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#これが照寿司のやり方 !? 敢えて今、お届けする照寿司とはなんぞや?

地元での認知度はほぼゼロ。
しかし今、世界で一番有名になった鮨屋、もとい寿司屋とは?

グイッと突き出した大きな掌からハミ出さんばかりに載る見事なまでに大振りなネタのお寿司と、鋭い眼光の寿司職人。この表現だけでも『ああ、照寿司ね』と判る人も結構いらっしゃるのではないでしょうか。北九州は戸畑にある寿司店、照寿司。Mastercard がニューヨークで展開するプライスレス・インターナショナル・カリナリー・コレクティブにも選出され、ニューヨーク・タイムズには全面広告、戸畑の店を2ヶ月強閉めてスタッフを全員引き連れニューヨークへ。そこでは戸畑の店を内装含め、完全再現。期間中の予約はほぼ満席。ブレイクするキッカケとなったInstagramのフォロワーは13万人超、Youtubeでの関連動画の再生総数は1億回に達するまさに今、世界で一番有名な寿司屋。三代目店主の渡邉貴義サンはネット時代の寵児と言えるでしょう。

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照寿司三代目 渡邉貴義サンのFacebookから
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凄いですね。ニューヨークのグルマンは勿論、渡邉サンにとっては文字通りPricelessな体験でしょう。お金で買えるものはMastercardでって事で、このPop-upイベント、Mastercardで支払えば割引あるのかしら(笑)

で、筆者は奇遇にも戸畑出身 or 現在在住の友人・知人 それも全員鮨Loverでは無い、一般ピーポーが数名いるのですが、その全員が照寿司についてまーったく認知なし。一様に口を揃えて『戸畑にそんなお店あったの!?』という始末。一名このお店のすぐそば (というか、至近距離) に実家がある知人からは『そういえば、近くに仕出し専門の寿司屋あったけど、あのお店なの?』と、ご近所さんからも全く認知されていませんでした。いや、マジで。

えーっ!北九州市の観光大使ですよ??北九州と言えば、スターフライヤーに資さんうどん、天寿しにキタキュウマン、そして照寿司じゃないんですか?

以上の通り、地元での認知度は極めて低い、ほぼゼロと言っても過言では無いのですが、世界で一番有名な寿司屋、寿司職人である事は今や誰にも否定できない事実。これより上はリビングデっ…じゃなかった(滝汗) リビングレジェンドとなった、すきやばし次郎の小野二郎翁しか居ないでしょう。

ドいな…もとい、地方の寿司屋がこれだけ世界から注目を集めるようになった、それはただラッキーだったのでは無く、それなりの努力や試行錯誤があったからだと思うのですね。

その辺の話はもう山程、密着取材系Web記事や書籍があるので、どうぞそちらをお読みください。HereNow KITAKYUSHU とか、ホリエモンこと堀江貴文サンの著書『堀江貴文 VS. 鮨職人』、そして大将の渡邉サン自らが記した著書
自己流は武器だ。- 私は、なぜ世界レベルの寿司屋になれたのか -』
がオススメです。

とは言うものの、やっぱり飲食店は最後は味。食べてみて美味しくなければ価値は大幅に下がります。正直、筆者も最初はパフォーマンス先行のイメージで、些か懐疑的だったのですが、やはり百聞は一見に如かずという事で、実際に戸畑くんだりまで行ってみました。なんとリピートまでしちゃいました。行ってみて世間の評判通りの事もあれば、大きな誤解もある事もよぉおおく分かりました。一方で課題もあると思います。

『時代の寵児』って言葉がピッタリくるものの、この言葉にはなんとなく一過性の物を感じてしまうので、筆者としては今絶頂の極みにいるだろう渡邉サンが単に今、世界で一番有名な寿司職人である事に甘んじる事なく、『世界最高の寿司職人』を極めて欲しいなぁと思うわけです。照寿司についてはもはや語り尽くされた感は十二分にあるのですが #酢飯が主食 な筆者としては照寿司が絶頂期であるからこそ、一方的な愛 (愛とはヨイショだけでは無い!) を存分にぶつけ、なおかつその魅力を皆様に存分にお届けしたい次第です。なお、本記事は全て2021年1月までの筆者の体験を基に掲載しております

