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手記

記憶を繰り返し探り、思い起こす度、霧は晴れていく。

暗がりに光が当たるように。
カメラのピントを合わせるように。
不鮮明だった場所も、思い出せるようになっていく。

そうした中で———はっきりと、思い出したことがある。

私が今こうして、ここに立つまでの過程。
自分自身と向き合い、何かに立ち向かい、『レイ・ド・ブラン』として店を開くようになる、までの、いきさつ。

そこにおいて———私に手を差し伸べてくれたひとびとの、存在。

どうして今まで、忘れていたのだろう。

自分と向き合うこと。他人と向き合うこと。
そのすべてが恐ろしく見えていた頃。

———手を差し伸べてくれたのは、「あの人」だった。

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