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UE:ハウリング・ロア ep-2
朝日の差し込むアパートの一室にて精悍な顔立ちの男と色素の薄い髪をシニヨンにまとめた白衣の少女はそろって食卓に突っ伏した。
「共同生活って結構カネかかるなぁ……」
「ボク達揃って自炊イマイチで外食ばっかりなのが特に良くないです」
「節約料理も身に着けなきゃならんか……強くなる道は険しいもんだ」
身を起こして深く深く嘆息する男、ハガネ。同じように身体を起こすと大型のタブレット端末いじりまわす少女、カナメ。
「そんな残念なマスターにお仕事のお知らせが来てます」
「誰からだ?」
「今人気の歌手の方から、です」
スマホの中から通知を知らせるタタラに、端末をつかみ取って検分する。一緒に覗き込むカナメ。
「んー、んー?たかだかライブの護衛って割りにずいぶんと高額な依頼だな」
「あ、この人知ってます。ソウルアバターに乗りながらライブする今人気の人です」
「ふーん」
特段興味もなさそうな生返事を返すハガネにカナメは自身のタブレットを操作してくだんのロッカーの動画を再生してみせる。
「へー、三つ首の狼がモチーフの、って、は?」
再生された動画にはアリの大群めいて群がる量産型SAを片っ端からぶっ飛ばしながら演奏する冥王の如き姿が映っていた。ライブというには余りにもかけ離れた代物に間の抜けた声も出る。
「なる、ほど。こりゃこの金額も納得ってもんだ。しかしなんだってここまで絡まれてるんだ?まさかこいつらそろって熱狂的なファンってわけじゃないだろ」
「依頼文にはストーカーみたいなクラン勧誘がうっとうしいから何とかしてくれってあります」
「クラン、な」
タタラの説明に何とはなしに理解するハガネ。
クランとは、士族を意味する言語から派生した共通の目的を持った組織、集団を指す言葉だ。
ソウルアバターの騎手達の中でも組織戦に重点を置く者達はクランを結成し、クラン同士での戦闘、そして勝利する事を目的としていた。
「おそらくは、彼の戦闘力と歌による支援効果に着目しているんだと考えられます」
「うた?」
「ええ、ソウルアバターの戦闘力は精神高揚の影響を少なからず受けますから」
「うた、なぁ。そんな組織戦の勝ち負けを左右するほど変わるもんかね」
半信半疑で返事を返すハガネ。タイマンでの決闘に拘ってきたこの戦闘バカにとっては組織戦の戦力向上効果などイマイチぴんと来ないのであった。
「タタラ、クライアントにOK返しといてくれ」
「受けるんですか?」
「ああ、相手の多さを考慮しても悪くない金額なうえに」
「なんでしょう」
「ランカーでもないのにここまで強いコイツに興味が湧いてきた」
ハガネの言に視線を合わせて嘆息するタタラとカナメ。
「なんだよ」
「ハガネさん、相手は歌手でクライアントですからね?ランカーではないですからね?」
「マイマスターながらどうしてここまで喧嘩バカなんでしょうか」
「……うるへー」
二人の指摘に不貞腐れながら約束の日時を確認するハガネであった。
【UE:ハウリング・ロア:ep-2 終わり ep-3へ続く】
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