仲間と出会う条件
地元、三重県伊賀市を盛り上げようと奮闘する友人Kくんに呼んでいただいて、伊賀で地域編集についての講演をさせてもらっていたときのこと。
編集の肝であるディレクション。つまり、座組の決定や、チームプレイの重要性について語ったことから、終盤の質疑応答でこんな問いをもらった。
「チームプレイが大事なことはわかったんですが、そもそもチームを組みたくなるような仲間と出会えなくて、1人でやるしかない状況なのですが、仲間に出会うにはどうすればいいでしょうか?」
最近、地方に行くと、こういったチームビルディングについての質問がとても多く、なかでも特に、今回のような、それ以前の段階というか、そもそも仲間に出会うには? という問いをもらうことが多い。
その意図も、気持ちも、言わんとすることも、よくわかるだけに、誠実に回答したいなあと思い、さて僕はどうやって、信頼できるクリエイターや、仲間たちに出会ってきたのだろうか? と考えてみた。
そこで思い出したのが、かつて編集した雑誌『Re:S』vol,9の巻頭特集「一緒にやる」だった。発行は2008年の夏、15年も前の特集だ。
そもそも、表紙に「一緒にやる」とだけ書かれた雑誌を、いったい誰が買うんだ? とその無邪気すぎる編集に頭を抱えそうになるけれど、若いというのは、恐ろしくも、素晴らしいもので、タイトルそのままに、実直極まりないその特集は、いまの僕には作れないものかもしれないとも思う。こんな特集を組んでいた当時の僕のピュアさは、まさに講演最後に質問をくれた彼のそれと、なんら変わらない気がした。
当時は、まだメディアにも登場していなかった、ミシマ社の三島くんと仲間たちへの取材からはじまり、D&DEPARTMENTのナガオカケンメイさんのインタビューなど、まさにチームビルディングの肝について掘り下げていく内容だったけれど、そこで得た結論を、自分で読み返して、なんだか吹き出してしまいそうになった。
と、その前にまずは特集冒頭のことばを引用する。
2008年ということは、当時34歳。20代の闇雲ステージから、ひとつフェーズが変化して、さまざまなプロジェクトをすすめていくなか、いよいよ仲間の重要性をリアルに意識するようになっていた時期なのだろうなと想像する。しかしそれにしては、稚拙な特集だと思いもするけれど、別にいまでもテクニカルな編集をするわけじゃないから、まあ変わってないか、とも思う。なんにしろ、冒頭の文章は我ながら素直だ。
さて、ここで特集の結論を一部引用すると、
つまり「自分でやったやつだけが、一緒にやるライセンスを持つ」ということ。なんとまあ手厳しい結論! つまり、仲間に出会えていないってことは、自分でやりきってないからだ! と言っている。 たしかに。
実際、仲間に出会えないという人の話を聞いてみると、結局、やってはいるけど、やりきっていないなと思うことが多い。どこかの事例の真似事で終わっていたり、やらなきゃと思っているのに、現実的にやろうとしていなかったり。けれど、三島くんも、ナガオカさんも、思うが先か行動が先か、とにかくやりきっていた。そこでようやくスタートラインに立てるのだという当たり前の答えがそこにはあった。
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