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6月21日 日本の空がまたスペシャルな夏至

2024年は 6月21日 5:51:00 夏至を迎えます。

地球から見て太陽の位置が「夏至点」を通過する瞬間です。

このときの日本の空を見てみましょう。

※この記事では、二至二分など地球の振る舞いや、天体の整列など、これを変化点のタイミングとして使っていけるよう情報をお伝えしています。




春分点が南中する、今年の夏至

太陽が夏至点に入った瞬間の空です。
すでに夜明けを迎えた早朝です。

まずは天空の「座標」から見ていきます。

夏至の瞬間の座標軸

これをみると、、、
夏至の瞬間、日本の空には「春分点」が正中します。

春分点は地球の描く大円「黄道」と「赤道」が交わるポイントです。
図では赤の線が天の赤道、黄色の線が黄道です。

青の線は「子午線」
これは日本列島のほぼ中央に位置する、東経137°42’の経線で、ここでぴったり整列します。
およそ、北は新潟富山の県境から南は浜松を通る、
日本列島を東西等分するような経度になります。(表題地図の縦線)

春分点は座標原点の0。
太陽が夏至点に入るその時刻と同時に、日本は春分点と整列するのです。
これは春分に引き続きなのですが、とても興味深いことです。


そのとき日本の空には全惑星が架かる

そして太陽系の天体は、と見てみると、、、
もうすっかり日は昇っているのでまわりの天体は見えないのですが、
太陽が夏至点に入ったとき、空の背後にはすべての惑星が揃っています
これも春分に引き続きまた!おこるのです。

先ほどの図では画面に入りきらなかったので、少し東(左)にずらして全黄道上を見渡してみたのが次の図です。

全惑星がもれなくそらに架かる夏至

東から順番に、水星、金星、太陽、木星、天王星、火星、海王星、土星、そして冥王星まで。
夏至の瞬間、日本の空に惑星全員が揃っているのです。

例えばこの日本中央付近では、
夏至の1時間前には水星金星はまだ昇ってこず、
夏至の1時間後には冥王星が沈んでしまいます。
集合写真を撮るからみんな並んで!はい!というような、
あるいは全惑星が揃って見守るような、
惑星兄弟が全員列席したタイミングでの夏至となります。


海王星が君臨する夏至

春分のときには太陽が正中しましたが、
この夏至にひときわ君臨するのは、「海王星」です。
(もちろん!見えはしませんが)

ちょうど今春分点付近にある海王星。
実体のないその点を示してくれていると同時に、
各惑星を代表するかのように夏至に正中し、
日本の真正面、中央に架かります。

海王星は天球上をゆっくりと巡っていますが、そのままただ春分点付近を通過していくのではありません。
その振る舞いが、とても存在感を示すのです。

海王星は、この夏至にタイミングをあわせたかのように、ゆっくり春分点に近づいて留まります。
まるで地球の春分点にキスするかのようにタッチすると、
そこから今度は逆行をはじめるのです。

地球の春分点をリスペクトするのか、刺激するのか、
何かをはずすのか、あるいは壊すのか、、
そんな海王星が強調し示す春分点が、まさに正中する日本の空。

今回の夏至は特に、示唆に富んでいるようです。


※補足:春分、秋分、夏至、冬至、という「点」
について、補足記事を文末に記述しました。


日本だけで起こる、月が起こす夏至の前夜祭

さて。
今年の夏至には、その前夜祭のようなイベントがあるんです。

夏至の瞬間、日本の空に全惑星が列席することは前述のとおりですが、
では「月」は?というと。

月は夏至の夕、セレモニーを締めくくる満月となるべく昇ってきますが
実は夏至前日の日暮れ時、
世界中で日本でしか見られない特別なイベントを起こします。

天体現象は、国境には何の関係ありません。
相当広い国土を持っている国ならもしかして起こることもありますが、
一つの国でしか見られないというものはたいへん希です。


月によるアンタレスのグレージング(接食)

夏至に先立つ、前日の夕方日没の頃。
昇ってきたが、さそり座の主星アンタレスグレージング(接食)を起こします。
これは世界中で唯一、この日本でしか起きない現象です。

グレージングとは、天体が天体をかすめ、お互い触れあう現象です。
それは食が起こるか起こらないかの境目での現象になります。

参考:グレージングについてはこちらの記事も参照ください


月は通り道にある星を食べながら動いていく

月は黄道帯から大きく離れること無く動いていきますので、
その通り道にある星は次々と月に隠されては現れます。

アンタレスは「さそりの心臓」、赤く輝く巨星として有名です。

月と食をおこす可能性のある1等星は、アルデバラン(おうし座)、レグルス(しし座)、スピカ(おとめ座)、アンタレス(さそり座)の4つだけで、いずれも黄道帯にある星座の主星です。

