紅い糸 ep2
~1年前~
希は普段通り大学へ向かっていた。
幸せな家庭に育った友人とは何故か話が合わない。
最近の流行りの音楽、SNS、そんなものを追う心の余裕が無かったのだ。
友人「希はさ〜、なんか不思議ちゃんだよね!?」
希「…え?」
友人「ううん!なんでも!ねね!一コマ飛んでスタバ行かない!?」
希は自分の家庭環境を今まで誰にも話して来なかった。 父は会社をリストラされ、借金地獄で薬漬け。母はその反動からかギャンブル依存症。オマケに2人揃ってアル中になり喧嘩三昧。
こんな話を友人に話す機会がいつあるのだろうか? 話した所できっと困らせる。時期に距離を置かれる。
別にそれでもいいが自分の悲惨さに酔って話してるみたいで嫌なのだ。
希「ねえ、李衣菜。 私ちょっと寄り道してくわ。」
李衣菜「え?…ちょっと!」
足早に公園に向かう。
商店街を抜け、住宅街を辿るといつもの公園がある。そこにはホームレスや、サボってる営業マン。平日の昼間なのに中学生がいたりと混沌としていて好きだった。
公園のベンチに座り、自分の人生を振り返る。
…思えば、一度だってろくな選択をして来なかった。 母や父のせいで私は荒んでしまっている。
空き缶が潰れる音が公園中の視線を集めた。
眉間に皺を寄せ、ガニ股で歩く父の姿がそこにはあった。
父「…あ?おぉ、希か。おめぇ大学行かんと何しとるだ?」
希「別に。」
誰のお金で大学まで行かせてもらってるんだ!という言葉を言わせる前に私は立ち上がり商店街へと向かった。
心の中でどの口が言ってるんだと先行してやった。 バカ親。
夕方家に帰ると血まみれの母と、白い錠剤がばらまかれた机に肘を立て、野球を見ている父の姿があった。