ヒトゴト 12
「というわけだからさー。頼むねー、オーミさん。」
「…はい。」
仕様変更の会議が緊急で開かれた。話を聞くとあのシステムだけでは全然満足できなくなったらしい。後から不満が出るわ出るわ。
「オーミさん優秀だから大丈夫だもんね?」
復活した前波さんからの、悪意なき刃が痛い。たぶん褒めてくれるんだろうけど、痛い。
「…なんとかします。」
「いやー、ありがとう!さすがだわ。」
「いえいえ…。」
前波さんのツーブロックの髪がないとこをボーッと見つめながら返事をする。他部署の人々と話す時は、通話ツールのカメラをつけないといけない。顔を見て話したいとかなんとか言われたけど、止めといた方がいいと思うんだよなぁ。
「オーミさんのシステム、便利でいつも助かってるよ!」
とりあえずそう言っとけって目が言ってるの、画面越しでも分かるよ。
それにこんなダメ出しの後にそんな当たり障りのない言葉、説得力なんてないよ。
「いえ、よりよいものに出来るように、精進します。」
欲しい言葉を、自分で言う。それが出来るようになったのは、本当によかったと思う。
「プロだねぇ。」
ホントにね。
続く
以上、らずちょこでした。
※この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださった皆様に感謝を。
ではまた次回。