AKITA サーキュラー・エコノミー・ツアー
トリノス食堂
今年は特に不漁がつづく季節ハタハタ。北国秋田の冬の貴重なタンパク源であったハタハタも年々獲れなくなってきているという。それも温暖化による影響の一つなのだろうか。
そんな冬の秋田に #サーキュラーエコノミー実践 の著者である安居昭博くんと、ジモコロの編集長であり、またYahoo! JAPAN SDGsの編集などでも活躍する徳谷柿次郎の2人を呼びして、一緒に鼎談をさせてもらった。
↑手前味噌ながら、とてもよいトークだと思うのでぜひ観て欲しい。
そもそも安居くんと柿次郎を秋田に呼ぶことになったのは、柿次郎が企画してくれた京都での鼎談イベントがきっかけ。次回やるならぜひ僕のホームの一つである秋田でやろうよ!とお願いをしたことから、お忙しい2人の来秋が実現したのだった。
秋田入り当日は強烈な寒波で、空港の状況によっては伊丹に引き返しますというアナウンスにドキドキしていたけれど、僕と はっち(Re:Sの編集者)と安居くんを乗せた飛行機はなんとか無事秋田空港に着陸。長野から新幹線で来てくれた柿次郎チームとも合流し、まずは僕の大好きな秋田市の『トリノス食堂』で打ち合わせがてら夕ご飯をとることにした。トリノス店主のヨシロウくんはマジ天才すぎて営業スタイルがコロコロ変わるから、気軽に誰にでもおすすめできるお店ではないのだけど、僕は心底彼の料理が好き。
ヨシロウくんのお店にはメニューがなくて、まさに一期一会な料理ばかり。また食べたいと思っても再び食べられるものはなくて、その刹那がトリノス食堂の好きなところでもある。手際よく色々な料理を作ってくれて大満足なのに、お会計の後に「あ、寺田本家の酒粕でつけたやつ出すの忘れてた。三日前から仕込んでたのに…」とか言ってくるヨシロウくんが僕はたまらなく好き。お店の内装も彼自ら手がけていて、僕は彼のような料理人といつか一緒にお仕事ができればとずっと考えている。
安居くんの著書にも出てくる、オランダの『Instock』という廃棄食材を活用したレストラン。
こういうことが秋田でできたらなあ〜。これを実現させてくれるシェフがいるとしたら、きっとヨシロウくんのような人だ。なんて秘めた思いを持つ僕は、どうしても安居くんと柿次郎にトリノス食堂のご飯を味わってもらいたかった。
秋田マテリアル
イベント当日の朝、僕が秋田の拠点としている『にかほのほかに』に向かうべく、秋田市からまっすぐ車でにかほ市へ。今日は1日かけてにかほ市を案内するぞとガッツリ予定を組んだ。そこでまず最初にやってきたのは、様々な金属や、産業廃棄物の処理、収集運搬、買取を行なっている、秋田マテリアルという会社。
秋田マテリアルさんとは、にかほのほかにのなかでスペースを持ってもらって、廃棄物のリユースなどをどんどん進めていきたいと考えている。社長の佐藤さんよろしくです!
