1人の花嫁の決断の話 番外編
「…だ、そうですよ。花婿さん。」
その受付係の近くに座っていた男が、頭を抱えた。よく見れば、その男は花婿衣装を身に付けていた。
「そういうと思ってたけど…。」
「賭けは僕の勝ちですね。」
「はぁ…。」
「あなたも人が悪い、まさか彼女が生き返る方を選択すると思うだなんて。」
男は髪をがしがしとかきながら、立ち上がった。
「あいつがそうしないのは分かってたけど、どうしても生きててほしくてさ。」
たとえ会えなくても、俺はあいつに生きててほしかったんだ。
「…なんともまぁ、不幸で幸せな夫婦だ。」
その受付係はパチン、と指をならした。彼女が入っていった扉が消えた。
「ではお約束通り、あなたにはこちら、地獄に進んでいただきましょうか。」
「…嫁を信じられなかったもんな、落ちて当然だ。」
花婿姿の男はためらいながらも、地獄へ続く道へ進んでいった。
「…これだから、この仕事はやめられない。」
いつものニコニコ笑顔が、少しだけ邪悪なものに見えた。
以上、らずちょこでした。
※この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださった皆様に感謝を。
ではまた次回。
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