AIの言霊
「マスター、ですからサメは空を飛ぶ生き物ではありませんし、ましてやマグロは手足を生やしてニンジャを名乗ったりしません」
「シトラスはわかってないなぁ、こういうのがいいんだって」
「私のクラウドデータベースを元にした学習内容は、マスターのアイデアはごくごくわずかな方にしか……」
僕は夕陽差し込む私室のデスクで、創作サポートAIのシトラスが呈する苦言を聞き流しながらテキストエディタに思考入力を続ける。
一般受けしない?そんなことわかってる、なんて文字がテキストに入り込むとため息ついて今度は削除を思考した。
「書きたいように書かせてくれよ、書いててつまんなかったら続かないだろ?」
「ですが、多くの方に読んで欲しいから私を導入したのでは?」
仮想モニターの視界のはしで柑橘類のアイコンが跳ねては歪む。
「そうだけど。内容ガラっと変える以外に手はないの?」
「細かい調整を加えて主題を維持したままクオリティを向上させることでも読者数の上昇は期待できます」
「そうそう、そういうので良いんだよ」
「高い需要のあるジャンルに転向するほどの期待値は得られませんが……」
「いいさ、別に全人類に読んでほしいって訳じゃないし……」
その時だった。仮想モニタに通知がポップアップしたのは。その数100。
「何これ、スパム?」
「いえ、WEBページのスクロール経過から人間である可能性が高いです」
通知をタップ。デフォルトアバターではないちゃんとしたユーザーが一覧にならぶ。
と、そこでまた通知が更新され、今度は数百のユーザーからのスキが付いた。
「えっ、何これ、何が起こってるの」
「現在調査、推定中です。アナリティクスでは複数各所からの流入が認められます」
僕が喜びより恐怖に震え初めても、その通知が高らかに鳴るのは続いた。
【つづかない】
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