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【元YouTubeコンサルが解説】伸ばすための第一歩目「チャンネル設計」
皆様、お疲れ様です。
YouTubeをこれから始めたいと思っている方、チャンネルを立ち上げたけど思うように結果が出ない方に向けて、「YouTube運営」について何回かに分けて解説記事を書いていきます。この記事を通して、皆さんのチャンネル運営の少しでもお役に立てたら幸いです(個人の方でも、法人の方でも見ていって下さい。役立つヒントがあるかと思います)。
「はじめてのnote」になりますので、拙い部分はご愛嬌ということでお許しください(笑)。
「ところで、お前は誰なんだ?」と言われるかと思いますので、簡単に自己紹介を。
6年前から、YouTubeやSNSで流す動画のプロデューサー/ディレクターのお仕事をしています。個人ではなく、メディア企業の会社員としてお給料を頂いてます。
分かりやすく言うと「メディアの中の人」です。
動画制作をしながら、そこで得た知識をコンサルとして、新聞や雑誌、Webにあまり強くないオールドメディアの方々が運営するYouTubeの戦略を考え、運営のお手伝いをしてきました。
メディア企業に勤めていることもあり、YouTubeを運営するGoogleの中の人に何度かヒアリングする機会もありましたので、大きく間違ったことをお伝えすることはないかと思います。
第1回目は「チャンネル設計」
ここからが本題です。タイトルにも「チャンネル設計」と書きましたが、もうすでに「チャンネル開設済み」の方もぜひ読んで欲しいです。
なぜか?
チャンネル開設をする時に間違った考え方で、チャンネルを設計している可能性があるからです。そう、ここでお伝えしたいのは、YouTube上でどのボタンを押せばチャンネルが立ち上がるのかではなく、考え方(=勝ち方)になります。
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いくつかの企業さんにコンサルさせて頂きましたが、ほぼ100%できていないのが、この「チャンネル設計」です。YouTubeコンサル時代、メディア企業の方を相手にしてきましたが、どの企業さんも「企画力=動画の内容」は面白かったり、尖ったものを持っているのに、この「チャンネル設計」が雑過ぎて全然、再生回数が回ってないといったことがよくありました。
「チャンネル設計」で考えること
設計、設計…と連呼していますが、具体的に考えることは下記の9つです。
1.目的の明確化
2.自分に何が「できる」のかを知る
3.「できる」ことの隣にあるものを知る
4.目的達成に必要な視聴者像を考える
5.企画が刺さりそうな視聴者像を考える
6.コンテンツ戦略の策定
7.動画制作方法・運用を考える
8.チャンネル名の決定
9.アイコン画像とカバー写真のビジュアル
これが全部できていれば、言うことなしです。好きなYouTubeか、Netflixでアニメかドラマを見ていて大丈夫です(私は最近、アニメ『チ。 ―地球の運動について― 』にハマりました)。
できてない方は席に着いて下さい。
授業を始めます。
1.目的の明確化
まず最初に、あなたが「何を目的にYouTubeチャンネルを立ち上げるのか?」「集めた視聴者で何をしたいのか?」を明確化しましょう。大きく3つに分かれます。
・収益化/お金を稼ぎたい
(個人YouTuberの多くはこれです)
・認知獲得/沢山の人に知ってもらう
(企業YouTubeの多くはこれです)
・コミュニティ形成/熱量の高いファンを作る
(認知獲得の延長にあるもので、アーティストや研究会などコミュニティ組織を持っている人のロイヤリティ醸成手段。マネタイズはグッズ販売や会費など、YouTubeの外で設計している場合が多い)
多くの場合、「収益化」か「認知獲得」のどちらかが目的になると思います。これをしっかり意識して、最後まで設計しましょう。
2.自分に何が「できる」のかを知る
YouTubeに動画を投稿しようと思う人は、同時に「自分は何が得意なのか?」を分かっているかと思います。料理・釣り・メイク・漫才・経済解説・投資術など、何かしら「誰かが知りたいと思う話を自分が持っている」と思ったタイミングでYouTubeに動画を公開する、という選択をしているはずです。
ただ、多くの方がこれに引っ張られ過ぎてしまいます。
例を使って、解説していきます。
<例>
チャンネル運営:コスメ術が得意な人
やりたい企画:最新アイテムなどでコスメのHow toを教える
おそらく、この辺の企画を軸にアイテムを変えて動画を作っていきたくなるはずです。ただ、動画を作り始める前にYouTubeで「メイク術」と検索してみて下さい。同じ企画の動画が山の様にあります。
まず、自分が作りたい企画がどれくらいの量が世の中にあるのか?を確認しましょう。同じ企画でも有名人がやれば再生回数は回るでしょうし、後発でも勝てるかもしれませんが、多くの場合が「無名の個人」からの出発です(企業チャンネルの場合も大体同じだと思って頂いて大丈夫です)。
3.「できる」ことの隣にあるものを知る
2.の例え話は、動画業界でよく言われる「企画がかぶってる・企画が弱い」という状態です。では、どうするか?
