1人の吸血鬼と娘の話【日常編】
真っ暗な森があった。そこには何故か日中でも日が射さなかった。
その吸血鬼の館はそんな森の奥にあった。
夜中、その吸血鬼、アルベルトは目を覚ました。酷く飢えていた。
アルベルトは城の地下にある、牢屋に向かった。
そこにいたのは美しい娘だった。夜中なのに寝つけないのか、ベッドの上に座っていた。
アルベルトがニタッと笑いながら、牢屋の扉を開けて、彼女に叫んだ。
「さあ、血を捧げろ…!!」
「あぁ、はい。」
彼女は慣れた手つきで左腕の袖を捲った。アルベルトはハァ、とため息をついた。
「お前さ、もうちょっと怖がったりとかしてくれていいんじゃないの?」
娘、エリーゼはけろっとしながら、
「だってもう5ヶ月ぐらい同じことされてるんだもん。慣れちゃったよ。」
アルベルトはまた深いため息をつきながら、彼女の左腕に注射した。赤い血が少しずつ溜まっていった。
「んー、でもこの感覚はやっぱり慣れないね。」
「吸血鬼には慣れてるくせにな。」
採血が終わるとアルベルトが少しだけ血を飲んだ。エリーゼの体調は特に問題なさそうだ。
「食事にするか。貧血になるだろ。」
「お、今日こそハンバーグにしてくれる?」
「馬鹿言え、今日は鰆だ。」
「せめてお肉にしてよ…。」
がっかりしながらも、アルベルト特製の料理を楽しみにパタパタあとをエリーゼがついていった。
この2人はこの奇妙な関係が心地よいようだった。
続く
※この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださった皆様に感謝を。
ではまた次回。