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DAC(Direct Air Capture)トップランナー~~~推しの理由その3

DAC御三家の中で、最強の一番手は前回名前だけ出た1Pointfiveです。そのCO2吸収の規模も凄いですが、そのコア技術がDAC技術の方向性を示唆する所があって興味深い。CCU(CO2の有効利用)にかかわる人に、「有価物を生まないDACの費用はいったい誰が出すのか?」と言う批判が出ます。しかし、1PointfiveはDACビジネスを離陸させる、という点でも興味深い企業なのです。

まずは、CO2回収量について。次のフォロー記事が昨年10月で、(よもやひっくり返ったりしていないハズですが)今年2025年半ば完成予定で50万トン/年のCO2を大気中から取り出し地中埋設するプラントを、テキサスに建設中です。

商業化が順調です。2022年?ごろエアバスに1万トン/年規模のカーボンクレジットを売る契約が報じられ、これは大規模商業化としては世界初です。日本のANAも早い時期(2023年8月)に続きました。マイクロソフト、AMAZONなど大資本がカーボンクレジットの予約、または出資をしています。

サウステキサスDAC Hubとして確保した土地は、3000万トン/年まで拡張できるということです。

1Pointfiveのコアの(元の)技術は、CarbonEngineering社というベンチャーが開発しました。CO2吸収材にKOH(水酸化カリウム)を使います。CO2をアルカリで中和吸収した後に CaOH2(水酸化カルシウム)を合わせるとCaCO3(炭酸カルシウム)が沈殿します。CaCO3を水溶液と分離して、沈殿物の方だけを900℃以上で焼くとCO2が分離できる仕組みです。
(次のPDFはその分析です)

https://www.jst.go.jp/lcs/pdf/fy2019-pp-07.pdf

「900℃以上で焼くなんて、何てエネルギーの無駄遣い!」という感じで直感的に嫌われたのか、CarbonEngineering社以外にこれに追従した会社が見当たらないです。だがしかし、35.4円/kg-CO2(コスト)、8.84 MJ/kg-CO2(エネルギー使用量)と推計されるスペックは優秀です。固体担体のアミン法、MSA(水分の有無でCO2吸収放出を行うアミン類)との比較が下。

https://www.jst.go.jp/lcs/pdf/fy2021-pp-10.pdf

二酸化炭素のDirect Air Capture(DAC)法のコストと評価 (Vol.4)  P10より

ここに一つ重要な示唆があります。
① CO2は酸性物質で、アルカリと結合する性質が強い。
② CO2吸着物質(液)は、化学工業で実績のあるアミン類から始めてハイテクな方向に検討を進めがちなのですが、素朴でおそらく安いアルカリが実は優秀だったりする。

最後に、ビジネスです。カーボンクレジットは、ここ数年 欺瞞だらけで混乱しています。森林クレジットがゴーストクレジットになったり、過大評価で詐欺立件されたしています。厳格な監査機構を立ち上げたのは良いものの殆どの既存のクレジットが撥ねられたり散々です。
ここでCO2吸収量に嘘偽りの余地なしで伸びているのが1Pointfiveです。エアバス、ANAなど航空業界に売り込んだのも的確でした。
さらに同社はCO2最終処分の方法にEOR(Enhanced Oil Recovery)を選びました。油田にCO2を注入して、その分多くの石油・天然ガスを掘り出せればCO2処分費用の足しになる。環境NGOには嫌われそうです。でも それでDACが立ち上がれば、いずれ完全に信頼できるCO2最終処分方法の内で最も安いのは、DAC+地中注入であるという事になる可能性は十分あると思われます。
以上をまとめると、
① 他に方法がない航空業界などに売り込んでDACを立ち上げる。
② 事業立ち上げに、CO2の利用 兼 隔離でもあるEORを選んだ。
の2点が1Pointfive社のビジネス的な賢さという事になります。

御三家が2番手、世界で一番美しいDAC カンパニー Climework社をお楽しみに。日本にもDACに供すべき資源がありますね。それは何でしょう?

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