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AppleがiPhoneから奪った役割の行方 — 今後のiPhoneの姿を考える
先日のSeptember Apple Eventでは、「iPhone 15」ファミリーや新型の「Apple Watch」などが発表された。
毎年大きく注目されるのは新型iPhoneだが、今年は近年でも特に進化が少ない年であった。
しかし、「既にiPhoneの進化は頭打ち状態」という一言で片付けるわけにはいかない。
AppleがiPhoneから奪った役割
iPhoneは、いつ、どこでも、気軽に何でもこなせるツール。
iPadは、Macよりも気軽に仕事やクリエイティブな作業ができるツール。
Macは、よりプロユースを想定したツール。
Apple Watchは、…とこのように、
Appleはツールごとに与える役割の振り分けがとても明確である。
しかしどうしても、iPhoneは不明確になりがちだ。
何でも出来てしまうスマートフォンの宿命とも言える。
もともとスマートフォンは、電話とメール(これらは現代ではSNSに括られるだろう)にプラスして、
簡単なインターネットブラウズ、カメラ機能、音楽再生、予定管理、アラーム機能などを1つでこなせるものとして誕生した。
時代が進むにつれ、高品質な3Dゲームやエンタメが楽しめたらより便利、とされるようになった。
最近ではカメラやグラフィックの性能を追求し、果たしてスマホにそこまでの性能は必要なのか、というレベルまで来ている。
さらに残念なことに、全てを最上級まで突き詰めようとするあまり、iPhoneが初代以上に高価なものになってしまった。
Appleは1度原点に立ち返り、本来のスマートフォンの姿を見つめ直したのかもしれない。
もしくは、iPhoneが今背負っている役割を軽くしたかったのかもしれない。
どちらにしても、ゲームやエンタメは、いつ、どこでも、気軽に大画面で楽しめる提案をするべき、と考えた。
さらに、iPadの役割である仕事やクリエイティブな作業も、いつ、どこでも、気軽に大画面で楽しめる提案に統合し、新たなツールを作ろうと考えた。
順序は逆(新たなツールの提案があった上で、iPhoneの役割を軽くしようと考えた)かもしれない。
どちらにしてもAppleが、次世代の生活に溶け込む、新たなツールを提案するのは必然である。
その結果が、「Apple Vision Pro」というわけだ。
次世代の生活の軸となるデバイスの誕生
今年6月に開かれたWWDCで、Appleは「Vision Pro」を発表した。
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Tim Cook氏はWWDCのKeynoteで、
「Apple Vision Proはコミュニケーションやコラボレーション、仕事のやり方、そしてエンターテイメントの楽しみ方も変えるでしょう。」
と述べている。
Appleが望むVision Proのあるべき姿
Vision Proは、仮想現実(VR)ではなく、複合現実(MR)を実現したデバイスだ。
Appleは、すべての人が24時間365日、Vision Proを着けて生活する未来を望んではいない。
1つのエンターテイメントとしては良いのかもしれないが、仮想世界(VR)に入り込む生活は、人間が本来送るべき生活の姿を失っていると考えているからだろう。
Vision Proのプレスリリースでも、
デジタルコンテンツを現実の世界とシームレスに融合しながら、実世界や周囲の人とのつながりを保つことができる革新的な空間コンピュータ
と紹介されている。
Apple Visionの開発の根幹にあるのは、「ユーザーを周りの人たちから決して孤立させない」ということだ。
ユーザーから周りが見え、周りからもユーザーが見える。
Appleがいかに、このデバイスを生活に溶け込ませたかったのかがわかる。
つまりAppleはVision Proを、単なるMRゴーグルとして、欲しい人が買えばいいガジェットとして終わらせる気はさらさら無い。
Appleのエコシステムに取り入れ、次世代の生活に無くては困る、1つの新たな「ツール」にしたいのだ。
AppleがVision Proに与えた役割
これまでiPhoneやiPadが担ってきたゲームやエンタメ、仕事、クリエイティブといった役割をまとめてApple Visionが引き受ける。
そしてApple Visionは、どこにでも持ち運べる複合現実の大画面ディスプレイという特性を活かし、新たな役割も担うことになる。
例えば、シアタールームを作らなくとも、大画面の映像と空間オーディオによって大迫力の映像体験が楽しめる。
仕事部屋を作らなくとも、大画面のディスプレイを無限に出すことができる。
集中できないときには、仮想空間を作って自分の世界に入り込める。
さらに、これらの「空間」を自宅でも、職場でも、学校でも呼び出せる。
これが、Apple Visionに与えられた「空間」という役割だ。
Appleが見ている未来のiPhoneの姿とは
今後、iPhoneの役割は確実に縮小するだろう。
それでも、スマートフォンの原点に立ち返り、コミュニケーションツールとして、インターネットブラウジングツールとして、(不要と考える人も存在するが)カメラとして、音楽プレイヤーとして、予定管理ツールとして、アラームとして、お財布として、存在し続けるはずだ。
これらの役割を果たすのに、これ以上のCPU性能もGPU性能も必要ない。
毎年たくさんの新機能が見込めるわけでもない。(そういう意味では頭打ち状態だが)
例年大きく注目されるのは新型iPhoneだが、今年のように今後はiPhoneの進化はこれまで以上に鈍化し、あえてiPhoneに対する期待を薄めていくかもしれない。
一方で、AppleがVison OSの開発を強化していることからも、今後のApple Eventの主役はApple Visionシリーズとなるだろう。
しかし、Apple Visionは、決してiPhoneやiPadに取って代わるツールではない。
今後もiPhoneは私たちの生活に欠かせないツールであり、Appleのエコシステムから消えることはないだろう。
※あとがき・2023年9月15日※
本文最後の章にて、「これ以上のCPU性能もGPU性能も必要ない」「あえてiPhoneに対する期待を薄めていくかもしれない」と述べていたが、冷静に考えれば、Appleが何のためにA17 Proチップを開発したかという話になる。
iPhoneは今後も私たちの生活に寄り添う、生活に欠かせないツールという趣旨で話をするのであれば、AI学習をするために今後もCPUもGPUも性能向上が必要であり、まだまだ便利になるはずのiPhoneを、あえて期待を薄めることはしないだろう。
と考えることもできる。