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E:登記されていない建物に住民が住み続けている宅地(前編)
今回は1本で終わりませんでした。前編はノウハウというよりもエモーションな話なので無料でお読みいただけるようにしました。
今回はタイトル通り、土地の前所有者がその土地に建っている未登記の建物に住み続けている物件でした。田畑が拡がっている中に集落がある感じの地域にある土地で、固定資産評価額もそこそこあるため税金も払っている土地でした。
おそらくですが父親(の法人)が購入した時、人が住んでいるとは知らずに買ったのだと思います。係争に強そうなタイプでもありませんでしたし、ITスキルがどこまであったかわかりませんがGoogleストリートビューも見ずに決めたんだろうな、いやむしろ見て「大きな家が建っていてお得だ」と思ったのかもです。
登記簿によると土地に関しては前所有者から信販会社に所有権がいったん移っていて、それを父親(の法人=いま清算中の会社)が競売で購入していました。建物の登記はありませんでした。
ちなみにですが、清算中の会社の他の所有物件も1つを除くと他は全て競売で購入した不動産でした。不動産を格安で購入する手段として知り、蒐集するように不動産を買っていたと思われます。何かそういう病気だったのかもしれませんね。そういうこともあって父親とは疎遠になってしまい、気がついたら負動産とともに供養することになっているという状況です。
さて、登記簿から読み取れる情報として、この住民(土地の前所有者)は周辺の土地を何筆も所有しているようでした。そのうち一筆の土地に未登記の建物(住宅)をみっちりと建て、その住宅直下の土地だけ競売に取られたようです。母から聞いた話ですが、一度父親が交渉に行って話をしたところ「住み続けていていいと言われている」と言われ、地代を払ってもらえそうな雰囲気すらなかったようです。前所有者もその親から相続した土地だったようで、その時に入れ知恵があったのかもしれません。
この「住み続けていい」は「法定地上権」という民法の規定から発生する、土地が別所有者に移っても以前から住んでいたのならその上の住居に住み続けていいという権利です。詳しい要件等はお調べいただけたらと思いますが、私はこれは非常に不平等なルールだと思っていて改善されて欲しいと思っています。
人が住み続けているような訳あり物件では普通に売却するにもできず、使い道もないなかで固定資産税だけ払い続けなければならないような詰んだ状態になり得ます。強制的に地代を払わせるための裁判をして長い時間と費用がかけるのも、自分の判断で買ったならともかく、受動的に相続せざるを得なかったようなケースでそこまでやるのも割りに合いません。
法定地上権は住む人を保護するための規定というか、土地と建物の所有が別になったときにすぐに建物を壊さないといけないようなことにならないようにあるルールなのかなと思っていますが、はっきりいってそれを悪用できる状況になっていると感じます。新所有者との契約調整を拒否して住み続けられるというのは理不尽です。
まあ、競売物件を買うときの注意点・初級編のその①、「未登記の建物に住み続けている人間がいないか確認する(確認できないなら買ったりしない)」ができていればそもそもこういう面倒を被ることにはなりませんし、遺族が面倒に巻き込まれることもないということですね。
ちなみに私たちの家族の場合、父親から相続するものの中に母が住んでいるマンションがあったので、負動産があることを把握した上で相続放棄を選択しませんでした。相続というのは家や資産をもらえてラッキー!な制度ではなく、「お前がしっかりしないと末代まで迷惑がかかるぞ」とプレッシャーをかけてちゃんとさせるためのシステムなのです。そして、ちゃんとしなかった場合には実際に末代まで迷惑がかかるのです。
父も自分が生きているうちにこの物件(だけでなく他の物件も)をなんとかしようと思っていたのかもしれません。
でも人間は自分がいつまで生きるか自分で決めることはできません。元気なうちに、資産やらの必要不要のリストを作ってそれぞれの整理方法をまとめておき年に一度はそれを更新するようにするべきだと教えてもらいました。
この物件の処分については後編として書きます。
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