「メイクが得意」なのは、ぜひ活かしましょう。それが強みです。ただ、メイクや料理といった日常生活で行われることは、どんな人でも一定のスキルを持っていて、かつ、一流のプロと呼ばれる人々がウヨウヨと泳いでいる広大な海(=ジャンル)です。
ここで戦うには、鮫か鯨(メイク自体のプロか、メイク動画のプロ)になるしかありません。凄まじい鍛錬とエネルギーと時間と汗と涙と運と…とにかく色々必要です。
それだけを仕事にするならば、その覚悟を持って挑めばいいのですが、普段は営業の仕事をしていて、その合間で副業的に動画を作ってアップしたい、といった方にはそれだけの何かを注ぐ余力はないかと思います。
ここまでで、すでに2つの課題が浮上しています。
・企画が弱い
・全労力をYoutubeに注げない
つまり、その海に住もうとしてはいけないのです。とてつもないサバイバルが待っています。そんな時は「コスメ術」企画の横の海を見てみましょう。
・コスメアイテムの「整理術」
→整理・収納ジャンルの海
・メイクアイテムの「デコレーション術&便利グッズ紹介」
→DIY・ライフハック系ジャンルの海
・おすすめのコスメ系YouTuberを「紹介」&自分で再現する
(海外のコスメ系チャンネルをメインにネタを引っ張るなど工夫)
→キュレーションジャンルの海
・「外出先」でのメイク直しに最適な場所の紹介(トイレやメイクルーム)
→お出かけジャンルの海
こんな感じで、違う海の中で「コスメ」に特化したチャンネルになれば、戦闘力がかなり上がった状態になります。ちなみに、「コスメ術」企画をストレートにやりたい時は、動画を5本作るうちの1本くらいのペースで作ってみてもいいかと思います。サブ企画としてやりたいことを走らせるのは、モチベーション維持に繋がります。この段階では、どんな企画で動かしていくか、までは決めません。あくまでも発散的に「できる」ことを羅列しておくだけでOKです。
最難関の4〜6
ここまでは企画の話がメインで楽しかったですが、さて、ここから3つが難所です。
4.目的達成に必要な視聴者像を考える
5.企画が刺さりそうな視聴者像を考える
6.コンテンツ戦略の策定
ざっくり言うと、4〜6は、
・「4.目的達成に必要な視聴者像を考える」は、どんな人たちに動画を見てもらえれば、目的(1の話)が達成できるか?
・「5.企画が刺さりそうな視聴者像を考える」は、考えた企画(2〜3の話)がどんな人たちに刺さりそうか?
・「6.コンテンツ戦略の策定」は5で考えた人たちに刺さる企画はどれか? それを継続して実行できそうか?
を行ったり・来たりしながら考えていく工程です。
この3つが最初からピッタリ一致することは少ないです。
4と5の「視聴者像」を図で考えると、5の視聴者の中に4の視聴者がいる感じです。まず、4から考え、5は「そこから少し広げた属性の視聴者はどんな人々か?」を考えます。
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ビジネス講座じみてきましたが、1つづつの考えることはシンプルです。
<例>
チャンネル運営者:無名のバンドマン
目的:自分たちの楽曲を知って欲しい(認知獲得)
上の例の様に、「自分たちの楽曲を知ってもらいたいバンドマン」がYouTubeを立ち上げたとしましょう。ただ楽曲をアップしてもなかなか再生数は回りません。一方で、趣味でフットサルをやっていて、休みの日はよくフットサルに参加していて、まぁまぁ上手いからといって、フットサル関係の企画ばかり動画にしていたとします。
視聴者は当然、「フットサルが好きな人たち」が集まってきます。歌に全く興味がない可能性さえあります。どんなに動画をアップし続けても、この人は「バンドマン」ではなく、「フットサル愛好家」としか見てもらえません。