#俺はどうせヒール  みたいなハッシュタグつけて渡邉サンが投稿しているのを見ると悲しくなるんだもの。

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とにかく最寄駅のJR戸畑駅からタクシー使って最短でも8分はかかるんだから、こりゃ遠い。歩いて行こうなんて思っちゃダメ。30分はかかります。夏だったら熱射病で死んじゃいます。普通、こんな所にある店に県外、まして海外から客なんて来るわけないっしょ!つまり、その劣悪なロケーションを跳ね返せる何かが無ければ、ここまでブレイクする訳は無い。いや、実際訪問した時はいつも満席でした。

では、その『何か』とはなにか。

およそ寿司屋らしく無い門構え。この門構え、ニューヨークでも再現したそうですよ。凄いですね。やっぱりアメリカはスケールが違う。ここでは鮨ではなく、寿司なんですね。そこには渡邉サンのこだわりもある様です。なので、この記事でも文脈上の齟齬がない限り寿司表記で行きたいと思います。画像5

この暖簾の奥にエレベータが。ここから2Fに上がるとカウンターです。
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カウンターセッティング。右手にある細長い箱はお箸です。このお箸、お土産としてお持ち帰り可能です。赤い箱には金文字で照寿司のエンボスが入っているのですが、ニューヨーク仕様ではここにPRICELESSのエンボスが併記されているそうです。ちょっと欲しい(笑)

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奥に写っている包丁の数々、最早日本刀の脇差レベルですが、物によっては一本ン百万円もするそうですよ。中には外国人の刃物職人が、『俺の打った包丁を是非使ってくれ!』と持って来てくれた物もあるそうです。(ただ、見た目は和包丁っぽく作ってあるのですが、やっぱり何処か和包丁とは違っていて、使いにくいとか。) 

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Instagramよろしく眼光鋭い大将の渡邉サンですから、こんな包丁持ってあの眼光で凄まれたら、ビビってオ○ッコちびっちゃうんじゃないかと身構えていたのですが、そこに現れたのは物腰が柔らかくて柔和な表情の紳士…いや、内山くん?今日はこんな田舎までウチの寿司をわざわざ食べにお越しいただいて、ありがとうございます』あらあら。なんと謙虚で殊勝なんでしょう。まずここで、世間のイメージとのギャップが。

ここから先は複数回訪問時の画像を訪問時系列関係なしに挿入していますので、実際の量から品数多めになっています。当然の事ながらメニューは季節物です。

このお店では最初の一品が雲丹です。それも最も美味で高価とされる赤雲丹
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これがいきなりアペタイザーとして出て来るんだから、凄い。照寿司では基本的に雲丹は赤雲丹しか出て来ません。殻割りの赤雲丹に鮪のタルタルとキャビアですか。見て鮮やか、気分を高揚させる前菜です。

赤雲丹が本格的で無い季節では量が少なめで海苔巻きに。

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でも、キャビアも赤雲丹も鮪もそれ単体で美味しいんだから、単独で食べたかったかな。特に赤雲丹。

二皿目には貝類が出てきます。季節によって鳥貝や岩牡蠣など変わります。

何を質問したのか忘れましたが(笑)、渡邉サン、喰いついてくれました。
春先に出て来る大振りのステキな鳥貝
貝類大好きっ子の筆者としては魂が震えます。
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初夏の季節には岩牡蠣が。夏野菜のオクラがナイスアクセントです。
ここでも赤雲丹が。渡邉サン曰く『ウチでは赤雲丹はソースだから』。
凄いです。でもやっぱり単体で食べたいな。赤雲丹。画像16

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春先にはワタリガニの雌が出て来たりします。立派ですねぇ。カボスを絞って(日によってはカボス漬け)を戴きます。爽やかな香りに内子のコクだけが残る素晴らしいひと皿です。

