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歩道橋について
通勤に、自転車をやめて、
歩いていくようになった。
自転車も好きだけど、歩くのも好き。
むかしは速い乗り物が好きだったけど、
だんだんと、ゆっくりなものが
好きになるのかもしれない。
考えてみれば、それほど慌てて、
大急ぎでしないといけないことなど、
思ったよりも、多くはないものだったのだ。
そういえば、
例えば、電車で出かける時も、
特に急ぎでなければ、
各駅電車でよいか、と思うことが、
増えたかもしれない。
ここちよい揺れで、景色も見ながら、
読めてなかった本やスマホを見たり、
冬は暖かく、夏は涼しい、快適な席。
そんな時間が長い方が、
ぜいたくに思えるからだ。
さて、歩くのは、楽しい。
なんとなく川べりを歩いてみたり、
入ったことのない細い裏路地を
歩いてみたり、する。
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ゆっくり歩いてみると、
思いもよらなかったものを、
見かけることもある。
この前なんて、
雨の日の朝に、歩いていると、
道路にザリガニが出てきて、
ワーイ!
と喜んでいたのだ。
いや、これ、ホント!
きっと、その光景の不思議さを説明しても、
誰も信じてもらえないだろうと思って、
ちゃんと証拠を残しておいた。
ほら。
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で、歩道橋の話し。
ゆっくり歩いていると、
風景も見れるし、足腰の感覚もわかる。
マインドフルネスを、
こころがけている、
とかじゃなくて、
ほとんど、雑念を浮かべている。
あれ?
なぜわざわざ歩道橋を登ってるんだろう、
と、ふと物思いにふけってしまったのだ。
毎日の通勤ルートでは、
国道を渡らないといけない。
そこには2つの選択肢があって、
1.歩道橋を渡らずに信号を待つ
2.歩道橋を渡る
信号を渡るのが、まぁ、
標準的だろう。
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しかし、歩道橋には、
なにか不思議な魅力が、
あるのだ。
発達障害の人が持っているような、
豊かな感受性やこだわり、まではない。
歩道橋マニア、というわけでもなく、
すごくテンションが上がるわけではない。
「ワクワク!」というより、
かすかに、「ワクッ…?」、
「ウキッ…!」とする程度。
でも、たしかにその感覚があって、
行く道と、帰り道と、
2回その選択をしているわけだが、
たいてい、歩道橋を選んでいる
自分に、気がついてしまった。
歩道橋は、少し回り道だし、
階段を上り下りするので、
何千ジュールかのエネルギー量が、
多く必要になる。
効率から言えば、
時間的にも、運動量的にも、
歩道橋は、イマイチなルートなのだ。
信号を待って渡る方がよいに決まっている。
それなのに、なぜ、
歩道橋ルートを選ぶのか。
この歩道橋は、昔からあった。
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子どものころは、
ここはショッピングセンターがあって、
町で一番のトレンディースポットだった。
歩道橋から、
スーパーの2階に繋がるという、
近未来の構造になっていた。
そのわくわく感を、無意識にも、
覚えているのだろうか。
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今では、ほとんど誰も通っていない、
この歩道橋。
最近、大掛かりな改修工事で
リニューアルされたから、
それだけ予算を投入するべきスポットだと、
大和高田市も、認めたのだろう。
たまに、すれ違う人がいると、
それだけで、嬉しくなったりしてる。
まぁ、理由なんて、
なんだっていい。
歩道橋がほんの少し、
好きだということだ。
誰も知らない、
自分にとって、ここちのよい選択。
それは、どっちでもいい程度の、
1ミリくらいの差かもしれない。
ほんのちょっぴりうれしい方、
ほんのちょっと、好きな自分、
微妙に、少し楽な方、
少しだけマシな方を。
ささやかだけれど、
毎瞬毎瞬、選択している。
その時の気分で、変わる程度のものだ。
でも、そんな、一ミリが、
なにより大事なのかもしれない。
オマケ:昔の天神橋筋商店街。
「奈良の心斎橋」と言われて賑わっていたのだとか
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※ 写真は大和高田市のホームページより