第4話
赤白い大きな炎——、それは公園の中央で発火していた。
夜の公園はたちまちにその大きな炎で照らされている。
レイナは口をあんぐりとしたまま、突っ立ったまま、動けなかった。
キャンプファイヤーでもここまで明るくはならないだろう。
しかし、その炎は、思いのほか、すぐに弱まっていき、たちまちに小さくなっていってしまった。
やがて炎が消えてしまうと、発火していた場所からは白い煙が霧のように出ていた。
夜の公園はまた暗さを取り戻す。
レイナは、大きな眼をパチパチと瞬きさせながら、その白い煙がなくなるまで眺めるしかできなかった。
やがて煙が収まると、公園の電灯の明かりが、その箇所を微かに照らし出していく。
レイナは先ほどまで発火していた場所まで恐る恐る近づいていった。
その場所は、何かが墜落したかのように大きな穴ができている。
深い穴なので、もっと近づかないと、いったい何があるのかわからなかった。
レイナは穴のすぐ近くまで歩いていくと、上からその大きな穴を覗き込むように見下ろした。
電灯の明かりに照らされてはいるが、穴が深いせいか、やはりよく見えない。
仕方ない、と思って、レイナはズボンのポケットからスマホを取り出した。
画面をタップして、スマホからライトを発光させる。
穴の方にライトを照らすと——、そこには裸の青年が体を丸めて眠っているのが見える。
茶色い髪を伸ばした青年は安らかに眼を閉じたまま、微かに胸を上下させて、ゆっくりと寝息を立てている。
青年は全裸の格好だった。
白い肌、美しく揃った腹筋、太もも——そして細くて長い足を折り曲げて、穴の中で眠っていた。
「……は?」
スマホのライトを青年にかざしたまま、レイナは固まっていた。
目の前の現実に全く理解ができなかった。
飛び込んでくる情報に脳が追い付かない。
思考停止。
一旦銅像の様に固まってしまったレイナの体は、まるで血液をすべて失ったように固まっている。
しばらくして、レイナはスマホを下ろすと、すぐに後ろに振り返って歩き出した。
「…………ふうう…………私…………そっかあ……疲れてるんだ」
前髪をたくし上げながら、レイナは自分の額に手を当てた。
額からは特に熱を感じなかった。
どうやら熱は出ていないらしい。
でも、金曜日の夜だ。
そういえば、仕事終わりで食欲もないぐらい今日は疲れていたのだ。
きっと自分の予想以上に大きな疲れが溜まっていたのかもしれない。
レイナは自分に言い聞かせるようにそう納得しつつあった。