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掘り起こしたい1つのものの話

 「海に潜るみたいだ。」

 夕焼けに染まる街を見て、マサキが呟いた。俺は、マサキが描いたイラストをまとめながら聞いた。

 「何がだ?」

 マサキが返した。

 「絵の練習だよ、海に潜って真珠探してるみたいだ。」

 「どういう意味だよ。」

 マサキがこちらに来て、自分のイラストを見ながらため息をついた。

 「俺はさ、絵が上手くなりたいわけじゃないんだ。」

 「もう俺からすりゃ上手いけどな。」 

 「あざす、でも、そうじゃなくてな。自分の絵を見つけたいんだ。」

 「これじゃダメなのか?」

 「それは上手い人の描き方を真似ただけだから。」

 「…だから海に潜るみたい、か。」

 マサキが疲れた顔で笑った。

 「そういうこと。」

 

 俺はそう言えるマサキが羨ましかった。そんな苦しい想いをしてまで手にいれたいものなんてなかった。

 ずっと何かを探しているが、どれも熱中する前に飽きてしまう。いや、諦めてしまうと言った方がいいのか。

 「俺も潜りてぇなぁ。」

 「何を見つけたいんだ?」

 俺は苦笑いしながら言った。

 「潜ってでも手にいれたいもの。」

 マサキも苦笑いした。こちらは苦しいぞ、とだけいってまたパソコンに向き合った。

以上、らずちょこでした。

※この物語はフィクションです。

ここまで読んでくださった皆様に感謝を。

ではまた次回。

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