1つの瓶と店員の話【前編】
そのお店は、幸せを保存できる瓶を売っていました。
これだけは失いたくない、と思える幸せをその瓶に入れておけば、一生無くならないというのです。
皆、その瓶を幸せの瓶と呼びました。
1人しかいないニコニコした店員が、それぞれにあった瓶を薦めてくれるのです。
ある日、大金持ちのおじさんが店にやって来ました。
「ここが幸せの瓶を売っている店かね?」
店員がニコニコしながら答えました。
「ええ、あなたにあったものをご用意しますよ。」
すると、おじさんはにんまりと笑い、大量の札束をドサドサと店員の目の前に置きました。
「この店で1番いいのを頼むよ。言い値で買うよ。」
それを見た店員はニコニコしたまま、店の奥に行きました。戻ってきたときに手にしていたのは1円玉すら入らなさそうな小さな瓶でした。
おじさんは怒鳴りました。
「こんな小さな瓶が1番いいものな訳がないだろう!ふざけているのか?」
大声で怒鳴られたのに店員は顔を変えず、ニコニコしたまま言いました。
「まぁまぁ、そう言わず。何でしたら数ヶ月ほどお試し期間ということで。その間のお代はこれだけで結構です。」
店員はドサドサ置かれた札束の中から1枚だけ抜き取りました。
「1万円で極上の幸せが貯めておけるのですよ。」
おじさんは少し不満げでしたが、瓶を受け取り、残りの札束を回収して店を去りました。
続く
以上、らずちょこでした。
※この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださった皆様に感謝を。
ではまた次回。