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これまた立派な黒鮑。蒸鮑で戴くのですが、コレは味も薄く、感心しなかった。いちかわ鮨 一幸のそれとは雲泥の差。両店とも『鮑を綺麗に磨くだけしかしていません。あとは鮑だけの味なんです。凄いのは鮑なんです。』と同じ事を仰られていたので、もうちょっと仕込みを頑張って欲しい。物は立派なんだから。

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佐賀の天然青うなぎを使った照寿司の名代『鰻バーガー』。串刺しの鰻を持つ、まるでウルヴァリンな渡邉サン。ご本人もそう仰られていましたが(笑) 
年中あるイメージですが、初夏から初冬にかけての提供です。
特に春先はメニューに無いのでご注意を。

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自家製のカラスミ。冬場のヨコワ(鮪の幼魚)の時期は皮岸を炙ったヨコワの上からトリュフよろしくスライスを振りかけて供します。ヨコワの上品な脂とカラスミの塩気は日本酒必須です。

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ヨコワの季節以外は鰹の藁焼きを更に燻蒸した物と合わせて提供されます。

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鱧の天ぷら…というよりはフリッターに赤雲丹を乗せた(ここでもまた赤雲丹!)、鱧雲丹…ハモウニ…ハーモウニー…ハーモニー。ハーモニー…。

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熱々の鱧のフリッターに冷たい雲丹のアクセント。
これは一口で戴くからこそ価値が有る。熱くたって一口で

冬の時期には虎河豚の白子も出て来ます。大きいですねぇ。こんな白子を持っている河豚そのものもかなり大きいんでしょうねぇ。

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掻き混ぜてリゾット?TKG?風にして戴きます。個人的には皮をちょっと炙って欲しかった。白子の旨味は皮にあるから。

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ここまで怒涛の如く素晴らしい食材たちを眼の前に突き付けられて来ましたが、いよいよここで食材プレゼンテーションのハイライトがやって来ます。

ずどーん!

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まぁ立派な九絵。勿論、本当に大きい九絵はこんなもんじゃ無いのですが、それでもカウンターに座る客達にはインパクト大。コレを目の前で捌いてくれます。

やっぱりコレを見せられると歓声が上がりますよね。間違いなく2時間半の食事中、一番歓声が上がる瞬間です。結構重いので、最後の方は苦しそうな顔。この後にオチがあり、それもまた笑いを誘う。まさにエンターテインメント。

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お造りで戴きます。包丁が脂で真っ白になるほどの脂の乗りっぷりです。もうちょっと提供温度が高い方が脂の口溶けがより良くなるんじゃないかな〜。(コレについては後述します)

九絵は焼物でも提供される事があります。コレは九絵の西京焼

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ここからやっと握りです。

最初の一貫は〆鯖の鶯握り。これは定番物で毎回変わりません。関鯖を分厚く切って酢飯を挟む形で握ります。関鯖はやっぱり分厚いほうが美味しいですよね。シルエットが鶯っぽくてカワイイ。渡邉サンの睨みとのギャップが(笑)
ニューヨークから帰国後はバタフライと呼ぶようになりました。

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二貫目は貝類が来る事が多いです。冬場から春にかけての赤貝の季節は見事なまでの大振りの赤貝をいただく事ができます。

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ああ…ステキ。筆者は貝類、特に赤貝と鮑には目がないのです。画像48

赤貝大好きっ子の筆者が各所のお寿司屋さんで良くお願いする三貫付け。名付けて『赤貝ウルヴァリン』全部掌に載るかなぁ(笑)と仰りつつ、ちゃんとやってくれました。圧巻!
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勿論、赤貝と言ったら紐です。こちらもちゃんと戴きましたが、コースには無く、追加オーダーでの提供でした。

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貝類の握りは赤貝がメインの様ですが、赤貝がシーズンオフの時は平貝や煮蛤を出す事が多い様です。で、こちらが平貝。

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毎回ではないのですが、照寿司では食中に椀物を挟む時があります。かと思えばコースの最後に出て来る事もあり、一律に決められた構成と言うわけではないようです。これは大蜆の吸物

