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大人になってから見た「AKIRA アキラ」(1988年)の映画感想文

AKIRA(原作)を読んだ記憶

このアニメが公開されたのは1988年。私が10歳の時らしい。
私が初めて原作のAKIRAを読んだのは、中学生の頃。
漫画好きの友達が持っていた分厚い大きなサイズの漫画本全6巻は、特別なアート本のように見えた。
借りて読んだ時には、いつも以上に慎重に扱った記憶がある。


フランスのアニメーション「時の支配者」から「AKIRA」へ

その後、高校生の時か、アニメも見たはずだ。
それから数十年の時を経て…
サブスクで出てきたフランスの衝撃アニメ「ファンタスティック・プラネット」(これも久々に見た!)の次に、同じルネ・ラルー監督がフランスの巨匠メビウス(ジャン・ジローのペンネーム)とタッグを組んだ「時の支配者」を見た。
そのついでに、メビウスの影響を受けた日本のアニメーションに想いを馳せることになる。…鳥山明、宮崎駿、大友克洋だ。

AKIRAは、そもそも原作の漫画がスゴい

大友克洋さんは、日本の漫画やアニメに革命をもたらした方。
均一の太さに見える線で、スケールの大きい引いた背景をリアルに緻密に描いていく。立体感とか空間把握力とかスゴくて、一体頭の中はどんな世界が見えているんだろうって感じ。(元々映画監督志望だったらしい)
感情を強調して背景を省略する劇画に向かっていった当時の漫画とは異なるその作風は、漫画やアニメ業界に衝撃をもたらし、世界中のあらゆる分野に影響を与えた。
それは、メビウスの描く世界や均一なグラフィカルな線が手本になっている。メビウスの「アルザック」を見れば、「風の谷のナウシカ」や鳥山明への影響も理解できるだろう。

アニメーション化されたAKIRAを見て

今見てもそのクオリティや再現性の高さは凄かったし、あれ以上に熱の入ったアニメは、それ以前にも以後にも見たことがない。特異なアニメであることは確かだ。
当時のアニメはまだアナログで、手描きのセル画でのフィルム撮影。大友克洋本人が、多くの歳月と予算(人件費)を注ぎ込んで、妥協しなかったことで生まれた、この作品。
漫画もそうだけれど、当時のアニメでは考えられないような圧倒的なスケールを圧倒的な緻密さで描かれている。
(小さな画面で見たら勿体無い!)

AKIRAのストーリー

私の解釈だと、人間の能力を完全に解放すると、ビッグバンくらいすごいパワーが現れるよ、というお話。少し難解な部分はあるし、原作と少し違う部分もある。
舞台は第三次世界大戦後の2019年のネオ東京。ある事故によって傷を負った幼馴染の鉄雄は、金田の目の前で政府の組織に運び込まれる。
現れた子供のような背丈で老人のような皮膚を持つ子3人組は、極秘の研究で超能力的な力を増幅していった実験体。アキラという名を持つ者もその1人だった。鉄雄も事故によって、その能力に覚醒したため実験体の1人となったが、予想を遥かに上回るペースで力を増大させていき、コントロールができない状態になっていく。世界を壊すほどの力を持った鉄雄を止めるため、あるいは完全体にするため、様々な組織がアキラを覚醒させようとやってくる。

印象的なシーン

まず、もう一度、子供老人の容姿にビックリする。彼らがその容姿となる背景を知ってゾッとする。
そして、2019年のネオ東京に出てくる不良イメージや懐かしのファッション、紙幣などを見て、電子化デジタル化が進んだ現代との違いが面白く感じた。それでも、男子の憧れのバイクや武器は、まだまだやっぱりカッコよく思えてしまうんだな。
都市が破壊される描写や、巨大化していく鉄雄の描写も見どころだ。

思春期の自分を思い出したのは、主人公の金田と鉄雄の関係性から。孤児院から一緒だった幼馴染の高校生同士だ。力を手に入れた鉄雄が、抑圧されていた感情や幼馴染の金田にずっと抱いていた屈折した感情を爆発させていくシーンがある。鉄雄に同情しながらもすごく切なさを感じたとともに、最後は金田に助けを求めるシーンに、二人の切っても切れない絆を感じて、ホッとしたものだ。そんな青い感情を、再び思い出させられた。

4Kリマスター版も出ている

2020年に、4Kリマスター版ブルーレイが発売されている。4Kリマスター版とは、当時の35mmマスターポジフィルムから。4Kクオリティでスキャンし、デジタルデータに修復したもの。
古い方も時代を感じられるし、リマスター版で美しく蘇ったものを見るのも素敵な体験だと思う。両方見てその違いを楽しむのも、現代できる楽しみの1つですね。


お読みいただき、ありがとうございました!

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