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04_自分もそうだがほとんどの人が分からない宇宙際タイヒミュラー理論(IUT)を、個人的に推しているということもあり、無理ゲーなのは百も承知で解説してみる

最後の秘境へ挑む:log-クンマー対応


深呼吸の準備はいいですか?私たちは、IUTの大冒険における重要なターニングポイントに到達しました。心して進んでください。

今回は、IUTの最強兵器の1つ、「log-クンマー対応」という難攻不落の要塞に挑みます。この複雑に絡み合った関係性の網は、あの強敵ABC予想に立ち向かうための、望月さんの壮大な戦略の核心部分と言えるでしょう。

まずは復習:これまでの道のり

これまでの章で、私たちは「遠アーベル幾何学」というエキゾチックな世界を探検し、方程式の根本的な構造を理解するための鍵が、具体的な形ではなく、抽象的な「基本群」にあることを学びました。

従来の数論の特定の側面を見事に表現する、レゴブロックのような「ホッジ劇場」を作っていく過程で、望月さんがいかに巧みに「変形」(通常の数学的概念を微妙にねじ曲げる離れ業)を用いているのかを見てきました。

さらにここで、事態を複雑にするあの憎き対数、log-テータ格子上で分離しなければならない厄介者の登場です。「反復」する対数を表す、垂直方向のlog-リンクの列。そしてホッジ劇場を繋ぐ水平方向のテータリンクの列…そのどれもが、様々な対称性を維持するという難題を突きつけてきます。まさに曲芸です!

log-クンマー対応:2つの世界を繋ぐ架け橋

さて、複雑に構築されたこの世界のなかで、1つだけはっきりと明らかなことがあります。それは、私たちを悩ませる対数が、私たちが普段行う数学、つまり環やスキームの構造に根差した数学と、全く相性が悪いということです。

log-クンマー対応は、そんな対数という壁の反対側にある構造同士を関連付けることを可能にする、画期的な回避策として登場します。2つの異なる数学言語、つまり「フロベニオイド的」言語と「エタール的」言語のための、一種の「数学翻訳機」と考えてみてください。

前回で触れた「モノイド」のように、フロベニオイド的なものは、体や環に関連する構造を表します。一方、「ガロア群」で表現されるエタール的なものは、より抽象的で、根底にある対称性のパターンに焦点を当てています。log-リンク(log-テータ格子上の垂直方向のリンク)の両側に存在する、一見無関係なこれらの「言語」間で情報をやり取りできるようにするために、望月さんは、あの頼りになるクンマー理論(03で出会った便利なデコーダーですね)をさまざまな対象(「テータ関数」とか!)に適用することを発見しました。

イメージで理解!(そうでないと、私たちの脳では処理しきれません…)

巨大で荒れ狂う川[=対数障壁]で隔てられた2つの王国を想像してみてください。この川に直接橋を架けることは不可能です—対数たちがそれを許さない!そこで、川沿いに運行するフェリーボートのシステム[=log-クンマー対応]を思い浮かべてみてください。

フェリーは2つの岸を直接繋いではいません[=不適合性]が、慎重に荷物を運びながら「往復」しています。各フェリー[=クンマー同型]には、異なる種類の荷物が積まれています。荷物は、特定の数字に関する情報[=テータ値]だったり、あるいは数体全体の構造に関する情報だったりするわけです。

これがなぜ、画期的なのか?

実は、複雑なlog-クンマー対応のおかげで、一見バラバラなピース(テータ関数と数体の両方に関連するピース)を、これまでに誰も想像し得なかった方法で関連付けることができるようになったのです。

望月さんは、対数が蔓延るホッジ劇場という難攻不落の森に秩序をもたらし、隠れた関係性を見出したのです。これは真の数学のジェダイの偉業です!

(続く…かどうかは未定!)


次回は、log-テータ格子という大海原にさらに深く潜り、望月さんがどのようにそれを用いて、「多輻的表現」(構築された奇妙な新世界について語り合うためのフレームワーク)を作り上げていったのかを見ていきます。

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