読書記録R6-107『風が強く吹いている』

三浦しをん著
新潮文庫平成21年7月発行
(2006年9月新潮社より刊行)

三浦しをん
1976(昭和51)年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2000(平成12)年、書下ろし長編小説『格闘するものに〇』でデビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞受賞。他作品多数。

2011年の著『舟を編む』は私には辞書の編纂を扱った印象深い作品だった。映画にもなったし、最近TVドラマでもあった。

こちらの1冊『風が強くー』はBSTV「あの本読みました?」でも取り上げていた。少し前の作品だ。
図書館の閉架から借りてきた。
一言で言うなら箱根駅伝の話。
659ページもある。
『舟を編む』でも感じたが、緻密にじっくり作品を仕上げるタイプの作家さんだなと感心した。


家賃三万円のボロアパート竹青荘に暮らす同じ寛政大学の若者達十人が一年に一度開催される箱根駅伝を目指し、走り切る青春物語。

あえて主役をいうなら社会学部の一回生蔵原走(かける)。天才ランナーだ。
スポーツ推薦で入った高校で監督の指導を巡り暴力事件を起こした。たくさんの人に迷惑をかけたが、それ以外に自分の思いを表す手段がわからなかったのだ。当然大学進学も推薦はなく自力で入学。親からも見放されている。

文学部四回生の清瀬灰二の組み立てた練習メニューをこなし、予選会を通過し、やがて駅伝当日を迎える。
この灰二も注目されていた選手だったが、膝の故障を抱えている。

1月2日の往路は5人、1月3日の復路も5人。従って予備の人数はない。彼らだけで走り切らないとならない。一人として欠けることは許されない状況だ。
風邪で熱があろうが、完治していない脚が痛もうが彼らは走るしかないのだ。

いざ本番となればテレビを見ているかのようなレース展開。すごい筆力!
沿線の区域毎に走る十人の選手の人となりについて詳しく説明されている。
その性格、家族、生い立ち、現在の状況…など全てのデータが読者に開示されていく。


この本の最後の表紙には次のような記載がある。

箱根駅伝を走りたいーそんな灰二の想いが、天才ランナー走と出会って動きだす。「駅伝」って何?走るってどういうことなんだ?十人の個性あふれるメンバーが、長距離を走ること(=生きること)に夢中で突き進む。自分の限界に挑戦し、ゴールを目指して襷を繋ぐことで、仲間と繋がっていく……風を感じて走れ!「速く」ではなく「強く」ー純度100パーセントの疾走青春小説。


私は他のスポーツ同様、駅伝にも興味がない。だから箱根駅伝をTVでさえ見たことがない。
もちろんこれは小説だと承知している。が、今は見てみようかという気持ちが少ししている。

今TVでは甲子園で高校野球が熱戦を繰り広げるている。やはりその影には様々なドラマや駆け引きも存在しているのだろう。
それでも野球が「好き」の思いで厳しい練習を積んでここにいるのであろう。
せめて、縁のある学校にはエールを送ろう。




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