食の限界線

今回は能登半島先端の珠洲から九十九里浜に至るライン上で起こります。

このラインから南側では、アンタレスが月に食され、
このラインから北側では、アンタレスは月と触れあわずすれ違います。
これを食の限界線と言います。

限界線は、月の北側南側両方に出来るわけですが
今回は北限界線になります。
これより北では食は起こらないというわけです。
この線上で起こるのがグレージング(接食)です。

ただ日没前のため、残念ながら今回この瞬間を肉眼で観るのは難しく、望遠鏡が必要です。

接食の時刻は概ね 6月20日 18:50~18:55 の間になります。

限界線上で無くても、時間がたって空が暗くなるにつれ、アンタレスと月が離れていく様子は見ることが出来ます。

九十九里浜での見え方のシミュレーション動画を作成してみました。
月がアンタレスをかすめていく様子です。
ダウンロードしてご覧下さい。

この現象が、世界中で日本だけしか見られないのは、
ちょうど月の出間もない絶妙なときに起こることがその大きな要因になっています。

地図に描いた限界線上でグレージング(接食)になるのですが、
この線上を月の縁の影が、西から東へと動いていくのです。

月の影は中国大陸方面から日本に上陸してくるのですが、
中国本土を通るときには、まだ月が昇っていない時間になるため見れず、
そして日本を通り抜け太平洋に出た影は、他の国土に上陸すること無く消えてしまいます。
ですから今回は大変希ですが、日本だけで起こる天文現象になるのです。

グレージングはとてもスリリングな現象

月の縁は滑らかに見えますが、望遠鏡で観るとクレーターや山谷があり、かなり凸凹しています。

ということは、グレージングはこの月の縁の地形に大きく左右されることが想像できますね。

例えばちょうどアンタレスと接する場所に高い山や深い谷の地形であったなら、どうでしょう。
また、もしそこが山と谷が連続しているような地形の場合、
ちょうどその谷間だけ星が見えて、山では隠れるので、チカチカと明滅することもあります。

また、その人の立っている場所では食が起こっても、
たった数メートル離れた人には食が起こらない、
ということもあります。

現在は、日本の月探査機「かぐや」などによって、月の地形が正確に測量されていて、星の位置も月の暦(位置)も、そして観測点の位置(地図)もたいへん高精度になったので、かなり正確にその様子があらかじめ計算できます。

かぐやによる今回の接食点の月縁データ(相馬充氏作成)

月縁図をみると、もしかしたら場所によっては何度かチカチカと消えて現れを繰り返すことがあるかもしれません。

そして今回は明るい赤色巨星のアンタレスということで、点光源の普通の恒星とはまた違った見え方になると思います。

もし望遠鏡をお持ちで、この様子を捉えてみたいという方がいらっしゃいましたら、限界線の詳しい情報をお送りすることができるかもしれませんので、6月18日(火)までにご一報下さい。

<記事補足>

春分、秋分、夏至、冬至、という「点」

そもそも春分点や夏至点など、座標の基準になる各点は、
それらがまず宇宙に存在し、それをもとに各天体の位置を測っているわけではありません。

よく春分を「宇宙元旦」などという言い方がされています。
その言葉の意味合いによって誤解されていますが、
宇宙にその原点がまずありきで物事が始まっているわけではありません。

太陽系の天体を位置や動きをあらわす原点として使われている春分点とは、
地球のオリジナルな点であり、
地球の「振る舞い」が作り出しているものです。
地球の振る舞いを宇宙に投影した点、というわけです。

地球の振る舞いが投影する座標 黄道、赤道、二至二分

地球の振る舞いである「公転」が「黄道」を描き、「自転」が「赤道」を描きます。
春分点とは、その二つの振る舞いによって描かれた「交点」です。
宇宙空間に「春分点」というものが普遍的に存在しているのではありません。
それは地球が投影し、地球が定義した、地球にとっての原点です。

地球自らが作り出す座標世界で他の天体を見ているわけですが
春分点は、地球にとってここを原点、「はじめ」とした点であるわけです。

春分、夏至、秋分、冬至、は黄道上のポイントです。

赤道、黄道、二つの大円が交わる点は2つあるわけですが、
そのうち、黄道を行く大陽が南から北へ横切る点を表として「春分点」、
北から南へ横切る点を裏として「秋分点」、
そして太陽の位置が北に極まる点を「夏至点」、南に極まる点を「冬至点」、と呼んでいて、
それらは黄道上で90°毎の位置関係です。



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