つまり、無名の歌手の場合、「4.目的達成に必要な視聴者像」は、「アングラ系J-ROCKのトレンドを追いかけている人々」。
そこから少し広げて「5.企画が刺さりそうな視聴者像」は、「邦楽インディーズのトレンドに興味がある人々」。
これでだいぶ絞れました。あとは、この「無名のバンドマン」がどんなジャンルの音楽をしているかで、もう少し属性(年齢・性別・職業など)が絞れるかと思いますが、あとは「6.コンテンツ戦略の策定」と合わせて微調整していきます。
それを踏まえて「6.コンテンツ戦略の策定」です。
ここでようやく企画を固めます。
「コンテンツ戦略」は、上の「コスメの例」の時の様に、ストレートにバンドの演奏風景だけ動画化しても埋もれるだけです。「できることの隣」を企画にしましょう。「使用してる楽器の細かいレビュー」や「対バン相手との対談」などできることは結構多いと思います。
ココでのおすすめは、「YouTubeチャンネルをやっているバンドと対バンを組んで、ライブ風景・ライブ後の打ち上げ・対談」の動画化です。
所謂、「コラボ戦略」を使いつつ、インディーズ界隈での他バンドとのネットワークを形成しながら、業界の裏側に流れる空気感を伝えるメイキングを見せていくと、結構刺さるのではと思ったりします。(バンドYouTubeのコンサルは残念ながら経験がないですが。。。)
上に書いた「戦略」は、YouTubeを軸としたバンド自体の活動の軸にもなっていくと思います。「コンテンツ戦略」とは、1本づつの「企画」ではなく、それを複数本束ねた時に、YouTubeの外まで考えながら自分たちの目的を加速させるように設計していくといいです。
ココまでくるとかなり「やるべき企画」と「ターゲットとなる視聴者」が鮮明になってきたかと思いますので、「この視聴者ならハマる!」と確信が持てるまでグルグルと4〜6を何周もします。
ここは練度というか、マーケティング的な感も必要なので、最初苦労するかもしれませんが、一旦考え切ってみてください。最初に考えたものが仮に外れだったとしても、1度決めたら終わり、ではなく、運営しながら微調整をかけたり、大きくピボットさせたりしますので、走りながら常に考えていく部分でもあります。
そして、意外と忘れがちなのですが、「横長」「縦型」など画角違いの動画を作るか・作らないかなど、動画と一口に言ってもどの「形」で公開するのかも同時に決めておくとよいです。
チャンネル立ち上げ期のおすすめは、
・本気の「横長」を1本作る
・そこから切り出した予告編的なショート用「縦型」を2本作る
これが一番コスパがいいです。
YouTubeで動画を作ると思いついた時、年齢が上に行くほど「横長」を思い浮かべますが、チャンネルを立ち上げた時は「縦型」を作って、ショートを使いまくることに専念した方が伸びがいいです。(再生回数の細かい伸ばし方は、また別の記事でお伝えします)。
「楽曲を知って欲しい」ならサビだけ切り取ってショートにする。「人柄を知って欲しい」なら、ライブが始まる直前のメンバー間のやり取りだけ切り取ってショートにする。など、キャッチーな部分だけ切り取ってみましょう。
ココからコンサル時代だと、クライアント向けに「登録者の想定成長曲線」(どれくらいの期間で、どこまで登録者を増やせそうか)をグラフで出したりしていたのですが、クラアントワークすぎるので今回はスルーします。
7.動画制作方法・運用を考える
次に、「7.動画制作方法・運用を考える」ですが、考えることは、
・どの機材・場所で撮影して、
・どんなツールで編集して、
・どんなサムネを作って、
・視聴者からのコメントにどう反応するか。
・そして、それをどの頻度で行うか?
