安心材料となったと思います。

四日目(試験三日目)

この日は試験科目数も少なく、昼過ぎには解放されるので、比較的にはかなり気が楽でした(それでももちろんしんどいですが、、、)。

受験後はすぐにホテルに帰り、短答の復習に時間をあてました。
短答の前日には徹夜やそれに近い夜更かしをする方もいると聞きますが、私自身はここまでの脳の疲労のほか心身の疲労を考えると、そこにさらに寝不足という負荷をかけるとケアレスミスが増えてしまうという懸念があったので、
そういった時間の使い方をする勇気はなかったです。なので、これまで通り早めにベッドに入りました。

五日目(試験四日目)

前日夜くらいから、固形物を食べるのがしんどくなってきたため、五日目の昼食は調達しないまま、最終日を迎えました。
最後まで固形物は食べられず、朝食昼食とも流動食で済ませ、休憩時間は机に向かうのが苦痛だったので、ロースクールの友人と話をしたりしながら過ごしました。この日は本当にメンタルが限界だったのだと思います。

無事に受験を終え、短答の結果が自己採点で出始めたあたりからやっと食事が喉を通るようになりました。

まとめ

以上が受験体験記です。我ながら誰かの参考になる要素はないな、と思いますが、こんな精神状態でも最後まで受けきった人間もいるということで、もししんどい思いをしている受験生の方がいれば、1人ではないのだと感じてもらえれば幸いです。
個人的なこととしては、私はこれまでのプレッシャーのかかる場面の中で、(メンタル面を含む)キーピングに失敗したことはなかったように記憶しています。だからこそ、司法試験の場面で自分自身が人生で初めてこのような状況になったときに、どう対応すべきか検討もつかず、ただ漫然と時間を過ごしてしまったと感じています。


商法に関しては今となっては、何かしらの対策の仕方はあったなー、とかもっと勉強すればよかった、等思いますが、試験前のメンタルの状態を考えれば、あれがあの時の私の精一杯だったと思います。
ちなみに、短答の結果は100位前後でした。あんな状態で受けて(しかも休憩時間は談笑してて)なんでいい成績やねん、だったらもっと頑張った論文試験で報われたかった、(こんなに短答良くてダメだったら論文がひどすぎたってことだから)もし万が一ダメだったら来年受かるんだろうか、とか色々思いますが、
まだ合否は出ていないので、なんとか這いつくばって合格発表を迎えようと思います。

駄文拙文をお読みいただき、ありがとうございました。

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