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わたしは変形菌になりたい。
変形菌をご存知だろうか?
菌と呼ばれるものの、きのこ(菌類)や、カビ(細菌類)とは違う謎深きアメーバ生物、変形菌。
Re:Sの編集者で僕のマネージャーもしてくれている、はっちがマクロレンズを買って以来、山や森に入るたびに変形菌を探しまわっていて、その必死な姿に、そんなにも魅力的なの? と、彼女が大切にしているという『美しい変形菌』(写真&文:高野丈さん)という写真集を見せてもらった。
僕もすっかり魅了されてしまった。
変形菌は胞子を飛ばすキノコのようなものからアメーバのようなものまで、その名のとおり形を変える生きものだ。この不思議でミクロな生きものに、僕が惹かれたのは見た目の美しさというよりも、その特徴だった。
変形菌はキノコやカビのように、落ち葉や朽ち木の上に現れるのだけれど、生態系において「分解者」とよばれるそれらとは違って、落ち葉や朽ち木を分解吸収しない。それどころか、分解者であるバクテリア(細菌)を捕食しているという。
これ、普通に考えると、
え?!
あらゆるものを分解して森林を浄化してくれるバクテリア(細菌)を食べちゃうの?
ダメじゃん!!!
って、思わないだろうか?
僕は最初そう思った。
しかし、しかしだ。
そんな変形菌も、生態系の欠かせない一員なのだ。ちょっと聞いてほしい。
上述の写真集のなかで高野さんはこう言う。以下、引用させていただくと、
もし、 この地球上に変形菌が存在しなければ、バクテリアや菌類が今よりも大幅に増え、倒木や朽ち木、 落ち葉の分解のスピードが速くなることが考えられます。分解が速く進むことのなにが問題なのでしょうか? 例えば、 落ち葉の下や朽ち木の中をすみかにしたり、冬越しの場所にしたり、食べたりしている微生物や昆虫に影響が出ます。 そうなると、それらを捕食していた昆虫や鳥類、 ポリネーター(花粉を媒介する生きもの)にしていた植物にも影響が及びます。 変形菌は、 分解のスピードが加速しすぎないよう、 ブレーキをかける役割を果たしているといえるのです。
『美しい変形菌』著:高野丈(パイインターナショナル)より
先日、秋田県にかほ市にある獅子ヶ鼻湿原に行ってきた。落ち葉が積もってふかふかのスポンジのような森を歩いていると、堆積した落ち葉たちが、変形菌のブレーキをもって、ゆっくり分解されているからこそ、こんなにもふかふかで、それゆえこの地下に雨水や鳥海山の雪解け水を溜め込めるのだろうと実感した。
「知識」というのは、そういうことなのだと深く思う。
つまり、
知ることで世界が広がり、景色が変わってみえる。
それが知識の意味だ。
たった一つの役割や効能を持って何かをスターに仕立てたり、またその逆で、わるもの扱いしたりすることの不毛さ。我々の視界に映るものがたった一つの側面でしかないことを、驚きや感動とともに教えてくれるのが知識のチカラだ。
目の前の大樹の地中には、眼前に広がる枝葉と同じだけの根っこが広がっているという。僕は枝葉よりもその根っこを感じたいし、可愛らしいキノコよりも、その下で小さくも同じように胞子を飛ばす変形菌の姿を感じたい。
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