読書記録R6-30『神さまたちの遊ぶ庭』

宮下奈都著
光文社文庫2017年7月初版

初出「小説宝石」2013年5月号〜2014年6月号

宮下奈都
1967年、福井県生まれ。上智大学文学部哲学科卒業。2004年『静かな雨』が『文学界』新人賞佳作となり、デビュー。『羊と鋼の森』で2016年本屋大賞を受賞。

カバーイラストは布川愛子氏の作。
キツネ、リス、小鳥などの可愛い動物と草花や木の実が描かれている。

こちらはnoteのblancheさまからのご紹介。ありがとうございました。

blancheさまは何度もトムラウシを訪ねておられてその旅の記録も投稿されている。
この本を読めば訪ねたくなる気持ちは分かる。
そして、一度訪ねれば、また行きたくなるのだろう。

北海道、十勝・大雪山国立公園にあるトムラウシ。
スーパーまで37kmも離れている。
引っ越した宮下家5人は壮大な大自然の中、夏の虫や寒さに悩みながら、様々な経験をする。

2013年1月。夫がトムラウシへの引っ越しを提案するところから話は始まる。
何年か前の夏には大規模な遭難事故があった土地。低体温症で亡くなったのだ。

カムイミンタラとはアイヌ語で「神々の遊ぶ庭」。素晴らしい景観の山。
その麓から350mの所の小さな集落に牧場や小中学校がある。
そこで暮らそうというのだ。

宮下家には14歳、12歳、9歳の3人の子どもたちがいる。
長男は4月から中学3年生になる。
子どもたちは賛成し、山村留学制度の選考を受ける。

問題は長男の高校受験。
北海道の僻地では中学を出ると親元を離れて寮や下宿生活をしながら高校に通う。
1年間だけなら家族全員で北海道に住む最後のチャンスだと夫は言った。

こうして始まる宮下家のトムラウシでの生活。

キタキツネ、エゾリスなどの他にクマも出る。オシッコ臭で何の動物か、どれ位前に通ったかも分かるようになる。

子どもたちは学校が少人数ながらもクラブ活動でバトミントンをして試合にも出る。地域の人全員参加の運動会なども全力で参加する。

本気で楽しむ。
そのためには覚悟も勇気も要る。捨てなければならないものもある。腹をくくる必要がある。それは本気で生きるということだ。
本気の大人をたくさん見た子どもたち。
「本気の大人ってカッコいい」と運動会の閉会式で言わせる。

このエッセイは2月の面接後、4月いよいよ北海道へ出発する所から毎月どんな所でどんな出会いがあり、どう対処したかが子どもたちを中心に月を追って記録されて行く。

引っ越しから1年後、彼等はどんな選択をするのか?

ここに記されているのは楽しいだけではない超貴重な体験だ。






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