美容師って個性溢れる仕事ですね
概要
2024年に発生した美容業（美容室）の倒産は8月までに139件に達し、2023年の同期間に比べて約1.5倍で年間最多の更新を推移。
背景には、
①新規開店の増加による店舗間競争の激化
②美容資材の価格高騰
③スタイリストの獲得難といったコスト増
があり、そうした中、特定メニューの専門性をアピールする「特化型」美容室が売り上げを拡大させている。
記事にある、以下の３店舗店について、それぞれマーケティング戦略を考察してく。
１「fufu（フフ）」ヘアカラー専門店
２「sins（シンズ）」髪質改善酸性ストレート
３「Wille（ヴィレ）」アニメキャラの髪色再現
市場の動向
美容師業界の市場規模は、近年横ばい傾向であるが、倒産件数は前述の通り前年度を超え過去最高値を推移しており、店舗間競争の激化や資材価格の高騰、スタイリストの獲得難等のコスト増が原因によるものである。
市場でのニーズは変わらず存在であるものの、店舗としては飽和状態であり、他社と異なる特別な価値が求められる。
これまでの美容室のイメージ
美容室（ヘアサロン）は、「来る前より可愛くなりたい・かっこよくなりたい」をお客様に実現させるため、髪を切る、スタイルチェンジ、髪質改善等、髪に関する様々な悩みを解決しているが、コンセプトがどれも似たようなところが多く、美容室激戦区の原宿では同じようなおしゃれ系のお店ばかりが並ぶ。
ヘアカラー専門店「fufu（フフ）」の戦略
ターゲット
定期的なケアが必要な白髪染めを得意としており、主なターゲット層は40〜50代以上の女性がメイン
コンセプト
「キレイな髪で、毎日をにこやかに。」を企業理念に、綺麗な髪色を保つために月に1度の染め直しが必要となる40、50代の女性向けの支援
市場への戦略
月に1度の染め直しには時間とお金がかかるが、低価格で高品質なヘアカラー特化型の店舗を実現。予約なしで60分で完了するというスピードさも売り。
また、週休2日・残業なし・選べる働き方を実現し、市場課題のスタイリストが働きやすい場を提供。
仕事に活かす視点
①年齢層のターゲットを絞り、市場で浮いていた時間とコストの悩みを高品質を維持しつつ解決
ヘアカット不要という大胆さ
②結婚や育児を理由に、資格を持ってるのに働けない休眠美容師の拠り所に
アシスタントの受け皿としても寄与
学び
市場ニーズへのアプローチは何もブルーオーシャンを狙う必要はなく、市場全体が感じること(高い、時間がかかる)に、特定の分野に特化して勝負できることの強み。
業務特化型・働き方の多様化により、美容師＝激務という概念を覆す。
髪質改善酸性ストレート「sins（シンズ）」の戦略
ターゲット
人口が多く美容室の利用率が最も高くなる50代女性がメイン
コンセプト
「どんな時代でも生き抜ける術を身につけられるように」髪質改善に特化した縮毛矯正を提供。
市場への戦略
通常、アルカリ性の薬剤を使用する縮毛矯正は、傷んだ髪には施術が難しく、幅広い層に対応可能な酸性の薬剤を使用し、先行利益を独占。
また、既存の酸性ストレートの薬剤は扱いが難しいが、扱いやすい薬剤を開発し、従業員の教育コストを削減
仕事に活かす利点
①縮毛矯正というどのお店にもある商品の中で、いつの時代にも美しい髪を維持できるように、髪質改善ができる縮毛矯正を開発(分野としてはレッドオーシャンであり、商品としてはブルーオーシャン)
②低価格ではないが、圧倒的な高品質で価値提供
③酸性ストレート＝高いスキルを打破し、美容師の教育コストの削減にも寄与
学び
縮毛矯正はアルカリ性が一般的であるものの、髪質改善を基準に酸性ストレートに特化することで、50代をターゲットとしているものの老若男女限らず幅広い層への悩みを解消している。
高いスキルを要する酸性ストレートに対し、扱いやすい商品を開発するという逆転の発想で、店舗拡大の促進と美容師の教育期間・コストの削減までも実現した。
アニメキャラの髪色再現「Wille（ヴィレ）」の戦略
ターゲット
アニメ市場への需要増を背景に、特定のキャラへなりきりたい、アニメの世界を現実で体験したい層
コンセプト
「推し活特化」型により、アニメキャラの髪色を忠実に再現した「2.5次元カラー」を提供
市場への戦略
アニメキャラの高い再現性を提供するだけでなく、店内をポスターやフィギュアを用いてアニメの世界観にする他、不定期に作品とのコラボ化をすることで、アニメファンを中心に新規顧客の獲得に成功
仕事に活かす利点
①ヘアサロンと違うジャンルのアニメ産業から着想を得て市場参入を実現
②理想と現実の乖離(このキャラになりたい)を改善し、顧客満足の実現
③好みのキャラとのコラボにより世界観の共有
学び
それぞれの分野ではレッドオーシャンになってる、ヘアサロン業界とアニメ産業において、異なるニーズを掛け合わせることで、顧客満足を実現している。
いつものヘアスタイル<アニメに価値をもつ顧客を呼び込み、新規顧客の獲得に成功している。
全体を通して
3社ともそれぞれ異なった価値提供をしているが、特化型の利点として、差別化を図りやすいだけでなく、
①効率化やコスト削減の実現
②高単価でも来てくれる揺るぎない価値の提供
③他の市場やトレンドでも戦える柔軟性
が挙げられる。
それはもちろん、独自性をもった高い技術があってこそであるが、3社とも特定のニーズにターゲットを絞ったことで高い技術の価値提供が話題となり、市場全体への話題性、広い世代への価値提供が実現できたものと、推察される？