読書記録R6-50『不完全な司書』
青木海青子著
晶文社2023年12月初版
初出
「図書館への道」『群像』2022年12月号
「本という窓」『図書館雑誌』2023年1月号他、書き下ろしを含む
青木海青子(あおき・みあこ)
人文系私設図書館ルチャ・リプロ司書。1985年、兵庫県生まれ。約6年の大学図書館勤務を経て、夫・真兵とともに奈良県東吉野村にルチャ・リプロを開設。2016年より図書館を営むかたわら、アクセサリーや雑貨、イラスト制作も行っている。
(本誌より)
なるほど、表紙や挿絵のイラストは青木氏の手によりらしい。
奈良の山村で私設図書館を開いた著者の日常を綴るエッセイ。
人と接するのが苦手で、本という「窓」を持つことで外の世界と接しつてきた著者。
自らの本棚を開放することで気づいた「図書館」の本質的な効用。
精神疾患を抱え「支えられる立場にある」著者が、司書という役割を通じて「人を支える立場」にもなりえた体験。
(本書扉から一部抜粋)
本文の前にその私設図書館の外観や周辺、内部の写真が数ページ掲載されている。緑豊かな地らしい。蔵書の一部や座敷、犬、猫の姿も見られる。
もくじはまえがきの他大きく分けて次のようになっている。
1 司書席から見える風景
2 クローゼットを開いて
3 ケアする読書
4 東吉野村歳時記
あとがき
至る所に本の紹介が出てくる。
興味深く感じたものを少しメモしておく。
「私設図書館を作る」だったり「私設図書館が舞台」の物語。
・ゆうきまさみ『白暮のクロニクル』(小学館)(コミック)
・塚原健二郎『七階の子供たち』(子供研究社)
・ほしおさなえ『菓子屋横丁月光荘 歌う家』(ハルキ文庫)
さらに別の章より
・タム・シェム=トブ『父さんの手紙はぜんぶ覚えた』(岩波書店)
ユダヤ人の少女リーネケは家族と離れ、隠て暮らした。父から届く絵入りの手紙。
また「レファレンスブックが好き」からは師の励ましと『古事類苑』から白楽天、乞食、其角の結びつきの考察に行きついた検索結果。
最後に「生きるためのファンタジーの会」より
・O・R・メリング『夏の王』(講談社)
・ロザリー・K・フライ『フィオナの海』(集英社)
・伊藤遊『鬼の橋』(福音館書店)
・オトフリート・プロイスラー『クラバート』(偕成社)
・フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』(岩波少年文庫)
・斉藤倫『新月のこどもたち』(ブロンズ新社)
・アイリーン・ダンロップ『まぼろしのすむ館』(福武書店)
ファンタジー作品には縁が無いなあと思っていたが、『ゲト戦記』や村上作品も…と書かれていた。
それなら読んだことある。
今メモした作品たちもいくつかはタイトルに聞き覚えがある。
またいつか巡り遭うのかもしれない。