紅い糸 ep10
~3日前~
希は結局父の死体を山に埋める為車を走らせていたが助手席には母がいた。母を1人にするのが怖かったのだ。
希「ママ。悪いなんて思わないでね。ママは悪くないから。」
母「希…。私は貴方にも酷いことを言ったわ。貴方は自由に生きればいいのに。」
母「全部私が悪いの。私が。」
希「うん。知ってる。でも自分では悪いと思わないで。」
希「だけど、私はママも大嫌い。」
死体が車内で転がる音が鳴り響く。その度に母は自分のした事を後悔する。
希は昔の事を思い出す。
小さい頃、父と母に大事な話があると言われた。父は真剣な顔でこう告げた。
父「希。お前に話すのはまだ早いと思っていたがな。これは親の責任だ。落ち着いて聞いてくれ。」
母は泣いている。
父「ママはな、俺以外にも大事な人が居たんだ。そして、希以外にも大事な息子がいる。」
希「…大事…な?」
父「ああ。パパも驚いた。だから最初はママとさようならをしようと思ったんだ。」
意味をよく理解できない希は、口を半開きにしていた。
父「だがな、ママの大事な息子くんはな、パパが居ないんだ。だから、息子君からママを取り上げたら可哀想だろう?だけど、希からママを取り上げるのも可哀想だと思った。」
希「うん。」
父「だからママはパパと約束したんだ。2つの命を大事にしろ。絶対に守り抜いて。幸せにしなさいって。」
母「希ごめんね。」
パパ「だから、希。ママを許しやってくれ。」
父と母は頭を下げた。2人が自分に謝ることが嫌だった私は2人を抱きしめた。
希「私、ママの大事な息子さんも大好きだよ?パパもママも大好き。」
その言葉に救われたように母はまた泣く。
父は偉いぞ。とただそう言って頭を撫でてくれた。
しかしやはり1度ねじれた糸は解くのが難しい。
二人の仲は徐々に悪くなり、父はタイミング悪くリストラ。なぜこんな女を養わなければならないのかと、母の勤労を強要。二人の子供を育てる為、過労した母は壊れてしまった。 父からの暴力、娘に対する嫌悪感。そして何も知らない啓斗に対し、演技をし、私よりも愛情を注ぐ。…ここだけは守るというように。
まだ見た事ない啓斗くん。君のことが本当に大嫌いだよ。殺しちゃいたいくらいにね。