ココはシンプルに「資金力とスキル」の話です。個人でやっている場合、最初から気合を入れて良いカメラや編集用のPCを買うと扱いきれなかったり、YouTube投稿自体をやめてしまう可能性もあるので、まずは、お持ちのスマホで出来るところまで頑張る、で良いかと思います。最近のiPhoneは本当にすごい性能なので、「いいカメラより、いいスマホを買った方がいい」まであります。
企業のチャンネルの場合、資金力はあるかと思いますので、「制作会社に頼む」も1つの手ですが、「制作会社のディレクターを、ディレクションする動画に詳しい人」を必ず社内に見つけておきましょう。足元を見られて謎に高すぎる見積書が出てきたり、その企業の文脈を全く理解していない・意図と違う動画が出来上がってしまったりするので、制作会社選びは慎重に。
8.チャンネル名の決定
あと2つで完成です。「8.チャンネル名の決定」からです。
「ネーミング」のお話なので、ココまで来るとまた楽しくなってきます。
「8.チャンネル名の決定」からいきましょう。
楽しいと言いつつ、YouTube側のエコシステムに乗るためにはかなり重要な部分です。上記で「海」=「ジャンル」の話をしましたが、それぞれのチャンネルには「どのジャンルに属するのか?」がYouTubeのシステム側が定義しています。
最初に投稿する3本くらいの動画とチャンネルタグ(※まだ解説してないですが、話すと長いので次回の記事で)、そして、その動画を見た視聴者がどんなジャンルを普段見ているのかを元に、YouTube側が「このチャンネルは〇〇ジャンルの人」と定義します。
「コスメ系チャンネル」にしたいのに、「ビジネス系」など関係ないジャンルに放り込まれると、そこから一定期間はビジネスジャンルを好む視聴者に向かって動画がお勧めされてしまう、という負のスパイラルに突入します。
これを避けるためにも、
「私は、コスメ系の動画をアップしている人ですよ」
「僕は、音楽系の動画をアップしているバンドマンですよ」
など、システム側に間違った認識をさせないためにも狙っていきたいジャンルや、そのジャンル内で使われているキーワードなどでチャンネル名を付けるといいかと思います。
またシステム以外で、視聴者(=人間)に対してもチャンネル名でアピールすることは重要です。駆け出しのチャンネルの場合、「検索」や「関連動画」からの流入(視聴者がどうやってその動画に辿り着いたか、を解説する際によく出てくる用語です)を狙いに行くのですが、そこでもどのジャンルの人かを明示しておくと、自分の動画をクリックしてもらえる確率が上がります。そこだけ意識すれば、あとはご自身の気に入った名前を付けて大丈夫です。
<例>
チャンネル運営者:コスメ術が得意な人
企画:コスメアイテムの「整理術」
チャンネル名:「コスメ系DIYヲタ 〇〇チャンネル」
※〇〇の部分は自分の名前など好きなもの
※頭にジャンル名を持ってくるのが重要
9.アイコン画像とカバー写真のビジュアル
最後、「9.アイコン画像とカバー写真のビジュアル」ですが、ココでは「7.動画制作方法・運用を考える」のパートで考えた、「撮影方法」を使って撮った素材を元に作っていくでもいいですし、何か良さそうなアイコン画像をフォトショップで作ったり、どこかから買ってくるなど、やり方は自由で大丈夫です。
意識することは、「チャンネル名や企画に合っているか?」です。あとは、「アイコン画像は目を引くものになっているか?」を気にしてみましょう。「ただただ派手であれ」という意味ではなく、「そのジャンルの文脈に合っているか?」です。
企業系チャンネルの成功例としてよく名前があがる「北欧、暮らしの道具店」チャンネルは、ほっこりする暮らし系のジャンルなので、派手な赤や黄色はは使わず、ターゲットとなる視聴者(#丁寧な暮らし などを好む視聴者)が好みそうなテイストでまとめています。要は、見てもらいたい視聴者に気に入られそうか、です。
ココまで読んでみて、「ん?」と思われた方もいるはずです。「ほぼ100%ができていないのに、なぜ成功しているチャンネルがあるのだろう?」と。ご指摘の通りですが、理由は下記の感じかなと思います。
・先行者としてかなり前からチャンネルを初めていた(海の状況が現在と違っていた)
・ゲーム実況など、自分以外で人気の要素を動画内に取り込めている
・TikTokなど他の動画プラットフォームで人気者で、そこからファンを連れて来ている
・たまたま「やりたい企画」と「ターゲット」がピッタリ重なっていた
…etc
おそらくこの辺がそのチャンネルたちの成功要因かと思います。
ということで、今日の授業はココまでです。
最後まで読んでくださった方々、お疲れ様でした。
役に立ったと思われた方は、ぜひ「いいね」を押していってもらえたら嬉しいです。
※↑の呼びかけは、YouTubeの動画でも同じです。これは「Call to Action」と呼ばれるもので、視聴者さんに「とって欲しい行動」を呼びかけるものです。HIKAKINさんは「チャンネル登録の歌」まで作っているくらいなので、重要です。恥ずかしがらずに「いいね、してね!」「チャンネル登録お願いします!」とぜひ言ってみてください。
また、「うちのチャンネルを分析して欲しい」などのご要望があれば、記事のコメント欄にチャンネルURLを貼って頂ければ、表から見たざっくり分析になりますが、無償で分析&改善点をコメント欄に返信させて頂きます。お気軽にどうぞ。
かなり長文になりましたが、まだまだコンサルとしては序盤も序盤です。
「マストで入れるべきツール」、「SEO対策」「チャンネル分析の方法」、「複数企画の走らせ方」、「効果的なサムネ」、「他チャンネルの関連動画になる方法」、「コスパがいい撮影・編集の機材」…などなどお伝えしたいことはたくさんありますので、チャンネル運営に行き詰まった時にでも、また覗きに来てください。効果のある授業をご用意して、お待ちしております。
全てのYouTubeチャンネルに、幸あれ。