
ビジネスで正解のないものに対して答えを見つける方法
ビジネスに必要なのは「正解」より「仮説思考」
ビジネスの現場では、スピードが求められる場面が多く、「すぐに正解を出すこと」が重視されます。しかし、変化の激しい令和において、本当に重要なのは"正しさ"よりも"仮説を生み出す力"ではないでしょうか。
たとえば、次のような状況を考えてみてください。
売上が急落した。原因は?
新商品の売上が期待を下回っている。なぜ?
チームの生産性が低下している。解決策は?
これらの問題に対して「データを分析して答えを導き出す」ことは重要ですが、そもそもどんな仮説を立てるかが解決のカギとなります。最初の仮説が見当違いなら、ゴールまでの道のりは遠くなります。
このような場面で効果を発揮するのが、「アブダクション(仮説推論)」という考え方です。
哲学者チャールズ・サンダース・パースが提唱したアブダクション。
明日から使えるビジネスでの具体的な活用法を紹介します。
チャールズ・サンダース・パースのアブダクションとは?
演繹・帰納との違い
アブダクションは論理的推論の一種ですが、一般的によく知られている「演繹」や「帰納」とは異なる特徴を持っています。
・演繹(Deduction)
「すべての鳥は飛べる。だからスズメも飛べる」 (既知の法則 → 確実な結論)
・帰納(Induction)
「スズメも、ツバメも飛ぶ。だから鳥は飛べる」 (複数の事例 → 一般法則)
・アブダクション(Abduction)
「この動物は羽を持っている。たぶん鳥だろう」 (限られた情報 → 最もありそうな仮説)
演繹は100%確実な結論を導く
帰納は確率的に正しい可能性が高い
アブダクションは"仮説"を生み出す思考法
つまり、アブダクションは「わからないこと」に対して、直感的に最も妥当な仮説を生み出す手法なのです。
ビジネスにおけるアブダクションの活用
ビジネスの現場では「正解のない問い」に直面することが多く、アブダクションの考え方が非常に有効です。
問題解決におけるアブダクション
例:「売上が下がった原因を特定したい」
演繹的アプローチ:「過去のデータから売上低下のパターンを特定する」
帰納的アプローチ:「他社の事例を参考にする」
アブダクション的アプローチ:「顧客の動向を観察し、"競合の新商品に流れているのでは?"と仮説を立てる」
アブダクションを活用することで、直感的に"ありそうな仮説"を生み出し、検証の方向性を定められるのです。
「余白の思考」の重要性
アブダクションの思考法を磨くために重要なのが、思考に余白を持たせることです。
「余白の思考」とは?
白黒をはっきりさせず、曖昧さを受け入れながら考える
即断を避け、複数の仮説を並行して検討する
問いの仮説と検証を繰り返しながら、新たな視点を見出す
ビジネスにおいても、性急な結論を避け「余白の思考」を実践することで、より質の高い仮説を導き出せるようになります。
アブダクションを鍛える方法
仮説を豊富に立てる習慣をつける
単一の答えにこだわらず、「他にどんな可能性があるか」を探求する
「問い」を工夫する
×「なぜ売上が落ちたのか?」(原因追求型)
○「売上を伸ばすには、どんな要因が考えられるか?」(未来志向型)
異分野の知識を取り入れる
他業界や異分野のアイデアから学び、発想の幅を広げる
まとめ:アブダクションで思考の幅を広げよう
ビジネスでは「確実な答え」より「柔軟な仮説思考」が求められる
アブダクションを活用すれば、より直感的で柔軟な発想が可能になる
「余白の思考」を意識し、問いの仮説と検証を繰り返す力を育むことが重要
アブダクションを意識的に取り入れることで、問題解決力と創造力は飛躍的に向上します。
疑問に思ったら、演繹法で一般論などから推論を重ね、帰納法により、データから原理や法則を推測し、さらにアブダクションで仮説を立て、正解を見つけていこう。