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msy03
1人の赤い髪の人魚の話
大好きだった黒髪を赤に染めた。理由はしごく単純で、男にフラれたから。
黒髪が好きだった理由も、その男が褒めてくれたからだった。
美容院を出たらもう夜が来ていた。ふーっとため息をつきながら歩き出すと声をかけられた。
何だか自暴自棄になっちゃって、そのままその男の家に着いてった。
「…みたいだ。」
男が何か言ったけど、聞き取れなかった。男の方を向いたら、そいつは、
「綺麗だ。」
とだけ言った。何だか素直にありがとうが言えなくて、
「聞き飽きてる。」
なんて嘘をついた。いや、これでいいんだ。どうせこの真っ赤な髪も虚勢なんだし。
でも男の着てるブルーのシャツが近づいたとき、全て見透かされた上で受け止められた気がした。
このままこの海を泳いでもいいかもしれない。
今だけ人魚になってあげる、真っ赤な髪を真っ青な世界に漂わせてあげる。
大好きな黒髪は、隠したままで。
以上、らずちょこでした。
※この物語はフィクションです。
ここまで読んでくださった皆様に感謝を。
ではまた次回。