第五話

「……」

レイナは立ち止まってしばらく目を閉じた。
暗闇の公園の中でゆっくりと深呼吸してみる。
疲れすぎて幻覚が出たのだろうか?
それにしても流れ星からの裸の男はおかしすぎる。
てか流れ星?落ちてきたの?なんで?
え?男?裸?
え?チ〇コ?
——だめだ。
思考が雪崩のように流れ込んでくる。
レイナはまったくリラックスできずにいた。
そして気が付けば、後ろを振り返っていた。
公園の中央の方にはやはり、大きな穴がまだあった。
レイナはその穴をしばらく眺め続けた。

(なんで……?どういうこと?……これって現実?)

レイナはそう思いながらも、一歩一歩、穴の方に近づいて行った。
穴の中をもう一度、スマホのライトで照らしてみる。
そこにはゆっくりと寝息を立てている青年がやはりいた。
青年はライトの光に気づいたのか、その眼をゆっくりと開ける。

「ん……?」

青年はそのままむくり、と体を起こすと、ライトの光を眩しそうにしながら、レイナの方を見た。

「……誰?」

レイナは青年の顔をまじまじと見ていた。
美しい出で立ちのその青年は、レイナの方を真っ直ぐに見つめている。
大きく黒い瞳は澄んでいる。
綺麗で白い肌の男の上半身はたくましく、そして美しい。
レイナは思わず見とれてしまっていた。
そして、しばらくしてハッとすると、

「あ……えっと……名前?」
「うん……」
「私…………は、レイナ……あなたは?」
「……リスタ」
「リスタ?」
「うん……あのさ……ここ……どこ?」

リスタは左右を見渡しながら、そう言った。
レイナはリスタが眩しそうにしていたので、スマホのライトを下げると、口を開いた。

「あ……えっと、ここはトーキョーの公園だけど?」
「……トーキョー……んん……」

リスタは不思議そうにその地名の響きを復唱した。
明らかにそれは今初めて聞いたようなリアクションだ。
レイナはこの青年が本当にトーキョーを知らないんだとわかった。

「あの……あなた、どこから来たの?」
「……俺?……」

リスタはレイナに聞かれると、ゆっくりと夜空を見上げた。
満天の星空——、とまでは言わないが、薄暗い夜のトーキョーの公園からはうっすらと星空が広がっている。
リスタはしばらくその星空を眺めていた。

「ええと……上からなんだけど……俺……もしかして堕ちた?」
「……え?」

うーん、とリスタは頭を抱え出すと、しばらく考え出した。
レイナはリスタの言ったことがよくわからなかった。
リスタの様子をただ眺めるしかなかった。

「あ、そうだ」

リスタはふと思いついたかのようにレイナの方に顔を上げる。

「あのさ……今日、家に泊めてくれない?」
「え……?」

茶色い髪を伸ばした美しい青年は肩の力を抜けたような声でレイナにそう聞いた。

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