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ヒトゴト 16

 「…辞めちゃうのか。」

 なんというか、やるせない気分だ。エンジニアを辞めてしまうことを勿体なくも思いつつ、うらやましくもある。

 皆そうだと思うけど、永遠に終わらない道をずっと歩いてるんだ。ずっとずーっと歩いていかないといけない。でもそれが楽しくて、それが苦しくてまるで憑りつかれたように進んでいく。

 だから、辞めていける人たちを見ると、一緒に歩いていく仲間がいなくなった寂しさと、この道楽しいのに、と思う勿体なさと、目が覚めてその道以外を進んでいけるのが、うらやましい。

 「オーミ、飯食うけど通話するか?」

 先輩が気を遣ってオンラインランチに誘ってきてくれた。ココ先輩のそういうところが憎い。

 「お願いします、ピザ頼みます。」

 といったら通話のURLが送られてきた。

 「お前、ピザは贅沢だろ。」

 「いいじゃないですか、今日ぐらい。」

 「…俺も出前とるか。」

 「サラダチキン専門店美味しそうですよ。」

 「どういう意味だよ。」

 「あ、ティガさんも来ますか?」

 「声掛けたわ、時間あったら…あ、来たわ。」

 「ティガさんどうもー。」

 「はいどうも。オーミさんもココさんも何食べんの?」

 「私ピザで、ココ先輩サラダチキンだそうです。」

 「分かりづらい嘘言うな。」

 人が辞めるというのに、こんなにほのぼのしてるんだ。

 だって、我々は、まだまだ歩き続けないといけないから。


 終わり

 以上、らずちょこでした。

 ※この物語はフィクションです。

 ここまで読んでくださった皆様に感謝を。

 ではまた次回。



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