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拝啓 産後の私へ

一人目を出産後、本気で里子に出そうと考えるほど育児に行き詰まったことがありました。
人生でいちばん大切な存在ができて、それと同時に、人生でいちばん自分を嫌いになったのです。
そんな私に、いま手紙を出すならば。

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産後の私へ

眠れていますか。
6畳ワンルームは3人暮らしにはあまりに狭いけど、その分みんなとの距離が近くて、秘密基地みたいで、案外落ち着く空間かと思います。
でも、その狭い空間で聞く泣き声は、時にかわいく思えなかったりもしますよね。

6畳という小さな世界では、自分だけがダメなお母さんに思えて、お母さんになどなってはいけなかったんだって自分を責めて、里子に出そうと考えていること、私だけは知っています。
それは自分が逃げたいからじゃなくて、自分以外の人間が育てた方が、この子は幸せになれるって思ってのことだよね。

そうやって「私にはできない、私は親になれなかった」と、自分を嘆きながらも、毎日ちゃんと子どもの命を繋いでるあなたのこと、出来ることなら抱きしめてあげたいです。

そういえば、いつだったか友達が言っていました。
「夜泣きにイライラして、赤ちゃんを布団にぽんって投げちゃったことがある」って。
私はそれを聞いて、どんな慰めの言葉よりも安心してしまいました。
みんな、わざわざ言わないだけで、きっとそれぞれに、いろいろあるんだと思います。

あなたは昔から、大丈夫じゃないって言えない人でしたね。

子育てって24時間ずーっと辛いわけでもないから、辛い時はひどく辛いけど、大丈夫な時は大丈夫で。だから、SOSを出すかどうか迷ってるうちに大丈夫になって、まだやれるって勘違いして我慢しちゃう。

そうやって過ごしていくうちに感覚が麻痺してきて、心はとっくに痺れて、いつのまにかもう立てない、みたいなことになってしまうんだと思います。


ただ、ひとつだけ、忘れないでいてほしいことがあります。

それは、

私達はお母さんである以前に、ひとりの人間で、
私達が子どもを慈しむように、私達もきっと、
誰かにとって大切な存在なんだということです。

その″誰か″は旦那かもしれないし、親かもしれない。友達や保健師さん、近所のおばちゃんかもしれない。

いつでも力になりたいと思ってくれている人がいるんだということ。

そのことだけは、頭の片隅に置いておいてほしいなと思います。
誰かに頼ることは情けないことでも、恥ずかしいことでもなく、それ自体、立派な育児のひとつです。

どうか、自分のことも大事にすること、忘れないでね。


最後に。

「大丈夫、大丈夫!」

これが、3年後の息子の口癖です。

大丈夫、大丈夫。あなたの手探りの毎日は、その涙は、ちゃんと実を結んでいます。


よくがんばったね、ありがとう。


3年後の私より

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