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2分間のズレの話

- 彼女だけの世界

 あたしは、2分先の世界にいる。

 皆にとっての19時は、あたしにとっては19時2分。皆にとってはまだ開いていないお店があたしには開いているように見える。

 気づいたのは5才の頃。遊園地が開園しているのに、お母さんもお父さんも入ろうとしなかった。あたしが騒いだら、2人とも「まだ開いてないから入れないよ。」と呆れながら叱った。

 どういうことか分からなかった。お母さんに時間を聞いたら、あたしが見えている時間より2分早かった。その後いっぱい写真を撮ってもらったけど、写っている時計も2分早かった。

 子どもながらに考えて、あたしだけ2分先の未来にいるんだって思った。皆と話は噛み合わないし、皆より早く食べはじめちゃったり、皆より早く帰っちゃったりするから、いじめられたりもした。

 でも中学生ぐらいになるとだんだん皆と合わせられるようになってきた。あたしの目にはあたしは皆より1歩遅れているように見えるけど、それでも皆からは早めに動いているように見えるみたい。

 この話は、誰にも言ってない。お母さんにもお父さんにも話してない。写真に撮っても写らないし、何より証明する方法がなかったしね。

 おかげで待ち合わせの時間とか、色々時間が関わることはすっごくめんどくさい。いちいち2分ずらしておかないと噛み合わないからね。

 それに今でもたまに話が噛み合わなかったりして、皆あたしのことを不思議ちゃん扱いしたりする。やめてほしいんだけどね。

 ただ、2つとっても良いことがあるの。

 1つは、誰かのピンチを救えること。例えばぶつかった人に話しかければ、実際の世界ではぶつからないようになる。すごく小さいことだけと、あたしは未来を変えることが出来るの。

 そしてもう1つは、誰よりも早く朝日が見れること。あたしはあの瞬間がすっごく好きなの。シンとした空気の中、誰にも気を使わないで綺麗な景色が見れるから。

 この瞬間だけは、本当に世界にはあたししかいないみたいで、すごく気が楽。少し寂しいけどね。

 そしてあたしは今日も皆より少し早い、朝を迎える。紅茶とスコーンをお供に。

 ※この物語はフィクションです。

 以上、らずちょこでした。
 ここまで読んでくださった皆様に感謝を。
 ではまた次回。

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