世界の珊瑚スタートアップをご紹介:Coral Vita
Re:Coral(リコーラル)です。
世界中で珊瑚についての研究や保護の取り組みがなされていますが、
その多くは非営利団体(営利をあげることを目的としてはならない)として行われています。
そんななか、営利団体として珊瑚の保護を目指す企業があります。
「Coral Vita(コーラル・ヴィタ)」という、カリブ海・バハマを拠点とするスタートアップです。
環境保護活動で金儲けしようとするのはいかがなものか?と思う人も、もしかしたらいるかもしれません。
一方で、非営利団体の場合、
寄付金や助成金という限られた資金源でできる活動内容も限られてくるのもまた事実です。
さらに、珊瑚は今後50年で世界の90%が死滅してしまうかもしれない、
という時間とも闘わなければならない問題です。
今回は珊瑚スタートアップ・Coral Vitaについてご紹介します。
Coral Vitaとは:主な活動内容、拠点など
Coral Vita*1は、カリブ海・バハマを拠点とするスタートアップ企業で、
2017年に設立されました。
彼らのミッションは、
テクノロジーを用いて珊瑚を復活させ、社会とも共存できる仕組みをつくること
だと言えるでしょう。
Coral Vitaの成り立ちについては、彼らの公式サイトにも掲載されている
こちらのインタビュー動画も合わせてご覧ください。
Coral Vitaの主な活動あるいは彼らがもつ技術には、以下の3つがあります。
①Microfragmentation(マイクロフラグメンテーション、マイクロ断片化)
珊瑚の断片を細かく砕くことで、成長が加速することがわかっています。
この技術はもともと、Coral Vitaのアドバイザーの一人である
デビッド・ボーン博士が2006年に偶然開発したものだそうです*2。
ボーン博士の技術では、通常の50倍の速さで珊瑚を生育させることができます。
同技術によって、さまざまな水育環境に設定して珊瑚の様子を見たり
トライアンドエラーのサイクルを短縮することが可能になります。
先ほど「珊瑚の問題は時間との闘いでもある」と述べたように、
この技術は、どの種類の珊瑚がどういった環境に適しているのかを確かめるためにも、とても重要といえるでしょう。
②Assisted Evolution:珊瑚の環境適用
珊瑚を取り巻く環境は、
地球温暖化による海水温の上昇や私たち人間活動による水質の酸性化などによって、珊瑚たちにとってより過酷なものになりつつあります。
そのため、Coral Vitaでは珊瑚がそのような過酷な環境でも生育できるよう、
珊瑚たちを訓練し環境に慣らす取り組みを行なっています。
③Land-based Farming:陸上養殖
通常、珊瑚の養殖は海の中で行うことが多いのですが、
そうすると、養殖値の海環境が固定され、すなわち珊瑚の種類や生育条件が固定されてしまいます。
そのため、小規模の珊瑚の養殖や回復プロジェクトには適していますが、
大規模プロジェクトには向いているとは言えません。
そこでCoral Vitaでは、海ではなく陸に養殖場をつくり、
海での養殖における制約を取り除きました。
さらに、Coral Vitaは、珊瑚の陸上養殖を商業向けに初めて提供しはじめました。
陸上養殖については、こちらの珊瑚保護団体(Reef Resilience Network)のサイトでも詳しく説明があります*3。
チームメンバー
Coral Vitaは、SamとGatorという二人の共同創業者によって設立されました。
卓越した30歳以下の若手社会起業家として、2018年にForbes 30 Under 30に選出されています。
Forbes 30 Under 30 (2018)*4より。左がGator、右がSam。
Sam Teicher(サム・テイチャー)
Coral Vitaの共同創業者であり、Chief Reef Officer。
CXOには、CEOやCTOなどいろんな種類がありますが、
Chief Reef Officerとは面白いですね!
Samは米国・ワシントンDC出身で、13歳でダイバーの資格を取得したようです。
イエール大学の修士課程のときに共同創業者のGatorと出会い、Coral Vitaを創業しました。
なお、Samは学士課程終了後(学士もイエール大学)、修士に進む前に
ELI AfricaというNPO団体のプロジェクトのCOO (Chief Operation Officer) として珊瑚保全プロジェクトのオペレーションをリードしたり、
ノーベル賞受賞者をはじめとする各方面の専門家が、環境問題や貧困などの
世界的な問題について考えるNobel Prize Summitにてゲストスピーカーとして講演をしたり、と幅広く活動しています。
Gator Halpern(ゲイター・ハルパーン)
同じくCoral Vitaの共同創業者であり、President。
Gatorはリベラルアーツ教育でも有名なポモナ大学の学士課程終了後、
イエール大学の修士課程に入り、Samと出会います。
Coral Vitaを始める前には、環境と社会との調和をテーマとした様々なプロジェクトに参加しており、
例えばブラジル貧民街での都市開発やアフリカ農村部での農地利用、ペルーにおける魚の養殖と森林破壊調査などのプロジェクト経験があるようです。
Coral Vitaも、現在死滅していく状況にある珊瑚とエコツーリズムによる
環境と社会の調和を目指しており、Gatorのライフワークと言えます。
Coral Vitaのビジネスモデル、パートナーシップ
Coral Vitaは2017年設立といえど、まだ初期段階(スタートアップのSeedフェーズ)*5にあるため、売り上げはそこまで立っていないはずです。
彼らは慈善事業を行なっているわけではないため、収益を上げていかねばなりません。
彼らが目指すビジネスモデルとしては、
お客さんをもっと集めたい観光業(ホテル・リゾートやエコツーリズム運営会社など)がCoral Vitaにお金を払い、
その土地に適した珊瑚を生育することによって海洋生態系を回復させ
集客に貢献する、WIN-WINの関係を目指すことだと言えます。
この記事の執筆時点では、一般企業とのパートナーシップについての情報は見つかりませんでしたが、
バハマ政府と環境保全の取り組みで協働しているようです*6。
今後は政府だけでなく、一般企業とのパートナーシップの実績を積み上げていけるかがポイントになりそうです。
なお、Coral Vitaは2021年1月に、環境系のベンチャーキャピタルを中心に
約2億円($2 million)の資金調達を行いました*7。
ベンチャーキャピタルからの出資は、ビジネスとして成り立つことが大前提にあります。
この資金調達のニュースは、彼らのやっていることはビジネスとして将来性がある、と共感・応援する人が少なくともいる、ということを指しています。
おわりに
今回ご紹介したCoral Vitaのような、珊瑚保護の取り組みを加速するような組織が今後も増えていくことに期待です!このnoteでも紹介していきます。
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このnoteでは、珊瑚に関する研究の紹介や他団体の取り組み内容など、
珊瑚に関連する情報を発信していきます。
また、Re:Coralの活動に少しでも多くの方が関わっていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。興味のある方は是非ご連絡ください!
連絡先:recoral2020@gmail.com
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参考文献
*1:Coral Vitaホームページ
*2:How Stuff Works Wiki「科学者たちは、瀕死のサンゴ礁を救うために急成長するサンゴ礁の方法を開発しています」(2019年1月8日)
*3:Reef Resilience Networkウェブサイト記事「陸上保育園」
*4:Forbes 30 Under 30, 2018
*5:Crunchbase “Coral Vita”(2021年7月14日アクセス)
*6:The Bahamas Weekly “Minister Pintard says Gov’t is committed to growing the ‘Blue Economy’” (2021年3月12日)
*7:TechCrunch “Coral Vita cultivates $2M seed to take its reef restoration mission global” (2021年1月5日)
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