読書記録R6-111『美貌の女帝』

永井路子著
文春文庫2012年12月新装版第1刷
(昭和63(1988)年8月文春文庫発行)

永井路子
大正14(1925)年、東京に生まれる。東京女子大学国語専攻部卒業。小学校勤務を経て文筆業に入る。昭和40年『炎環』で第52回直木賞受賞。他に受賞作品多数。(2023年1月27日逝去)

PISIAさんに(7月27日)薬師寺東院堂の記事でご紹介頂きました
ありがとうございました

今年は個人的に万葉集に関心を寄せている。そしてその主な背景になる場所は奈良。時代も大切。あまり詳しく知らない。少しずつ近づきたい。

もちろんこれは小説。ひとつの見方、考え方であろう。
それでも読んでみたい。知りたい。

PISIAさんの言葉を借りるなら、「元明、元正天皇の苦悩と長屋王とその妃となった吉備の悲劇」。

文庫の後表紙には以下の表示。
壬申の乱を経て、藤原京、平城京へと目まぐるしく都が遷る激動の時代。その裏では、皇位をめぐり歴史の節目となる大変革が進行していた。繰り返される裏切り、陰湿なる策略……その矢面に立たされた氷高皇女=元正女帝が自身のすべてを政治に捧げ、守り抜こうとしたものとは。悲劇の女帝を描く長編歴史小説。

氷高皇女=元正女帝
彼女がこの本の語り部である。その少女の頃から晩年に至るまで、彼女の目線で歴史が捉えられ、語られる。

この小説を読んで改めて思う。
何と不安定な日本だったのだろう…
しかもこんなにも女帝が続いて…国の帝として存続していたのか
蘇我倉山田石川麻呂の血を受け継ぐ彼女達は藤原氏にその地位を渡すことに抵抗し続けたのか。

聖武天皇とその皇后の有り様は思いもよらない形で描かれていた。
しかし、遷都に次ぐ遷都、要人や皇子の突然と思える失脚や死の訪れ。
すべての謎解きがなされていく。
恐ろしい駆け引きが明かされる。

物語の進行に合わせて文中に系図が示されている。これは複雑な登場人物の関係性を理解するのに大変有用だった。

解説の磯貝勝太郎氏は次のように述べる。

直木賞受賞作「炎環」、そして「この世をば」、「美貌の女帝」を読んで気づくことは、乳母、母后、女帝たちの存在と役割の重要性を作者が指摘し、歴史を左右した女性の力を発掘し、見直そうとする女性史的観点が見られることである。古代において、女帝や母后が、太上天皇、共同統治者として政治にかかわり、中世の鎌倉時代には、鎌倉幕府の将軍になった源頼朝、頼家、実朝の乳母とその一族が政治権力にタッチしたという女系、母系の系譜を重要視する永井路子の独自の史観を認識させられるからである。

このような解説を読めば是非他の作品も読まねばなるまいと思うのである。





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