ネオ・トウキョウ・デイズ_003
未来世紀の日常クロニクル
エピソード003:抵抗
西暦2***年、ネオ・トウキョウ。高度に発達したテクノロジーによって、人々は物質的な豊かさを享受している。しかしその裏では、政府による監視と情報統制が強化され、個人の自由は制限されている。街の華やかな表面とは裏腹に、地下深くにはテクノロジーの進化に警鐘を鳴らし、人間本来の自由を取り戻そうとするレジスタンスたちが存在する。
地下深く、薄暗い路地裏にあるバー「アナーキー」。そこは政府の監視の目を逃れ、反テクノロジー思想を持つ人々が集う秘密の場所。バーの店内はレトロな雰囲気で、ホログラムやVRなどの最新技術は一切使われていない。薄暗い照明の下、人々は酒を飲み交わし、社会への不満や不安を語り合う。
カウンター席でウイスキーを呷り、天井のホログラムディスプレイに映し出されるニュース映像を睨みつける。画面には、最新の脳インプラント技術によって人間の感情を制御することに成功したというニュースが流れている。政府はこの技術を「社会の安定と幸福を実現する画期的な技術」と称賛しているが、人間の感情を操作することに嫌悪感を抱く。
「クソッタレ…人間を機械の部品みたいに扱うつもりか」
行き過ぎたテクノロジー化に憤りを感じる。「テクノロジーは人間を幸福にする」という政府のプロパガンダを信じない。テクノロジーは人間から自由を奪い、思考を支配し、感情までも操作しようとしている。人間は喜びや悲しみ、怒りや不安といった様々な感情を抱き、それを表現することで人間らしく生きている。政府はそうした人間の根源的な部分を否定し、テクノロジーによって管理された均一的な社会を作り出そうとしているように思える。
反テクノロジー組織「リベレイターズ」。リベレイターズは政府の監視システムをハッキングし、テクノロジーの危険性を訴えるメッセージを拡散する。時には直接的な破壊活動を行うこともある過激派組織であり、政府から危険視されている。組織のメンバーはそれぞれハッキング、プログラミング、戦闘などの特殊技能を持ち、地下社会で活動する。
「次の作戦が決まったぞ」
カウンターの奥から、リベレイターズのリーダーの声がかかる。彼はサイバーセキュリティの専門家で、政府の監視システムを自在に操ることができる天才ハッカーだ。彼はかつて政府の研究所で働いていたが、テクノロジーの危険性に気づき、リベレイターズを結成した。
「今回は脳インプラント技術の開発に関わっている研究所を襲撃する。開発データを盗み出し、技術の危険性を世間に公表するんだ」
彼の言葉に真剣な表情で頷く。この作戦が危険を伴うことを理解している。政府の研究所は厳重な警備システムで守られているため、侵入は容易ではない。作戦が失敗すれば逮捕・投獄されるだけでなく、脳インプラント技術によって洗脳される可能性もある。しかし、歯止めなきテクノロジー化を止めるためにはリスクを冒すことも厭わない。
「いつやるんだ?」
「明日の夜だ。研究所の警備システムをハッキングして侵入経路を確保する。お前は俺と一緒に研究所に潜入し、データを盗み出すんだ」
「了解」
ウイスキーのグラスを空にし、カウンターから立ち上がる。未来社会の闇と戦うために命を懸ける覚悟だ。たとえそれが孤独な戦いになろうとも。
翌日の夜、研究所へと続く地下通路に侵入する。リーダーは巧みなハッキング技術で警備システムを無効化する。警備ロボットを格闘術で倒していく。幼い頃から武術の訓練を受けており、その身体能力は常人を遥かに凌駕している。研究所の中枢部に到着すると、二人は脳インプラント技術の開発データが保管されているサーバーを発見する。
「よし、データをコピーするぞ」
リーダーはサーバーにアクセスし、データのコピーを開始する。周囲を警戒する。研究所内は静寂に包まれ、緊張感が漂う。
「逃げろ!」
リーダーが叫ぶ。警備員が侵入に気づき、駆けつけてきた。リーダーを連れて研究所から脱出するために走り出す。
「追ってくるぞ!」
警備員たちは執拗に追いかける。優れた身体能力と戦闘技術で警備員たちを翻弄するが、数で勝る警備員たちに徐々に追い詰められていく。
「ここまでか…」
警備員の銃弾に倒れ、意識を失う。
目覚めた時、病院のベッドに横たわっていた。リーダーの姿は見当たらない。
「大丈夫ですか?」
看護師が声をかける。
「リーダーは…?」
「あなたと一緒にいた男性は警察に逮捕されました」
絶望感に襲われる。リーダーは捕まり、脳インプラント技術の危険性を世間に公表するという計画も失敗した。現実の闇は想像以上に深く、そして強大だった。
しかし諦めない。リーダーの意志を継ぎ、社会の闇と戦い続けることを決意する。たとえそれが孤独な戦いになろうとも。リーダーが逮捕される前に託されたデータチップを握りしめ、必ずこの情報を世間に公表すると誓う。
病院の窓から見えるネオ・トウキョウの夜景を見つめ、静かに拳を握りしめる。ネオンサインが煌めく街並みは美しくも冷酷だ。