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。コレは特徴無かったかな。

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細魚。まるで飾り寿司。赤酢だからこそ映えるシェイプ。

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烏賊と雲丹の再構築
ここでも赤雲丹が。烏賊は全てこの形で供される様です。柔らかい烏賊が赤雲丹と一緒に口の中で溶けていく感じを『烏賊ジュース』とは渡邉サン。

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車海老。非常に大きい!
食べる時は身を下にしてかぶりつく。まさに海老ドッグ。
小さめの巻海老しか入らなかった時は海老を二段重ねにして握るダブルデッカーで提供してくれるそうです。

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この車海老はある意味、照寿司の魅力と最大課題を同時に示す物でありました。この件は後述します。

寿司の花形、大善扱いの物です。今、鮪仲卸はやま幸がその名を轟かせていますが、やま幸以外なら、今は大善から仕入れている店で良い鮪に巡り会う事が多いです。やま幸と並ぶ有名仲卸の某社は今、勢いは無いですね。某社の鮪を売りにしているお店はみんな鮪がパッとしない。身は柔らかいのですが、味が薄い。

この日も立派な鮪でした。こんな大きなブロックから柵取りする所なんて、滅多に間近で見られません。

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艶やかな中とろ。脂の回り方もステキ。

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大とろも大振りな握りです。

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日によっては中とろに赤雲丹とキャビアを乗せてきます。
高級食材のコンビネーションもここまで続くと流石にちょっとやり過ぎ感が…。

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小鰭。光る皮を下にして握るスタイルは初めて見ました。なぜこう言う握りなのかは鋭い眼光の前にビビって聞くことができませんでした(笑)

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この後に白身が続きます。春子だったり鱚だったり。

コレは春子。ちと湯引きで火を通しすぎたか。画像78

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こちらは。白身魚を後半に持ってくる組み立ては所謂、破壊と創造なのでしょうか。でも、この組み立てはあまり成功しているとは思えない。

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喉黒。やはり喉黒は焼いた方が美味しい
生や半生では魚の良さを活かせない。皮から脂がプスプス言ってるくらい焼かないと。このアプローチには諸手を挙げて賛成。

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玉子も大振りだぁ!一見、出汁巻玉子かと思ってガッカリしかかったのですが、ちゃんとフンワリ江戸前のカステラ風。玉子好きには嬉しいですよね。

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締めのお椀は九絵の骨でお出汁をとったもの。シンプルで上品です。

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デザートにフルーツを出してきますが、ここにも必ずひと手間かけています。中でも素晴らしかったのは宮崎マンゴー。地産地消もここまで徹底していると拍手です。なんとニッカウヰスキーのフラッグシップボトル竹鶴21年を、この完熟宮崎マンゴーにかけちゃう暴挙!(笑) これこそ、まさに破壊と創造です。マンゴーとウイスキーって、こんなに相性が良いんですね。竹鶴21年だからかな?ウイスキーの香りがマンゴーの香りと甘みを引き立てる、まさにマリアージュ!なんで単体で美味しいものをわざわざ混ぜちゃうの?って思うものも中にはあったのですが、コレは完璧なマリアージュでした。マリアージュって、やっぱりシンプルな組み合わせから出来上がるのではないでしょうか

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共通して言える事は鮪とキャビア以外は全て九州の地産地消。それも殆どが地元北九州から山口県下関市の関門海峡周辺で獲れた食材ばかり。これ程のクオリティとバラエティも兼ね備えた、ほぼ完璧な地産地消は北海道のお寿司屋さんだってできません。サラリと『その辺で漁れたXXです』って言えちゃうの凄くありません?(キャビアについては宮崎キャビアも研究してはいるそうですが、今の所はイタリア産を使っているそうです) この恵まれた海の恵みを、ひたすらにあの眼光鋭き見得切りとともにWebで発信し続けた事がブレイクのキッカケになっている事は今更語るに及ばないでしょう。

