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分裂する心

自分を可愛そうだと、気の毒がっていけない、と、何かの本で読んだ。それは本当に愚劣で、意味ない行為でしかないのだ、と。
本当にその通りなのかもしれない。

時々、目の前にあるものをあたりかまわず自分の拳で力いっぱい叩きながら、大声で叫びあげたくなる。実際はそんな事はせずに、深い深い、大きなため息をお腹の中からほうっと、絞り出すようについて、小さな声で、馬鹿にしやがって、と吐き捨てる。

そう、私は不満なのだ。何に?
それは彼の態度だったり、彼の妹だったり、彼の息子や娘、彼の元嫁、親戚…要するに、長男の嫁としての、仮面を被らねばならない今の私の現実に対しての不満である。

時々、なんで私はこんなに我慢して、ここにいるんだろう、と我に返る時がある。何のために、結婚するんだった?なんでこの人と結婚するんだった?この人と結婚して、大丈夫なの?と、1人で自問自答を繰り返す。

まだ入籍もしてないのに、週の半分をお義母さんと2人で生活し、闘病中の彼の留守の家を守っている。(入院する前に、私から申し出た。)
当たり前だが、その間に、親戚達との付き合いも当然、こなさなくてはならない。
彼の妹は、毎日のように実家に電話をしてくるし、なんなら、3日と開けずに実家にやってくる。鍵さえ持っている。
彼の弟夫婦も、すぐ近所に住んでいて、こちらも週に1回はやって来る。
家出同然で家を出た彼の息子も、何も連絡せずにいきなり家に入ってくる。
そして、遠くに住む親戚達からも、ひっきりなしに電話がかかってきて、家の話はほぼ筒抜けだ。

それだけではない。肝心の彼は、遠く東京の病院で入院してから、1ヶ月半になる。
東京に住む彼の親戚達は、彼が瀕死の状態であっても、何度も病院を訪れては、何時間も居座る。彼は、分家が来るのを断れない、と言う。親戚みんな仲良くやっていくのが、本家の努め、と言う。(私でさえ、お見舞いに行かれないのに!)
それでなくても、長期に目を離した隙に、彼はいろんな女に連絡をとっている事だろう。
(これは最初の入院の時のトラウマ。根拠はない。)

私は子供の時のトラウマから愛着障害をもっていて、本来は恐ろしい位のヤキモチ妬きで、独占欲も半端ないくらい強い。
別れた夫との離婚原因も、私の恐るべきヤキモチ妬き、独占欲だったように、今となっては思う。

彼が、旧家の跡取り長男でなければ、どれだけ良かったであろう、と思う。
せめて、次男であれば、もっと私は、気楽にいられたかもしれない。
聞くところによれば、彼の前の奥さんも、家のそういうゴタゴタの積み重ねから、外に好きな男が出来て、家を出ていった、らしい。これが本当のことかどうかはとりあえず置いておいて、もしそうだとしても、それは至極当然なことの様にもぼんやり考える時がよくある。

彼のことを説明しよう。彼は、およそ室町時代?から続く士族の家柄である。(らしい。)
そして彼自身も、古き良き日本の男のスタイルを守り続けているような男だ。(古い男達を現実には知らないが)
言ってみるなら、The 昭和。
好き、だとか、愛してる、とか口にした事は一度もない。自分のすることは絶対に正しい。反論することは許さない。口答え等はもってのほか。
魚は骨を取っておかないと食べない。(どこの殿様だ笑)

つまり、私の求める姿と、彼の姿は、全くかけ離れているのだ。

結果。私は、数多くのため息を、1人、日の当たらぬ暗い御勝手で、お皿を洗いながら、深いため息をつく、ということになる。
何やねん!とは、もう何度も毒づいた私の口癖になってしまった。

一体、こんな男の何処がいいのか。もっと他に再婚するのに良い男はいくらでもいるではないか、と、私の友達や、親友達は口々に同じ事を口にする。
今はいいよ、まだ彼が生きているから。でも、どう考えても、病気の彼が先に逝くでしょ。その後、親戚達は、まだ生きているのよ。義理の妹も、息子も、何ならあなたよりは長生きするでしょう。あなた、老後、その人達が、あなたを手厚く看てくれると思ってるの?と。

確かに、それを考えると、ほんとにこのままこの人と一緒になって大丈夫なのかしら、と私自身も自問自答する。そしてそこに正しい答えなど見つからない。

これを書きながら気がつくのだけれど、
大体、私が不安になる時は、寝不足の時だったり、疲れている時がほとんどだったりする。
それと、なんと言っても、彼の病気の具合に寄る場合も多い。
もう2ヶ月近くも会えていないのだから、寂しくて、不安で、私の心がグラグラしてくるのは至極当然な事なのかもしれない。

早く病気が寛解して、元気な姿の彼に会いたいものである。そうしたら、この私の分裂しそうな心も、少しくらいは安定するのではないだろうか。ほんとにそう願う。

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