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まもなく定年→嘱託に。複業は自分らしく生きるためのもの(セキさん・60代男性)

私は半年後の2025年春に定年予定の還暦会社員です。

職歴は、全て正規雇用で副業は未経験です。このままだと、来年度から現職位を失って嘱託の身分となり、業績・職能・バックボーンとはほとんど無縁な業務に専念させられます。

正直受け入れられません。衣食住の充足とは別次元です。
自分が自分でない想いを抱えつつ、身体ばかり健康な人生100年時代を過ごす日々に耐えられる自信がありません。

心身の健康維持の上でも、複業という言葉に一筋の光を見る想いです。


動薬業界で勤続21年

獣医師でありながらヒトの領域に興味と使命感を持つ私は、大学卒業後10年間、毒性試験のための動物実験施設に勤務しました。
学業で得た知識を活かして業務に従事し、また研究者としての基礎訓練を受け、凡人なので厳しく叱られながらも論文を二本書きました。
研究スキルは、後に私の最大の武器になります。

諸事情により、有毒な物質を見出す仕事から畜産物の安定供給を支える仕事へと軸を移し、今日に至ります。

最初に勤めた動物用医薬品メーカーで11年、主にホルモン製剤の学術営業に注力し、繁殖分野で学位も取得しました。その後、他の競合品メーカーに転職し、10年になります。

最強を自負する仕事は、牛の繁殖管理の一環である、ホルモン剤を用いた発情周期の同調プログラムであり、現場の事情に応じて投薬プログラムをカスタマイズできます。10年で、自社ホルモン剤の売上は約2倍になりました。

ぬるま湯に居続ける理由

さて、この業界の風土なのでしょうが、概して動薬メーカー各社内は、良くも悪くも平和です。営業ノルマの重圧も製品開発の進捗への追及も皆無。それでも会社は黒字続きなので危機意識が不要なのです。

利潤追求の掛け声は時々上がるものの、そのためにどうするか?という声を上げる人材や、実行を働きかける人材はほとんどおらず、特別頑張らなくても良いという空気感が場を支配します。

人事評価も体系化されておらず、残念ながら上層部に対するイエスマンが出世するような環境です。

中には、営業担当時は売上最下位で部下の離職も最多だった者が、管理部門の本部長として特例で定年延長という事態すらあります。繰り返しますが、それでも会社は黒字です。

こんな妙な業界に、なぜ20年以上居続けるのか?力不足だからです

可能ならば、アカデミアの専門家としてキャリアを完結させたいと思いました。しかし、自己実現の希望を満たすことと、家族を養う生活費を稼ぐことを両立できる職位に就く実力がありませんでした。ここにいるしかないと悟りました。

ぬるま湯の中で自分の存在価値を高める覚悟

それでも、一介のサラリーマンにとどまらず、専門家ならではの成果を上げて自身の存在意義を認めてもらう決意を固めました。

つまり、自分の専門性の高さを、売上の高さで証明してみせると宣言し、覚悟を表明しました。

私の主戦場にして生命線である家畜臨床繁殖学という分野は、理論の複雑さ故に多くの獣医師が薬剤選択に難儀し、概して軽んじられるメーカーの学術担当者といえども、顧客から頼られます。売る側が専門性を磨いておけば、現場のニーズに沿う情報を顧客に提示して販促に直結させることも可能です。

具体的には、科学論文を的確に読み解いた資料(単なる文献紹介でない)の配布や、セミナーや面談で生産性向上に資する情報提供を行ってきました。また、新たな研究課題を創出して実行しました。勿論、顧客の課題解決に加えて自社製品の販売促進にも繋がる「育薬」です。

手順として、私が実験デザインを立案し、それに興味を持った顧客(大概は獣医師)が実施して成績を集め、私が大まかに取りまとめ、両者でディスカッション。最後は顧客を筆頭に、私が連絡著者として投稿します。初の論文執筆を達成した顧客は、益々上顧客となります。
まだ少ない実績ですが、継続中の活動です。

数々の業績と売上から、私は会社から必要な人材だと認められたと思います。

しかし、私の定年に伴い、会社として必要とされていた私の仕事も間もなく無くなります。後任が不在ではありますが、私の年齢の現実を前に打つ手なしと判断したためです。

会社としては私が創出して積み上げてきた10年間の増収を失うかもしれませんが、当初から黒字ではあったので、増収分を失っても全社員の給与を少々下げれば補えてしまいます。

やはり社内は平和で、私だけが高齢を理由に戦力外通告を受けて給与半減とされ、社内で積み上げた専門キャリアの道も閉ざされ、その後のチャンスも無いと一人で騒いでいる現況です。

覚悟を持って行動していたら社会から必要な人材になれていた

今実感できることは、会社に必要な人材になるための努力の結果、社会から必要な人材となれたことです。

ありたがいことに社内でもまだ色々求められていますが、仕組みを変えなければ単なる妄想を超えられず、意味を成しえません。

一方で社外からは、いくつかの講演・教育依頼、大学非常勤講師、企業の顧問などの話をいただいており、なるべく多くのオファーを受けたいと思っています。

現職の会社には、嘱託として幾ばくかの収入を得る目的で、会社が存続する限り残ります。ただ自分が自分らしく生きるために、専門性を活かせるステージで複業をしていきたいと思います。

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