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【短編】 いいやつだと思われて

 「一目惚れしました!」
 昔から知らない人に話しかけられることは多かった。

 観光地に行けば必ず海外から来た人に道を聞かれる。ただ買い物してるだけでお年寄りにたわいない話を振られる。宗教勧誘なんかしょっちゅう話しかけに来るし、挙句の果てには同じ人間から同じ勧誘を受けた。

 だから、知らない人から話しかけられるのは慣れているつもりだった。
でもこれは想定してなかった。

 「え?」
 「一目惚れしました、付き合ってください!」

 いわゆるナンパなんだろうけど、こんな真剣なもん?
 
 「いや…ちょっと急すぎてなんというか…。」
 動揺してつい濁った言い方をしてしまった。
 
 自分でも分かっているんだけど、こういう時にきっぱりと断れないのどうにかするべきだ。目の前の人が詐欺師という可能性もあるのに。

 「ごめんなさい、ちょっとびっくりして…。」
 やんわりと断ろうとして次の言葉を探したけど、出てこない。どう断るか考えていたら、相手が先に口を開いた。

 「やっぱり!絶対優しい人だと思ったんです!」
 それっていいことなのか?この人からどう見えているんだ?

 「だから惹かれたんだと思います!」
 そんなキラキラした顔で言わないで。いいやつの殻を破れない人間には、一番効く口説き文句じゃないか。

 「あ、ありがとうございます…。」

 
以上、らずちょこでした。
※この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださった皆様に感謝を。
ではまた次回。

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