にかほ産いちじく
秋田マテリアルが思いのほか楽しくて気付けばもうお昼。そこで、五島というお寿司屋さんでお昼ご飯をいただくことに。
あ、そう言えば五島でお寿司をいただく際に、安居くんがとてもスマートにマイ箸を取り出して、それを見た僕とはっちが慌ててマイ箸を取り出すということがあった。まだまだ安居くんのようにマイカトラリーを使うことが習慣化出来てないことを自覚。ちなみに僕はマイ箸とスプーンをかならず持ち歩く筆箱に入れるようになってから、一度たりとも忘れなくなった。旅先で必ず毎日ヨーグルト買っちゃう僕はこのおかげで、プラスチックのスプーンを一切もらわなくなったので誰か褒めて。
さて、五島を出て向かったのは、いまやにかほと言えば、な北限のいちじくの産地、大竹集落。にかほのいちじくの価値を高め、にかほの暮らしに根付く、いちじくの甘露煮文化を継いで行こうと始めた、いちじくいち というマルシェイベントを共に運営する、勘六商店(小売酒屋さん兼、いちじく甘露煮の製造販売元)の玲くんに、にかほのいちじくや甘露煮について説明いただく。
秋のにかほ市で、たくさん獲れるいちじくを長く美味しく食べるために、甘〜く煮詰めて保存食とするいちじくの甘露煮は、食品を無駄にしない一つの知恵だ。
実は秋田県というのは、47都道府県中、北海道に継いで2位だという。けれどその一方で、家庭系の食品ロスが日本人平均の1.7倍も多い。足りないことをいやがる秋田人のおもてなし精神の現れでもあるだけに、簡単にそれを否定したくはないけれど、やはり改善していかねばいけない大きなポイントであることは間違いない。
いまは生産者としていちじく栽培も経験しながら、甘露煮づくりに励む玲くんは、甘露煮製造の過程で出るいちじくのヘタや、剪定の際に出る枝などを堆肥化出来ないかとチャレンジしていると話してくれた。この二年のコロナ禍で、いちじくいちも開催できずにいるのだけれど、その間に玲くんは玲くんなりに色々頑張ってるんだなぁとその試みを聞いて感動した。
ちなみに玲くんのお店、勘六商店ではお酒の量り売りもしていて、とてもいいなと思った。お酒は瓶だからリユースできるとは言え、そもそも自前の瓶に入れられたらもっといい。量り売り用のかわいい瓶つくろうかなあ。
飛良泉
続いて向かったのは、にかほ唯一の酒蔵。1487年、室町時代創業の飛良泉。二十六代目である現社長の息子さんで、現在は専務の齋藤雅昭くんに案内いただき、飛良泉の酒造りについて説明してもらった。
飛良泉の特徴である山廃仕込みなど、難しい酒づくりの説明をたくさんの例えを使って、実にわかりやすく話してくれる雅昭くんに、こういう言語化の得意な人が、いまの地酒人気をつくっているのだとあらためて思う。言葉のチカラを信じて仕事をする僕としては、作り手でありながら、ユーザーの理解の手助けが出来る人が頼もしくて仕方ない。結果、柿次郎はこの秋田滞在中に飛良泉の酒を12本買って帰った(買いすぎだろw)。
ハタハタ
魚偏に神と書く「鰰」は、まさに冬の厳しい秋田にとって神様のような存在だったに違いない。秋田の人たちがハタハタを冬場の貴重なタンパク源として、いかに重宝し、また大切にしてきたかは、一時期に大量に獲れる季節ハタハタを #しょっつる という魚醤にしたり、 #ハタハタ寿司 という飯寿司にする食文化からも強く感じることができる。
そんなハタハタが今年はかなり不漁続きなのだという。そんなハタハタの状況を見てみようと漁港を覗いてみると、たくさんの釣り人が列を成して釣り糸を海にたらしていた。これはあくまでも釣りではない。という暗黙の了解的なやつ。
ハタハタフィーバーと言えば、以前、なんも大学で紹介したような光景しか知らなかったけれど、こういうフィーバーもあるんだなあと知る。
その後、ようやく #にかほのほかに に到着して、イベントを開催。Live配信の運営は同じくにかほ市の閉校した小学校を活用した「わくばにかほ」のメンバーたち。おかげでスムーズに終了。何度も言うけど、ほんと良いイベントだったと思う。
安居くん、柿次郎、本当にありがとう。
柿次郎のサーキュラーエコノミーメガネの話。よかったなぁ。
夜は、大好きな六三五で打上げ。食べられると良いなあと思っていたハタハタもバッチリ!
サーキュラー・エコノミー・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド
イベントの翌朝、ホテルの朝食を無しにしてもらって案内したのは、にかほ市金浦にオープンしたばかりのベーカリー&ビストロ『CRUST』。安居くんが住んでいたオランダからにかほ市に移住してくれたペーターさんが作るめちゃ美味なパンがいただける最高なお店。にかほ市民の幸福度を爆上げしてくれたこの店に、絶対に安居くんを連れてきたかったのだ。
ペーターさんの奥さんの亀崎さんが隣町、由利本荘出身ということもあって、にかほへの移住を決めてくれたのだけど、オープンしてまだ数ヶ月ながら、地元の母さんがたが平日でもランチに訪れたりと、さっそく町の人たちに受け入れられているのが本当にすごい。
今日はこのまま男鹿市に向かう予定なので、午後からは、にかほを出てしまうのだけど、その前にどうしても案内したかった #元滝伏流水 へ。
なんだか数日一緒にいると、どんどんバンド感が出てくる。このメンバーで鹿児島も行きたいねとか、沖縄行こうとか、そんな話が尽きない。サーキュラー・エコノミー・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド結成だ。
真坂人形
男鹿に入る前に急遽秋田市に立ち寄ることにしたのは、ちょうど真坂人形の真坂くんの展覧会が今日、スタートすることを知ったから。
とにかく僕は彼のことをマジで天才だと思っている。彼のつくる土人形のナマハゲを買いたいと思っていた僕は、まさか(真坂)今日が初日だと知らず、その情報を見つけて、いてもたってもいられなくなったのだ。というのも、彼の作品は本当に人気で、初日にその多くが旅立ってしまう。しかも今日は、無類の郷土玩具好きおじさんの柿次郎がいる。きっと柿次郎も気に入るはずとそう見込んだ。
そして柿次郎は、こんなに買ってしまっていいのかなあ? と気を遣いながらも、あの人にプレゼントするんだ、新しい拠点に飾るんだと、結果この通り!