美味しいお店はこの日本中に沢山あると思いますが、記憶に残るお店って言うのはやっぱりワクワク感がどこかに必ずあるんですね。『今日はどんな美味いもの、どんな凄いもの食わせてくれるんだろ』って言うお店は必ずまたリピートしたくなるものです。この戸畑というドいな…もとい、地方の街で客を呼び寄せるため、そこにフォーカスして尖鋭化させたのが#sushibae なのです。照寿司はけっして変わった事をしているのでは無く、戸畑という立地、そして渡邉サン自身の強みとはなんぞやをちゃんと認識した上で、ビジネスにおける当たり前の事を当たり前に行っただけなのです。コレは行ってみて初めてわかったこと。

その当たり前のことを当たり前に行うのがどれほど難しいことか…
だから #俺はどうせヒール なんて言わないで…。

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で、筆者にとって最高の飲食店は美味しくてかつ記憶に残る店なのですが、この店は確実に記憶には残ります。味も高級寿司店の水準以上は保っています。お一人様3万円という料金も、あれだけ従業員を抱えてアレだけの食材を、幾ら地の利があるからと言ってもかき集め続けるには当然の金額だと思います。

しかしながら冒頭にも述べたとおり、飲食店は最後は味。高級寿司店の水準以上は保っているとは言え、照寿司よりも味の面でより印象深く美味しい寿司屋は世の中にたくさんあります。でも、せっかく世界で一番有名な寿司屋、寿司職人になったんです。だったら、世界最高の寿司職人を目指して欲しいじゃないですか。アレだけの食材を揃えられる地の利と目利きがあるんだから。それは現在のエンターテインメント性を維持しつつも可能なはずです。

完熟宮崎マンゴーに竹鶴21年を掛けるという、あの味覚センスがあるなら容易い事だと筆者は確信しております。

そう言った中で照寿司は味の面ではまだ伸び代があります。もっと精度を上げてさらなる高みを目指せるはずです。ネタは良いんですから。ここはやっぱり目指さないと。エンターテインメント性は申し分ありませんが、味は単なる水準以上のままだったら、いずれ必ず飽きられるからです。

その最も際たる例、照寿司の魅力と課題を同時に表したものが車海老でした。

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この大きな車海老、Instagramとかにはコレよりさらに大きいものの写真がしばしば上がっていますよね。もう、スゲェ!の一言なのですが、火が芯まで通り切っちゃってる上にかなり冷めかかってる。提供までの温度管理が甘いんですね。車海老の甘味を最大限に引き出すにはやはりある程度以上の温度が必要、かつ芯は完全に火が通り切っていない方が良いですよね。ミディアムレア。天ぷらも同じです。同じ福岡県にある鮨 さかいの様に1本1本各々茹で上げから30秒以内で握る (コレはコレで立派なエンターテインメントです) 所までしろとは言いませんが、やっぱりここまで立派なものを仕入れられるんですから、最後まで完璧に提供して欲しい、魚介類のおくりびとを全うして欲しいんですよね。

温度管理は全てに共通していて、刺身や酢飯、そして日本酒にまで至ります。例えば九絵のお造り。包丁が真っ白になる程脂が乗っているのに、供される温度が低く、口の中で脂が融点に至るまで時間がかかる。脂は旨味に直結しますから。

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逆説的に言えば、温度が低いから脂がある分、包丁が真っ白になるんです。プレゼンテーション的な見せ場にはなりますが、食べる時にそれが仇になっているのです。

酢飯の温度もネタに合わせたコントロールがされている様にはあまり感じない。日本酒に至っては全部冷やしすぎ。ゴブレットに入れて供されるのですが、掌でゴブレットを温め続けて温度をかなりあげないと日本酒の香りや旨味とかが全部隠れちゃう。スッキリ切れ味だけを求めるなら、それでも良いのですが、マリアージュを考えればそれじゃダメだし、そもそもその酒が持つ本来の特徴をスポイルしていることになる。勿体無いですよね。

ほんのチョットの事なんです。それを厳密にするかしないかだけでトータルエクスペリエンスが大幅に変わってくる。(ただ、リピートするたびに毎回以前よりも進歩を感じられる事もここで触れておきたいと思います。)

敢えてもっと言うと酢飯も香りがチョット強いかな。色の割には塩も酢もそれほど強く感じないのですが、白身魚に合わせるのは難しい酢飯だと思いました。だから白身魚が後半に出てくるのかな…? コレは温度管理ほどイシューではないし、個性の範疇だとは思いますが。

