地方から別の地方を見るということ
仕事の関係で鳥取に駐在するようになってから早5年が過ぎようとしている。これまではずっと鳥取県内の案件ばかりを扱ってきたのだが、今年は初めて全国各地の地方で行われている取り組みについても見るようになった。
地方が抱えている課題には、いわゆる過疎、高齢化、産業の衰退といった共通する部分もあるが、やはり地域それぞれの特性といったものが当然ある。
今回、同じ地方に住みながら、また別の地方の取り組みを見るということを通して、改めて各地域に存在する課題や、それに対する取り組みの価値というものを、今までより少しは深く理解できるようになったように思う。
これまで鳥取県で関わってきた事業の経験と、今回各地域の取り組み内容を見ていく中で、大きく次の三点が各地域に共通するテーマだろう。
1.移動の問題
人口減に伴い、公共交通の利用者数は減る。一方で高齢化が進み免許返納者も増える中、自力で移動できない人が増える。ここを支えていくための手段として、現在自動運転が注目されており、最近では公道における自動運転バスの実証実験も行われているようだ。しかし技術面、法律面で様々なハードルがあり、当面の間はそれに代わるカーシェアや自家用優勝運送といった手段が必要になりそうだ。
2.関係者間における意識共有の難しさ
同じ自治体内であってもエリア毎、世代毎に意識の違いがあり、あるテーマで対話を行うことが難しいケースというものが多々ある。例えばシャッター商店街の活性化といったテーマを一つとっても、商店街の通り事に思いや考え方が違っており、なかなか話が纏まらない。
さらに、長年のしがらみや権益、個人的な人間関係の縺れなどがそこに入ることで、より一層話が複雑になることが多いようだ。
3.プレイヤーの不在
現在行われている地方創生施策によって、様々なプロジェクトが立ち上がっているが、最終的にそれを中長期的に牽引していけるプレイヤーが不在である場合が多い。特に様々な関係者を繋いでプロジェクトをマネージしたり、コーディネートする人材の確保が難しい。仮にそういった人材が見つかったとしても、そうした人の活動を支えていく財源がない場合が多い。国の方でも地域おこし協力隊の制度を拡充して、そうした人材が活動しやすい環境を整えようとしているが、現在の協力隊の制度も様々な課題を抱えており、制度設計だけでなく、協力隊を受け入れる自治体や関係機関の意識や行動も合わせて変えていくことが求められる。
これらの課題に対応するために、即効で効くような薬はないように思う。また仮にそういった薬があったとしても劇薬すぎて、一時的には効果が出るかもしれないが、中長期的には悪影響が出る可能性もある。
やはり5年~10年くらいのスパンで、主体的に地域に関われるような人材を発掘、育成し、行政をはじめ、企業や市民活動団体等、多様なセクターを巻き込んだ動きを地道に作っていくより他ないように思う。
こうした取り組みは非常に地味であり、他から注目されることもないかもしれないが、5年~10年経った時に、初めてその成果が現れてくるのだろう。
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