うんうん、その気持ちわかる。もちろん買ってくれていいんだよ。真坂くんを応援してくれてありがとう。
紹介したなんも大学の記事にもあるけれど、真坂くんは秋田の美大にいた頃、秋田に古くからある「八橋人形」という土人形の郷土玩具に出合った。そこから手びねりで天神様や福助など古くからのモチーフをつくりはじめ、それがいずれ、ゾンビだ、タヌキだと、いろんなモチーフへと変化していったのだ。それはきっと、八橋人形そのものの継承ではなく、八橋人形に内在するものを継承した結果だと僕は思う。
先日、東京にある国立近代美術館で『民藝の100年』という展示を見てきたのだけれど、民藝運動がやがて縄文土器にもその要素を見いだしたことに対して、こんな記述があった。
真坂くんは八橋人形が内在するプリミティブをこそ掴み、それを淡々と循環させているのだと思う。こういう活動も僕はサーキュラーエコノミーな試みの一つだと思う。
土と風
さあ、いよいよ旅も終盤、今回個人的にも一番楽しみにしていたのが、元、新政の蔵人、岡住修兵くんが男鹿市に立ち上げた醸造所『稲とアガベ』。さらに先月オープンしたばかりの蔵併設のレストラン『土と風』。
とにかくここで岡住くんのことを書こうと思うと、到底、尺が足らないので、かいつまむと、彼はとにかく秋田で新しい酒蔵を造ろうとしている。
え? 醸造所出来てるじゃん。と思われるかもしれないけれど、現行法において日本酒を製造する免許の新規取得は不可能。なのでここは「その他の醸造酒」と言われる清酒でも果実酒でもないお酒の醸造所になる。仮にいますぐ新規参入しようと思うと、既存の酒蔵を買収するしかその方法はない。しかし岡住くんはクラフトビールのように若者たちが小さな蔵で清酒造りにチャレンジするようになることが、日本酒の未来を作ると信じている。だからこそ彼はその情熱をもって、現行制度の規制緩和を目指すというとんでもないチャレンジを続けているのだ。そんな岡住くんを知る人間のほぼ全てが彼を応援してる。もちろん僕もその一人。そんな彼がいよいよ『稲とアガベ』をつくり、優秀な二人のシェフとの奇跡のような出会いを経て、『土と風』をもオープンさせた。こりゃあ行かないわけにいかない!
まずはこの、たった一粒の干し葡萄のためのペアリングからはじまり、そこから約二時間、存分に男鹿の、秋田の風土を身をもって体感させてもらった。
ちなみにこのスープに使われているマッシュルームは規格外で売りに出せないものを使用しているとのこと。そして、この泡泡スープに合わせてきた、稲とアガベの燗酒の相性の良さに、食道から下、全部とろけるかと思った。
実は二日前にとある場所で、同じこの貴重なお酒を飲ませて頂いたのだけど、その際にもめちゃくちゃ美味しいと思ったその天井を軽くぶち抜いてきた温度の妙。
すべての料理にお酒をペアリングしてくれて、その淹れ方、器、温度に、いちいち感動しっぱなしだった。実は事前に蔵を案内してもらって、ここに至るまでの話をあらためて聞いていたので、その感動もひとしお。
3日間にわたる秋田サーキュラーエコノミーツアーもいよいよ終了かと思うと、なんだか寂しくなるけれど、しかしそのフィナーレにふさわしい時間。安居くんと柿次郎が来秋してくれたことで、あらためて秋田のポテンシャルの高さを実感できた。今度は夏の秋田にもきてもらわなきゃなあ。
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