SHE'S 「Memories」感想 -後編-
前回に引き続き、SHE'Sのニューアルバム「Memories」の感想を綴っていきます。
前編:
Kick Out
6曲目は配信シングルの「Kick Out」です。
このアルバムの中で「I'm into You」と並んでザ・ロックバンドな曲です。
一番、二番では「ノイズは耳からは去って」と歌われていて、
最後には「ノイズに貸す耳はないぜ」と能動的にノイズを排除していく様が
清々しいです。
「let me fail」という言葉で逆説的に自分を奮い立たせたり、
「Shut your mouth~」で壁に立ち向かったり、
いろんな場面で応援歌として持っていたい一曲です。
ライブで栞汰さんが映えそう。
Lamp
7曲目は「Lamp」です。
アルバムの6曲目までは優しかったり爽快な曲が続きますが、
一転、シリアスな一曲です。
なかなか一ファンが感想を簡単に述べていいのか?
世界の状況に詳しくない人が本当に歌詞を理解できているのか?
などと思ってしまうような曲ですが、
ただそれでも言えるのは紛れもなくSHE'Sが私にとっての灯です。
そういう想いをライブで渡していければいいな、と思います。
カフネの祈り
8曲目はピアノの旋律が美しい「カフネの祈り」です。
美しい。
アルバム全体として美しいのですが、
「カフネの祈り」は特に純度が高い感じがします。
最初に聴いたとき森で川のせせらぎを聴いているような、
そんな景色が浮かびました。
ピアノの煌めき、ドラムの生感、ストリングスの深みが素敵です。
竜馬さんの声は高音でもパワーが下がらず、
楽器数が少ないからこそそんな声の魅力もダイレクトに感じます。
Alright
9曲目は「Alright」です。
一番Aメロの韻の踏み方だったり、
二番AメロのHIP-HOPっぽい感じだったり、
全体的なゴスペル調の感じだったり、
ブラックミュージックの持つ力強さが歌詞に込められたメッセージを
より深く強いものにしています。
「また悪い癖だ」の「だ」の言い方が好きです。
二番の歌とベースのユニゾンも好きです。
人工物ではない、自然の強さや雄大さを感じます。
SHE'Sは心が伝わる曲を届けて演奏してくれるから、
いつも味方でいてくれるように感じます。
Memories
アルバム最後の曲は同タイトルの「Memories」です。
もともと配信シングルとして出されていましたが、
アルバムに入って改めて歌詞を読むと受け取るものが幾倍にもなりました。
「幾つになってもさよならは 悲しいもんだ 慣れたくないや」
という歌詞に共感し、また悲しいものを悲しいと思える
素直な人でいたいと思いました。
また、全肯定的な歌詞のようで
「どんな道のりも 選んだのならば何も言わないぜ」
と意思のある者への全肯定であるところもいいな、と思いました。
ちゃんとこの曲に肯定してもらえるような、
自分で選んで言い訳しない人になりたいです。
アウトロには「主よ、人の望みの喜びよ」が引用されており、
9曲目ではゴスペルが使われています。
アルバムの終盤2曲に教会音楽という共通点があり、
アルバム全体に感じる生命の温かさを助長しているように感じます。
同じく思い出をテーマにした「プルーストと花束」というアルバムの
最後の楽曲「プルースト」では「Goodbye to you」と歌われ、
「Memories」では「see you again」と歌われています。
Goodbyeにはもう会えない、というようなニュアンスがあり、
see you againにはまた会おうね、というようなニュアンスがあります。
ここからも同じテーマへの違う視点(詳しくは前編参照)を感じます。
最後に
アルバム「Memories」に関するインタビューを見ていると、
「忘れてしまうような小さな想い出に救われて生きている」
という発言を目にします。
自分を振り返っても確かにそうで、
入学式とか、卒業式とか、入社式とか、
そういう分かりやすい大きな分岐点よりも、
友達と先生に感謝を伝えるために準備したときとか、
友達とパンケーキを食べたときとか、あの日聴いたラジオとか、
卒業式が終わった後のお喋りとか、
そういう名前のつかない想い出が心に残っています。
名前のつかない大切な日々をたくさん送っていけるように、
そんな思いを忘れないように「Memories」を聴いて歩んでいきたいです。
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