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愛おしい赤ちゃん、そして貴方という守りたい存在

今日、お産という形で、中期中絶を終えた。赤ちゃんは13センチほどで、手のひらに乗るほど小さく、でもしっかりと人の形をしていた。

骨や爪がもう出来ていて、手足の指先が美しい形をしていた。パパ譲りかなあ。でも、私達って手足がよく似てるから、両方にそっくりだね。
股間部に突起があったので、恐らく男の子だ。(書類にも"男の子"にチェックが入っていた。)


総合病院なので、院内でのお産。
子宮を収縮させて赤ちゃんを出す薬を3時間ごとに投与していくはずが、一錠飲んですぐ破水。
ベッドがあたたかい羊水でべしゃべしゃになり、されるがままスタッフさんにおしめをかえてもらった。

その後、分娩室へと車椅子で運び込まれ、先生方に赤ちゃんを取り出していただいた。


分娩自体は本当にスピード出産で、中期で赤ちゃんがとても小さいことで心身へのダメージは最小限で済んだ。

私の身体は痛みに弱く、普段から寝込んでおり体力も心許ない。これがなんとか今の状態で持ち堪えられるギリギリのレベルだったろう。

スピード出産。中期なのでサイズが小さく、逆子だったので多少苦戦はしたもののあっという間の分娩だった
破水と経血でべしゃべしゃになりながら、先生に赤ちゃんを取り出していただいた。写真は分娩室でのお産後待機中のもの




取り出された直後すぐの、経血を洗う前の赤ちゃんを見せてもらった。
足が小さくて、頭が大きい。逆子だった。苦しかったろうに、よく出てきてくれたね。
(流石に赤ちゃんの写真は血が多く真っ赤なので、載せないでおく)


ずっと私のお腹の中で、一緒にいてくれた赤ちゃん。心が幸せで溢れた。なんて、なんて可愛いんだろう。

きっと赤ちゃんは、私を精神的に成長させるために、私のお腹を選んで生まれてきてくれたのだ。
自分自身で手一杯の私を成長させるために。
取っておいてくださったへその緒は、私の宝物になった。

まだ乾燥し切っていない、今だけの状態のへその緒。赤ちゃんと確かに繋がっていた証だ



ここ数日の入院までの彼氏くんとのやりとり(話し合い)、スタッフさんとのあたたかい関わり。陣痛との付き合い。感謝の想い。愛おしい命。

たった1週間程度のあいだで、本当に成長させてもらった。目に見えてタフになった。
女性は母になると強くなるって、いうものなあ。



その後、出産よりも痛みに苦しんだ血溜まりの痛み。血を外に出そうと子宮が強く縮んだ痛みだったらしい。
先生に抜いていただいて、その後貧血と痛みからの開放で少し眠った。



病室は静寂に包まれていて、情報疲れの日常から私を癒してくれた。物や誘惑物の無い部屋はなんて落ち着くんだろう。
病院食はとても薄い味付けだったけど、私はその味付けが好きになった。素材の味が本当に美味しかった。身体がいきいきとする感じがした。


三十分か一時間か、遅れたお昼を終えたお昼ごろだったろうか。スタッフさんが綺麗に洗ってくださった、赤ちゃんと改めて対面した。

お腹の上で手を重ねた、穏やかな眠りのポーズ。それをみて、昨晩からの感謝の瞑想でずっと笑顔と愛と感謝で溢れていた私は、涙ですぐに前が見えなくなった。


赤ちゃん。赤ちゃん。私の愛おしい赤ちゃん。育ててあげたかった。愛をたくさんたくさん注いで、あなたの笑顔が見たかった。この目で見たかった。

ありがとう。ありがとう。生まれてきてくれて、ありがとう。
あなたの誕生日、2024年、5月21日、水曜日。ありがとう。

今回の中絶は15週と1日で死産扱いになるため、退院後に行う手順を担当さんがまとめてくださった。

赤ちゃん、もう少しの間だけ、一緒に居ようね。ちゃんと、罪は罪として、あなたの命を背負っていくから。



また笑顔で、改めて赤ちゃんと写真を撮る予定だ。
このまま赤ちゃんだけを撮ると、なんだか亡き骸に対して失礼な気がしたから、一緒に並んで撮ることにした。
できればパートナーのTくんも並んで撮れたらいいなと、そう願って。

普段の様子見からお産まで見てくださった女性の担当スタッフMさんも、笑顔で「一番安心できる形で赤ちゃんとお写真撮りましょう」と言ってくださった。



守りたい存在

この間プロポーズを受け、未来の旦那になる彼氏…パートナーのTくん。

病室で役所とワーカーさんとの電話を終え、彼からの着信に折り返すと、聞こえた声は涙と嗚咽と身を捻られるような腹痛、そして度重なる精神的重圧でぐちゃぐちゃになっていた。

そんな声は初めて聞いた。こんなに弱りきった、弱さを隠さない貴方を、初めて見た。
「ごめんね…ごめんね…Aちゃんがしんどい時に傍に居てあげられなくて」と心を痛ませて、振り絞るように電話口で伝えてくれた。


ああ、この人はいままで孤独だったんだ。先日打ち明けてくれた彼の幼少からの孤独。道化を演じて、表向きは人気者でもずっと彼は孤独を感じていたのだ。
誰にも弱み本心を打ち明けられないまま来たのだ。
でも今日、そんな彼がぐちゃぐちゃに泣いて弱さを晒したのだ。それがどんなに長い道のりだったか。よく頑張ってきたね。

いまも、私の分娩に駆けつけられなかったもどかしい気持ちや悔しさ、数えきれない気持ちで押しつぶされそうなんだ。
だから私は、ただただ、彼への感謝と、「しんどいね、お互いに頑張ったね。いまは自分を責めたらTくんを守る人が居なくなっちゃうから、自分に優しくしてあげるんだよ」と伝えた。

守ってあげたい。誰かに対して心が強くそう感じた。
この人を愛で包んであげたい。この人を包んであげるために、必要な強さを赤ちゃんはくれたのだろう。
だって、赤ちゃんを生む前の私には、きっとここまで彼を包み受け止めることは出来なかったのだから。



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