マン・ハンティング・ウィズ・ポスト・アポカリプス 6
こじんまりとした応接室に通されたコーデリアに向けられた初めの一言がそれだった。いきなり給与の話が飛び出し、なおかつ希望金額を聞くというシラセの大胆なスタイルに目を白黒させる少女。
「い……」
「い?」
「いちまん……」
コーデリアの回答を聞いたシラセは真顔で隣に座って携帯UNIXをタイピングするエンジに一言。
「スタート1000万でどうかな、エンジ」
「いいんじゃねーの、数年すりゃ技術面で俺に追いつくだろうし駆け出しとしては悪くねぇ額だ。成果が出たらその都度伸ばせばいいしな」
「じゃ、それでいこう」
自分の希望を遥かに超える1000倍という金額を出されてなおの事泡を吹くコーデリア。自分は詐欺にでもあっているのだろうかとまで考え始めた。そんな少女の懸念をエンジは一笑にふす。
「こんな手の込んだ詐欺なんぞやる理由がないぜ、俺達には。なぜなら今時のインフラの重要技術の何点かは俺達が開発して特許持ってる代物だからだ。早い話俺らは毎日寝てたって遊んで暮らせるし、お前をかっさらって親切丁寧に契約交渉する必要はないな」
「でも、僕達には一企業として実現したい事はまだまだある。その為にも強力してくれる人は何人でも欲しいんだ」
厭世的なエンジの態度と真摯なシラセの態度にちぢこまるコーデリア。自分はただコーディングを磨きたいだけなのにこんないい待遇を受けてよいのだろうか。
「ま、一月くれーウチで働いてみな。んで気にくわないならやめりゃいい」
「そーそー、あ、ウチ勤務拘束時間はなくて月間で見合った成果物出してくれればいい方式だから。業務連絡については10時から17時の間にするようにだけ頼むよ」
「きんむこうそくじかんなし」
夢のような言葉にいよいよもって現実みが薄くなり、ふわふわした夢心地になるコーデリア。何というところに拾われてしまったのだろうか。
「夢見てるとこ悪いが要するに短時間で報酬に見合った成果が出せなきゃ24時間365日働き続ける羽目にもなるってこった」
「脅かすのはやめてくれよエンジ、そもそもウチは低報酬短時間労働も選べるだろ?」
「夢ばかり見させてやるべき事自覚させないのはナンセンスだぜ、と」
ニヒリズムに満ちた笑みを浮かべるエンジをシラセが肘で突いてけん制する。続いてシラセよりコーデリアに対して鍵と記録素子が提示された。シラセの説明によると、記録素子の方には詳細な労働契約内容が記載されているとのことだった。
「とりあえず今日は寮を使うと良いよ。こんなご時世だからね、一人で帰ったらまた人狩りに遭いかねないし」
「そういうこったな」
出来過ぎた話に逡巡するも、家族の所に戻る気はないコーデリアは最終的に首を縦に振った。ここを出ていった所で人狩りに遭って二束三文で売り飛ばされるのが関の山なのは彼女とて重々承知の事だったのである。
【続く】
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