鑑賞ということ ~ NHK、Eテレ「自分を見つめて、17音。〜俳句甲子園2023〜」、小説『春や春』『南風(みなみ)吹く』に思う
やっと秋らしいと言える気候になりましたね。「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉がありますが、ぎりぎりセーフという感じでした。
さて、今日はNHK、Eテレの「自分を見つめて、17音。〜俳句甲子園2023〜」をとても面白く拝見しました。
いくつかの出場校に取材しているのですが、その中でも、自分の納得のいく句を出しても対戦では勝てない、と悩む文芸部のリーダーの姿が印象に残りました。
彼は一度俳句から離れようとしますが、下級生の求めに応じる形で戻り、俳句甲子園に再び挑戦し、その過程で、鑑賞に活路を見出します。
俳句甲子園は、句の対戦でもありますが、ディベートの対戦でもあります。彼は、対戦相手の句であろうとも、いい句ならばそのいい点に着目して褒め、的確な鑑賞をすることを心がけました。
最終的には決勝リーグで敗退するのですが、完全燃焼した彼に悔いはなかったでしょう。
RCは、俳句甲子園のディベートに以前から違和感を感じていたので、この彼の姿勢と、それを正当に評価した審査員に、とても好感をもち、感謝の念すら持ちました。
俳句は間口が広いようで狭い趣味と言えると思うのですが、よい出会いがないとなかなかその道に進むことはありません。それが高校生のときに俳句甲子園にチャレンジすることなら、またとない出会いと言えるでしょう。
でも本来、俳句、そして句会は楽しむもの。若いときは競うことが楽しいという面もありますが、句作そのものを楽しみ、鑑賞を楽しみ、人とのかかわりを楽しむためには、もっと違う場面があっていいのになぁと思うのです。
この俳句甲子園をテーマにした小説があります。森谷明子著『春や春』『南風(みなみ)吹く』(光文社)です。
綿密な取材と俳句への理解に支えられたこの小説は、俳句甲子園に挑戦する高校生たちの姿と人間模様を生き生きと描いています。人が成長するということ、表現するということ、友とは何か、家族とは何か……そんなテーマが全編に駆け巡っています。
RCとして、とても好感を持ったのが、俳句甲子園というイベントに対して、第三者的な目線できちんとアプローチしていることです。今回のEテレの番組でも焦点が当てられた、鑑賞というものが、誠実な見方でストーリーに組み込まれています。
この小説、俳句や俳句甲子園に興味のある方には、ぜひおススメです。
もしRCが高校生のときに俳句甲子園があったなら。そんな想像をしてしまいます。きっと他のことに夢中になっていたでしょうけれど、小説みたいに誘われたら、どうなったでしょうね。
思いは巡ります。
明日も素敵な季語との出会いがありますように。
RC
森谷明子『春や春』(光文社。初版2015年。文庫版2017年)
森谷明子『南風(みなみ)吹く』(光文社。初版2017年。文庫版2020年)
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