そして、幾ら『ウチでは赤雲丹はソース』と言えど、赤雲丹多用し過ぎ(笑)
有り難みも薄れるし、単体で十二分に美味しいものをいくつも組み合わせる必要がどこにあるのか。前菜ならまだしも、寿司ってシンプルの極みが良いのだし。特に中とろの握りに赤雲丹とキャビアを乗せて来たものは、コレ、一番最初の前菜と一緒じゃん!と思ってしまいました。それに赤雲丹お高いでしょ?程々の量で、その分お値段抑える努力をしてくれた方が嬉しいな。東京から戸畑まで行くには交通費も宿泊費も馬鹿にならないので、今以上の値上げは当分控えて欲しいところ。

話は逸れますが、雲丹ばっかりあちこち集めて食べ比べだ、なんていっぱい出してきて、値段も高額なお店ありますよね。あっちの方が筆者的には邪道です。そこには技も研鑽も感じないから。

#ウチはウチ #これが照寿司のやり方 潔い。是非ともそのエンターテインメント性と仕入れについてはそれを貫き通して欲しい。でも、味については現状に満足せず、もっと上を目指して欲しい。日本なんて小さなスケールじゃなくて、世界の中で真のOne and Only にあと少しで手が届く所に来ているのだから。

世間一般の照寿司のイメージは、やはり眼光鋭く見得を切るあのポーズと表情なのですが、冒頭にも述べた通り渡邉サン、物凄く謙虚で繊細な方です。握りの技術もあの大きな手で繊細な動きをします。しかも、客がその日何を期待して来ているのか、ちゃんと理解している。コレは素晴らしい。筆者の様にガチで寿司を喰いに来ているぞ的な客には本当に謙虚。一方で#sushibae よろしく物見遊山的な客には武勇伝のオンパレード。ちゃんと客の期待値を把握して、それに合わせた接客を臨機応変に提供しているのは、超一級のサービスパーソンにしか出来ない芸当ですね。こういう人、筆者は大好きです。

しかも、最後のお見送りはエレベーターまでかと思っていたら、すかさず1階にまで降りて来て、タクシーが動き出すまで最敬礼コレが渡邉サンの本質だと思います。この何処が邪道なのか

あと、もうひとつ。店内禁煙なのは良いのですが、喫煙のために中座して店外に出る行為は禁止して欲しい。すごく気が散るし、戻って来ると煙草の臭いプンプンで繊細なお寿司が台無しに。あの人達、会話も品がなかったよなぁ。外資金融関係っぽかった。アメックスセンチュリオンカードをチラつかせていたけど、お支払いはビュースイカカード。センチュリオンはコーポレートカードだって事ですね。あの時のアナタ方、恥ずかしいからおやめなさい。

しかし、楽しかったなぁ。この店、東京にあったら間違いなくデートコースには最高だろうな。それも大好きな娘と行く初めての高級店には絶対オススメ
美味しくて楽しかったねって、絶対なるよ。盛り上がるよなぁ。今は無き銀座の元三ッ星店に大好きな娘と一緒に行った時、その娘が大将にちょっとした質問したんだけど、くだらない質問してくるなと言わんばかりの冷たい態度。「こわ〜い」って僕に耳打ちしてきた。お寿司は美味しかったけど、きっとテンション落ちちゃったよな。あの娘とその後あんまり上手く行ってないのも、あの時の件が要因のひとつだと思う。トホホ〜。(了)

照寿司
〒804-0044 福岡県北九州市戸畑区菅原3-1-7

営業時間: (完全予約制 カウンター10席)
昼 12:00~
夜 17:30~と 20:15~の2回転制
不定休

公式Webサイト: https://terusushi.jp
公式Instagram: https://www.instagram.com/teruzushi/

予約は全て下記Webサービス経由でのみ
OMAKASE: https://www.omakase-japan.jp/stores/43953
ポケットコンシェルジュ: https://pocket-concierge.jp/ja/restaurants/244263

店主: 照寿司三代目 渡邉貴義

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Raynyan Funifuni
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