【短編】 横断歩道

 小さな子がちゃんと止まっているのを見たから、自分もつられて赤信号で止まった。

 別に渡ってしまってもよさそうだけど、子どもの前ではダメだと思った。

 親も見てないのにえらいなぁ、なんて考えながら青に変わるのを待つ。

 そういえば、いつからこういう赤信号を渡るようになったんだろう?学校でも両親からも赤信号では渡ってはいけない、って教わってきたのに。

 こういう信号は渡っても大丈夫、なんて誰に教わったんだろう?親も渡ってたような気がするし、友人だったような気もする。

 子どもに教えてることと、大人が実際にすることってめちゃくちゃ矛盾してる。子どもには禁止するくせに、大人は影でめちゃくちゃしてたりする。

 そういうのに気づいてしまったのはいつからだろう?慣れてしまったのはいつだろう?

 小さい子が大人しく待っている隣を、全然知らないおっさんが堂々と渡っていった。

 「あのおじちゃん、信号無視した。」

 小さい子が不機嫌な声で言った。あぁ、そうか。ああいう見知らぬ大人から教わってきたんだった。


 以上、らずちょこでした。

 ※この物語はフィクションです。

 ここまで読んでくださった皆様に感謝を。

 ではまた次回。

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