C²
週末 深夜の梅田を 1人のサイクリストが走る
めいっぱいのナイトライド装備を反射させ 颯爽と
その姿はまさに 果てなき旅路に挑む者のそれだった
一人と一台で静かに ただ東をめざした
友達は好きだけど 孤独には慣れていた
誰かに気を遣い続けるのは煩わしかった
そんな彼を応援する 仲間たちの声
頑張って 応援してる
その声に応えんと 必死に藻掻いて
孤独という名の街道を
走った 走った 生まれて初めての
500キロの道のりは 信じられなくて
どれだけ脚を動かしたって
目的地は果てしなく思えた
それから彼は相棒と 夜明けを迎える
相棒は剛かった 彼をサイクリストたらしめていた
彼の体は常に痛かった
相棒は少し 彼には剛すぎた
荒んだ旅路に 倒れるサイクリスト
最後の力を出すと 彼は 起き上がった
走って 走って 都を目指した
夢を見て 飛び出した 彼の帰りを待つ者のもとへ
古の力など余りあるものだがそれでも彼は立ち向かった
それ故彼は窮地になった しかし意思もまた剛かった
北風の吹く木曽路を サイクリストが往く
今もなお続く挑戦を その体でやり遂げんと
ただ山々が そこにあるだけだった
何度でも登らせるがいい俺には 仲間の言葉があるから
ロングライダー 挑戦を 応援をしてくれた
優しく暖かく見守ってくれた
何も持たない俺にも意味があるとするなら
都に辿り着くため この日を迎えたんだ
いつまでも走ると
彼は辿り着かなかった 果の都に
それでも心の故郷は あと数キロだ
走った 足を着いた 既に満身創痍だ
力を込める間もなく 襲い来る激しい登り坂
負けるか俺はサイクリスト 千切れそうな手足を
引きずりなお走った 見えた心の故郷だ
力尽きた彼を 甲斐の山々は静かに迎えた
遂に都に辿り着かなかったけれど その名に新たな
同じアルファベットの言葉を加えてやった
キャノンボーラーを眠らせてやった