ポイント解説:トヨタを超えるはずが…4億円救急車はどこへ消えた?
国見町(福島県伊達郡)議会は、2022年度に実施された高規格救急自動車研究開発事業に関して、数々の疑惑が持ち上がったことから、特別委員会を設置し調査を行いました。その結果、事業の不透明性と違法性を強く示唆する内容が明らかになりました。
以下に、報告書の内容をわかりやすく整理し、解説を加えます。
1. 事業の目的と概要
国見町は、企業版ふるさと納税を財源として、高規格救急車を開発・製造し、近隣自治体にリースする事業を計画しました。
事業予算は4億3,200万円。
公募型プロポーザルを実施しましたが、応募したのは株式会社ワンテーブル1社のみで、同社と随意契約を締結。
しかし、ワンテーブル社長による行政や議会を軽視する発言が問題となり、契約を解除、事業は変更を余儀なくされました。
2. 調査の焦点
契約解除に至る経緯や、事業計画の妥当性
ワンテーブルと町との関係性、癒着の有無
企業版ふるさと納税の使途の適切性
仕様書作成に関わる疑惑
納車された救急車の詳細調査
3. 調査で明らかになったこと
3.1 事業計画書の不備
本事業に関する事業計画書が存在しなかったことが判明。
町議会や町民への説明も、口頭説明のみで、資料は作成されていませんでした。
企業版ふるさと納税の巨額寄付の背景や、救急車開発の必要性についても、明確な説明はされていませんでした。
3.2 ワンテーブルへの便宜供与
公募開始前に特定企業(ワンテーブル)にのみ情報提供を行っていた事実が確認されました。
公募期間も異様に短く、ワンテーブルが有利になるよう意図的に設定された疑いがあります。
仕様書作成に関しても、ワンテーブルからの情報提供や指示を受け、同社の意向を反映した内容になっていることが判明しました。
町職員が、私的なFacebookメッセンジャーでワンテーブルと頻繁に連絡を取り合い、未決裁資料を送信するなど、不適切な行為も確認されました。
3.3 企業版ふるさと納税の疑惑
3億5,700万円の匿名企業からの寄付が、ワンテーブルからの働きかけによるものである疑いが濃厚です。
町は、匿名企業が町地域再生計画に賛同したためではないかと説明していますが、具体的な事業内容は記載されていません。
町が、企業版ふるさと納税制度を企業の節税対策に利用された可能性も否定できません。
3.4 仕様書作成の杜撰さ
仕様書は、トヨタ・日産を上回る高規格救急車を目指したにも関わらず、専門知識を持たない町職員がわずか3か月で作成。
作成にあたっては、ワンテーブルからの指示や情報提供を受けていたことが判明しました。
参考資料は、ワンテーブル提供のもの以外すべて廃棄されており、作成根拠は不明です。
伊達地方消防組合との連携が謳われていましたが、具体的な技術的協議は一切行われていませんでした。
3.5 納車された救急車の疑惑
納車された12台の救急車のうち、9台は本事業契約以前に製造が開始されていました。
これらの車両は、本事業の仕様書作成以前から存在した仕様書に基づいて製造された可能性が高く、町の説明と矛盾しています。
事前発注に関与したワンテーブル、製造したベルリング社は、共に事実を認めています。
中古車2台の導入についても、町に有利な条件とする根拠が不明です。
3.6 検査の不備
本来実施すべき中間検査が省略されました。
完了検査においても、仕様書と異なる車両が見落とされるなど、ずさんな体制だったことが明らかになりました。
4. 結論
特別委員会は、本事業が公平公正に行われたと結論づけることは到底できないと判断しました。
特に、特定企業への便宜供与や、情報隠蔽ともとれる公文書廃棄など、違法行為の疑いがある行為も認められます。
これらの行為は、行政に対する町民の信頼を大きく損ねるものであり、町は責任を明確化し、再発防止策を講じる必要があります。
5. 提言
報告書では、以下の提言を行っています。
業者選定にあたっては、公平公正な手続きを徹底すること。
事業計画書を必ず作成し、議会や町民への説明責任を果たすこと。
公文書管理を徹底し、情報公開制度の趣旨に沿った運用を行うこと。
特定企業との癒着を防ぐため、利害関係者との接触に関するルールを明確化すること。
企業版ふるさと納税制度の適切な運用を徹底すること。
職員の倫理観向上に向けた研修を行うこと。
今回の事態を教訓として、町政の信頼回復に全力で取り組むこと。
この報告書は、地方自治体における透明性、説明責任、公正さの重要性を改めて浮き彫りにするものです。国見町議会は、今回の事態を真摯に受け止め、町民の信頼回復に全力を挙げる必要があります。
注記: この解説は、あくまで報告書の概要をまとめたものです。詳細な内容については、報告書本文をご参照ください。
参考動画
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?