フツーの人ってなんだ?
フツーの人、健全な人、というと、
先月クリニックを卒業された方が話されていたエピソードを思い出す。
動悸、発汗、不安緊張などの耐え難い自律神経症状で、
あちこちの病院で検査しても原因不明で、心療内科を紹介されたのです。
2年くらい通院してかなり改善し、通院を終えられました。
現在通院されている後輩に、なにか伝えることはありますか?
と、いつもの卒業インタビューを行います。
「打ち明けたのがよかった
打ち明ける勇気が回復の秘訣?
「とにかく、苦しくてどうにかしたかったんです。
「うーん、なんかわからんけど、
寄り添って聴いてもらえたのがよかった?
やはり、「なんかわからなくなる」、
というのが、回復者に共通して見られる現象ですね。
この不思議な現象は、思考場療法を提唱した、ロジャー・キャラハンが、
「頂点問題」と名付けた現象と同じではないかと、僕は思っています。
自分の問題が解決してくると、問題として認知できなくなるから、せっかく治療したのに、自分の治療によって良くなったと認めてもらえなくなるという問題だそうです。かわいそうなキャラハンです(笑)
さらにしつこくインタビューを続けると、
「心療内科に通う人って、特別だと思ってたけど、
自分がなってみて、意外に多いのかもしれないな、と思ったんです。
当事者の体験談とかに、すごく興味が出てきました。
もしかして、着飾って、見栄はって、テンション高いのがフツーで、
そんな健全な人たちに囲まれて、
自分だけ、こんなこころ弱いのは、恥ずかしいことなんじゃないか、
と一人ぼっちになってしまって。
話を聴いてもらえて、そんな自分もフツーかなと、
落ち着きと安心感を取り戻されていったということでしょうか。
僕はこころの相談に乗るという職業がら、
日常会話する人のほとんどが、弱さを打ち明けるものなので、
フツーの人ってのがわからなくなっていますが(笑)
一般社会人のフツーの人の感覚って、そんな感じなのかなぁ、
だとしたら、世の中、孤独で戦々恐々とした恐ろしい世界だろう。
そりゃあ、常に交感神経が高ぶって、バランスを崩すだろうなぁ。
と、ちょっと驚いたのでした。