あなたのルールブックに書き込みができる人はあなただけ
その人が、身体を壊してまでも守り抜きたかった、
ルールブックとは、どんなものだろう。
そこに思いを馳せながら、話しを聴く実験。
昨日のRこころの研究室を覗いてみましょう。
長かったうつ病がやっと治って、
薬も終了して、無事に復職もされ、
順調に回復している人の物語。
再発防止のメンタルチェックに、月に一度、
わざわざ来てくださっている。
ところが、よくあるのだが、
回復後、名誉挽回とばかりに、
いい人ぶりを発揮して、
お仕事に、家事に、学校、地域の役員に、、、
休みなく役割を抱え込んでおられるのだ。
毎月、毎月、注意しても、エスカレートしており、
このままではぶり返して、強制終了になってしまうのも時間の問題。
今日も休みなのに、職員の病欠が出たから、なんとか出勤できないかと、朝から職場から電話がかかって来て、どうしようか、と悩んでいると言う。
いつもなら、きちんと断りましょう!
大病の後の病み上がりなのだから、無理してはダメ!
と、ドクターストップをかけるところ。
でも、たいていは、虚しい忠告になることも、
経験上、知っている。
そして、昨日の診察室では、
その人の、身体を壊して、健康を害するまでの、
僕からしたら、有り得ない程の人の良さに、
その人のルールブックを、想像することにした。
困っている人に頼まれたら、絶対断らない。
どんな犠牲を払っても、困っている人を放って置いてはいけない。
そんなページが、見えたような気がする。
その章には、その人の想いと歴史が詰まっている気がした。
すると、僕は、いつとも違う声かけをしている。
それで、あなたの周りの人は、喜んでくれましたか?
みんなは、笑顔になりましたか?
よかったですね、頼りにされるのは、嬉しいですね。
困っている人の役に立つのは、何より大事なんですね。
患者さんの顔が、パッと明るくなる。
僕も嬉しくなる。
そして、満足そうな患者さんは、続けて、
でも、、イライラすることが増えてきたんですよね、、
と、自分のルールを尊重された世界の中で、
やっと安心して自分の体験を眺め始める。
ご自身も、どこかで、
痛いほどよくわかっておられるのだ。
相手も大事だけど、自分も同じく大事にされるべき存在なのだ。
ルールブックの続きに、いつか、
そんなストーリーが書き込まれていくかもしれないし、
別の展開を書き込んで行かれるかも知れない。
マイルールブックに、ペンを入れれるのは、自分だけだ。
宇宙で唯一、たった一人、書き込みできる権限を持っている。
健康あってこそ、とか、人は人、とか、
周囲からの正論のアドバイスで、
ルールブックを改定できていれば、
心療内科に来るまでに、改定がなされているだろうから、
病院に来ることにはならなかっただろう。
心療内科に来るということは、
何らかの形でルールブックにロックがかかっているのだ。
僕にできることは、個人的にジャッジして、何か言いたくなる衝動を手放して、本人の想い、自己選択している世界に寄り添うことで、
自らの意志で、ルールブックのロックを外し、
自ら書き換えをするか、しないかの選択ができるように、
安全な場を提供することだけなのだろう。
と、改めて思ったのでした。